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タイのバンコクで、カンボジアの元国会議員リム・キンヤが射殺された現場近くに立つタイ中央捜査局のメンバー、2025年1月7日。 © 2025 Lillian Suwanrumpha/AFP via Getty Images

(バンコク)― タイ当局はバンコクで起きたカンボジアの元野党政治家殺害事件を即時かつ徹底的に捜査すべきだ、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。

2025年1月7日夕方、バンコクのワット・ボーウォンニウェート寺院の外で、解党させられたカンボジア救国党(CNRP)の元国会議員リム・キムヤ氏(74歳)を男が射殺した。同氏と妻はカンボジアのシェムリアップ州からバスで到着したばかりだった。タイ当局は後に、銃を所持していた男が元タイ海兵隊員のAekaluck Paenoi氏であると特定して逮捕状を発行した。カンボジア国内に逃亡した被疑者をカンボジア当局がバッタンバン州で逮捕し、今後、タイに身柄を移送するとしていると地元メディアが報じた。

ネーション紙は、プノンペン公設市場の副代表を務めるカンボジア人のキムリン・ピッチ氏に、タイ刑事裁判所が殺人事件に関与した疑いで逮捕状を発行したと報じた。バンコク首都圏警察本部捜査部長のTheeradej Thammasuthee氏は、ピッチ氏がキムヤ氏と一緒にタイに入国したと述べた。CCTVの映像には、ピッチ氏がキムヤ氏と同じミニバスに乗ってバンコクに向かう様子が映っている。Theeradej捜査部長によると、襲撃後にピッチ氏はバンコク国際空港から飛行機に乗ったという。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長エレイン・ピアソンは、「バンコク中心部でカンボジアの著名な野党政治家が残酷に殺害されたことを受け、外国政府がタイ国内において、政治的動機による殺人事件に関与したことへの重大な懸念が深まっている」と述べた。「タイ当局はリム・キムヤ氏殺害事件を徹底的に捜査し、加害者全員が確実に裁きを受けるようにする必要がある」。

カンボジア当局は、嫌がらせ、威嚇、暴力の煽動、恣意的な逮捕と拘禁、不公正な裁判、根拠のない実刑判決などを通じて、野党や市民社会グループ内の政府批判者を組織的に弾圧してきた。政府が掌握する最高裁判所が2017年に救国党を解党させて以来、カンボジア当局は隣国タイに亡命している個人をはじめとする元党員たちを、政治的な動機に基づく罪で追及してきた。

カンボジアの人権団体LICADHOによると、カンボジアは現在38人の政治囚を拘禁している。

キムヤ氏の最新のフェイスブック投稿は、フン・マネ首相の弟フン・マニ副首相が、1月1日の新年祝賀行事で「国民に永続的な利益をもたらすことはない」金を費やしたと批判するものだった。政府はそうではなくて人権を尊重すべきだと書いている。

カンボジアとフランスの二重国籍を持ち、かつてフランスの公務員だったキムヤ氏の殺害は、安全な場所などどこにもないというメッセージを、カンボジア政府の批判者に送るものだ、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

タイに逃れたほかの多くのカンボジア反体制派が、いわゆる国境を越えた人権弾圧(反対意見を抑圧するために、時にはタイ当局の協力も得て、国境を越えて行われる人権侵害)の標的となってきた。

救国党の活動家Phorn Phanna氏はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、2023年8月にタイのラヨーン県にある自宅周辺で襲撃者に監視・尾行され、車から写真を撮られた後に暴行されたと証言した。襲撃を目撃した建設作業員10人がパンナさんを救出したが、その時の様子が近隣の店先の防犯カメラに録画されていた。

カンボジアの指導者たちは、Phanna氏が米国への再定住を待つ間も威嚇を続けた。フェイスブックに公開された音声クリップで、2024年9月に現上院議長のフン・セン前首相が「タイで活動しているグループはタイ警察と協力し、彼の地に住んでいる人間たちを排除しなければならない。その1人がPhannaだ[後略]我らの部隊はどんな犠牲を払ってでも、生死を問わず彼の身柄をここに連れてくるのだ」と述べていたことが明らかになったとラジオ・フリー・アジアは報じた

2019年12月、バンコクのアパートからほど近いセブンイレブンで、クメール語を話す2人組が救国党の活動家であるSoun Chamroeun氏を襲った。2人組はスタンガンで15分間攻撃して同氏をぐったりさせ、店から引きずり出そうとする間にも頭部、背中、腕を殴り続けた。セブンイレブンの従業員が警察に通報したと告げると、この正体不明の男たちは逃走した。

タイ当局はカンボジア反体制派に対する人権侵害を犯しており、これにはカンボジア政府が関与した可能性もある。2024年11月、タイ当局は野党活動家6人と子ども1人をカンボジアに強制送還し、不当な裁判や虐待の危険にさらした。これは国際法に抵触するものである。

2024年にヒューマン・ライツ・ウォッチは報告書で、タイ国内での保護を求める反体制派や活動家に対する近隣諸国政府の違法行為をタイ当局が手助けするという、国境を越えた人権弾圧のパターンを明らかにした。その見返りとしてタイ当局は、難民や反体制派の「物々交換市場」の一環として、カンボジア、ラオス、ベトナムに住むタイ政府批判者を標的にすることができた。

前出のピアソン局長は、「リム・キムヤ氏の殺害に対するタイの対応は、国境を越えた人権弾圧行為の可能性がある衝撃的な犯罪を容認するか、拒否するかを明らかにする試金石となる」と指摘する。「フランスをはじめとする友好国は、タイ政府に対し、信頼に足る捜査を即時実行し、事件の加害者全員の罪を問うよう強く求めるべきだ。」

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