(バンコク)― ベトナムでは2024年半ばに政権が刷新され新たな指導者が就任したが、政府による過酷な人権弾圧が依然続いていると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表した『世界人権年鑑2025』で述べた。ベトナム政府当局は独立した人権団体、労働組合、メディア、宗教団体のほか、政府の統制を受けずに活動する一切の組織を禁止している。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、35年目の刊行となる年次報告書『世界人権年鑑2025』(全546頁)で、100カ国以上の人権状況を検証した。ティラナ・ハッサン代表は序文で次のように述べている。世界の多くの国々で、政府が政権批判者、活動家やジャーナリストに圧力をかけ、不当に逮捕・拘禁した。武装集団や政府軍は違法に一般市民を殺害し、多くの人びとを家から追い出し、人道支援へのアクセスを遮断した。2024年に世界で実施された70以上の国政選挙の多くでは、権威主義的なリーダーたちが差別的なレトリックと政策で地歩を固めた。
「トー・ラム氏が共産党書記長に就任したが、ベトナム政府による市民的および政治的権利への深刻かつ組織的な弾圧に歯止めはかかっていない」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長代理パトリシア・ゴスマンは述べた。「政府が改革を行うことを望む国際ドナーやベトナムの貿易相手国は、同国の深刻な人権状況にはっきりと懸念を表明すべきである」。
2024年のベトナムでの主な出来事は次のとおりである。
- 悪名高い公安省で大臣を務めたトー・ラム氏は、共産党の政治局員5人が更迭された激しい党内闘争の結果、最高指導者である書記長に就任した。ラム氏が公安相だった10年あまりの間、ベトナム警察は多数の反体制派を不当に投獄し、芽生えつつあったベトナムの市民社会を壊滅させた。この弾圧は2024年も続いた。
- 2024年、裁判所は根拠のない容疑により人権活動家や反体制派少なくとも43人に有罪判決を下した。人権活動家のグエン・チ・トゥエン氏(Nguyen Chi Tuyen)、グエン・ヴー・ビン氏(Nguyen Vu Binh)、ファン・ヴァン・バック氏(Phan Van Bach)、環境活動家のゴー・ティ・トー・ニエン氏(Ngo Thi To Nhien)らが弾圧の対象となった。
- 刑事司法はベトナム政府の統制下にあり、独立性も公平性も存在しない。当局は、有罪をあらかじめ決めたうえで被告(また間接的にその家族)を名指しして辱める公開裁判を定期的に実施し、国民を「教化」している。
- 政府は結社、信仰、移動の自由に対する権利を引き続き厳しく制限している。
ベトナム政府は、組織的な人権侵害を直ちに停止し、基本的人権の行使を理由に拘束されている人びとを全員釈放すべきだ。貿易相手国とドナー国はベトナム政府当局に対して市民的および政治的権利を尊重するよう強く求めるべきである。