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Supporters of Equality Act Japan gather in front of parliament before they submit a petition in Tokyo on March 25, 2021.  © 2021 Kanae Doi/Human Rights Watch

この6月、日本では、性的指向と性自認に関する初の法律「性的指向及び性同一性の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」が国会で成立しました。この法律は、「理解の増進」(第1条)に関する施策を、「不当な差別はあってはならない」との認識の下に推進すると定めています。そして「全ての国民が、その性的指向又はジェンダー・アイデンティティにかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものである」(第3条)という理念がうたわれています。悪くない出発ですが、日本国内の多数の人権団体が求めている包括的な差別禁止法には程遠いものです。

レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー(LGBT)の人びとに関する理解を増進し「不当な差別」がないよう、この法律は政府に対して基本計画を策定するよう義務付けています(第8条)。また、国及び地方公共団体、事業主、学校も基本理念に則った施策の実施に「努めるものとする」と定めています(第10条)。

振り返れば、この法律は、#EqualityActJapanキャンペーンに賛同した100を超える団体企業、多数の人びとの存在があったからこそ実現したものです。このキャンペーンは、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を控えた2020年に、LGBT法連合会(J-ALL)Athlete AllyAll Out、ヒューマン・ライツ・ウォッチが始め、日本政府に対して、性的指向や性自認を理由とする差別を禁止する法律の制定を求めてきました。差別禁止法を支持する署名の呼びかけには10万人を超える人びとが応じました

当初の案は、与党自民党の保守派議員の偏見に満ちた発言や政治的ポーズなどによる反対を受けて成立が見送られました。しかし2023年に入ると、LGBT関連の人権団体が案を復活させようと協力し、新たなG7(グループ・オブ・セブン)エンゲージメント・グループ「Pride7」を発足させ、LGBT関連施策について市民団体とG7各国政府との対話を目指しました。日本以外のG7各国からの後押しもあり、自民党はG7広島サミットが始まる前日の5月18日、修正を加えた法案を国会に提出しました。しかし、ここでも一部の議員からの反対に遭い、法案は成立には時間がかかり修正も余儀なくされました。

日本のLGBTコミュニティの平等を求める長い旅は終わりません。今回成立した法律は、LGBTの人びとの権利を前進させるものではありますが、差別からの平等な保護を保障するものではないのです。

岸田文雄首相はここで立ち止まるべきではありません。日本政府がすべての人の人権を守るためには、包括的な差別禁止法こそが必要なのです。

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