(ニューヨーク) - 「ビルマ軍事政権は、2007年9月の抗議デモに平和的に参加したことを理由にして、不当な審理を受けている約70人の活動家への訴追を取下げ、釈放すべきである。」ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日このように述べた。ラングーンの悪名高いインセイン刑務所内にある法廷は、本日、このうち14人に65年の刑を宣告した。

ビルマ政府はこの2週間で、反対政党・国民民主連盟(NLD)の党員と、88世代学生グループ(88GS)所属の反体制活動家に対する裁判手続を進行させた。2007年8月~9月の反政府運動に参加した政治活動家、僧侶、尼僧(女性修行者)、ジャーナリストなど70人以上に対し、一部には刑務所内の秘密法廷で非公開裁判が進行中であり、残りの人びとにはきわめて短期間のうちにこうした審理が行われ、すでに有罪判決が下された。

「ビルマ軍政幹部が法を尊重しないのは誰でも知っていることだが、ここ数週間は、国民全体を脅すという明らかな意図のもとで、より集中度の高い弾圧が行われている。裁判にかけられている非暴力活動家たちは、そもそも訴追されるべきではないが、不当な裁判によって長期刑を宣告されるべきでないのは言うまでもない。」ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長代理エレーン・ピアソンはこのように述べた。

被告人の家族は裁判を傍聴することができないことが多い。また弁護士を立てること自体を却下されるケースもある。また政治活動家の弁護についた弁護士4人は、依頼人の要求に従って代理人を辞任したり、不当な審理に抗議したりしたために、法廷を侮辱したとして有罪判決を受けている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、「政治活動家の訴追が増えていることは、 ビルマ軍政指導部が、2010年の複数政党制に基づく総選挙の準備をにらんで、基本的権利の侵害をこれまで以上に強めていることをはっきりと示すものだ。」と述べた。反政府政党の党員や政治活動家たちは、表現の自由や平和的なデモ行進、組織の結成、無許可の外貨所持を犯罪行為とする時代遅れの法律によって刑を宣告されている。

「軍政指導部は、見せかけの政治改革を次の段階に進める前に、活動家を一掃しようとしている。活動家の代理人を務める弁護士を訴追することからうかがえるのは、裁判ではあらゆる不確定要素を排除しておこうという軍政指導部の意図である。」 ピアソンはこのように述べた。

今回の一連の裁判では少なくとも3人のジャーナリストが有罪判決を受けた。うち1人は著名なブロガーのネーポンラッで、2007年9月の抗議運動の模様を報じたとして2008年11月10日に20年の刑を宣告された。残りの2人は汚職事件を報道した記者で、共に3カ月の刑を宣告された。

ヒューマン・ライツ・ウォッチはアジア地域(特に中国、インド、東南アジア諸国連合(ASEAN))に対し、ビルマ政府に対して、政治活動家や弁護士、その他の表現・結社・平和的な集会の自由という国際的に保護された権利を行使したことを理由に拘束されている人びとの裁判の中止又は取下げを求めるよう要求した。

「ネーポンラッとジャーナリスト2人の逮捕には、ビルマの独立(非政府)系メディアに今回の一連の裁判を報道させないためのあからさまな恫喝である。ビルマ軍政に影響を与えることのできる国々は、今回の事態を傍観・放置してはならない。」 ピアソンはこのように述べた。

背景情報

2007 年9月の大規模な反政府運動の後、ビルマ軍事政権は、大量の政治活動家やデモ参加者を逮捕した(https://www.hrw.org/reports/2007/burma1207/)。ビルマ政治囚支援協会(AAPPB、本部:タイ・メーソット)によると、現時点で2,100人以上の 政治活動家が投獄されており、その数は2007年9月以前の2倍を超えている。

2008年10月後半以降の活動家や弁護士の裁判については次の事例がある。

  • 10月23日、北オカラッパ(ラングーン(ヤンゴン)市)裁判所は、7人の仏教僧と7人の尼僧に対し、「礼拝場所の毀損または冒とく」(刑法第295条)と「口頭または文書による...他宗教の...侮辱」(同295条A項)により重労働4年を宣告した。この14人は2007年9月にラングーンの2つの学校で逮捕されており、うち2人はウー・イェワダ僧院長(65)とドー・ポンナミ師(80)である。家族は裁判の傍聴を許可されず、弁護団は審理に出席することをたびたび阻止された。
  • 10月24日、マンダレーの国民民主連盟(NLD)の党員6人(ウィンミャミャ、ティンココ、タンリィン、カントゥン、ウィンシュエ、ミントゥ)は、「暴動教唆の意図」(刑法第153条)と「公衆に恐怖あるいは警戒心を生じさせうる...公序への危害をおよぼす声明」(同505条B項)という罪状で、2007年9月の反政府運動に参加したとして2年から13年の刑を宣告された。
  • 10月後半には、ラングーン市フラインタヤー区のNLD青年部のメンバー11人が同区の裁判所で、騒乱教唆の容疑で訴追された。11人は2007年にいったん逮捕されており、その後2008年9月に平和的なデモを行ったとして再逮捕された。弁護団は10月30日に、不当な司法手続(下記参照)に抗議したとして逮捕された。
  • 10月29日、「88世代学生」のメンバー9人(ミンコーナイン、コーコージー、フラミョーナウン、テーチュエ、ミャーエイ、ニャンリン、ポンチョー、アウントゥー、アウンナイン)の裁判がインセイン刑務所内で行われた。この9人は2007年8月に逮捕された活動家34人の一部で、合計22の罪状で起訴されている。具体的には憲法制定国民会議への批判(1996年の法律5/96)、反政府プロパガンダへの従事、騒乱の教唆などで、それぞれの活動家には推計で懲役150年が宣告される可能性がある。
  • 9人の被告人全員がインセイン刑務所内で行われているこの秘密裁判に抗議したところ、同日中に全員に対して、法廷侮辱罪で6カ月の刑が宣告された。次に9人はイラワディ(エーヤワディー管区)のへき地にあるモービン刑務所に移送された。家族や支援者が訪問できない状態で裁判を続けるためだ。10月30日にはNLDに属する被告人の代理人を務める弁護士4人が法廷侮辱罪で有罪判決を受けた。ニーニートゥエ弁護士とソーチョーチョーミン弁護士は、反軍政デモを行った活動家2人に対する裁判で、政府の高級官僚を証人申請したとして、法廷侮辱罪(刑法第228条)で6カ月の刑を宣告された。またアウンテイン弁護士とキンマウンセイン弁護士には、法廷侮辱法第3条違反で4カ月の刑が宣告された。これは2人が、依頼人から、重要証人の申請が行えず、被告人の家族が裁判を傍聴できないなど、裁判中の様々な制限措置に抗議するために代理人を辞任するよう依頼されてのことだった。これら4人の弁護士のうち3人はすでに拘束されたが、1人はまだ当局の手を逃れている。
  • 11月2日、労働運動家5人(トゥーレインアウン、チョーミン、チョーチョー、ウェイリン、ニーゾー)の身柄が、ラングーン市内の刑務所からビルマ西部と北部に移された。2007年9月の抗議運動への関与について秘密裁判を開始するためだ。
  • 11月3日、新しく結成された国内団体「正義」(正義のための新世代運動)と「最良肥料」の活動家8人について、非合法に結社を行った容疑で裁判が始まった。8人は2008年9月に逮捕されていた。
  • 11月5日、2007年9月の弾圧の際にラングーンのングェーチャーヤン僧院で逮捕された仏教僧5人に対し、ラングーンの南オカラッパ裁判所で裁判が開かれた。容疑は「礼拝場所の毀損または冒とく」(刑法第295条)と「公衆に恐怖あるいは警戒心を生じさる意図」(同505条B項)である。5人は法廷外での読経という短時間の抗議行動により、同日中に審理妨害(同353条)で追起訴された。さらに2年の刑が追加される可能性がある。
  • 11月5日、2人のジャーナリスト(ニュース・ウォッチ・ジャーナル誌のキンマウンエイとトゥントゥンテイン)は、同誌の7月号に地元での汚職事件を扱った記事を掲載したとして逮捕され、直ちに3カ月の刑を宣告された。
  • 11月10日、ブロガーのネーポンラッは2007年9月の抗議デモの期間中にブログに記事を書き、行動の様子を伝えたとして20年の刑を宣告された。氏は2008年1月に逮捕されていた。
  • 11月11日、2007年8月のデモで逮捕された活動家14人に対し、インセイン刑務所内の法廷は、外貨の無許可所持や、様々な一般的な機材の所有に関して許可を受けていなかったとして各65年の刑を宣告した。さらに、著名な労働運動家のスースーヌウェは、2007年8月と11月に行った平和的な反政府運動を理由に、12年6カ月の刑を宣告された。氏は、反逆罪(刑法第124条)と「公衆に恐怖あるいは警戒心を生じさる意図」(同505条B項)で訴追されていた。