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(ソウル)— 韓国の朴槿惠大統領は、 脱北者9人の強制送還を阻止するため速やかに中国政府首脳に働きかけ、かつ一行が韓国など希望する国へ渡り、難民申請することを許可すべきだ、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは同大統領および中国の習近平国家主席に宛てた書簡内で述べた。

A barbed-wire fence separating North Korea from China is seen in this photo taken from the Chinese border city of Tumen, China on March 18, 2015. © 2015 Reuters

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局 局長代理フィル・ロバートソンは、「
9人に残された時間はわずかだ。朴大統領は即刻中国政府から、危険の高い北朝鮮本国へ送還しないという約束をとりつけなければならない」と述べる。「一行がひとたび北朝鮮側に渡されれば、拷問・暴力・重大な権利剥奪に満ちた強制収容所に消えていくことになるだろう。」

9人の家族から寄せられた最新の情報によると、一行は吉林省図們市の北朝鮮との国境地帯に駐屯する中国軍の基地に身柄を拘束されているという。国境に近接した場所柄、強制送還はいつ起こってもおかしくない。

許可なく北朝鮮国外に出た人びとには、送還後に厳しい刑罰が待っている。よって出身国から逃げ出した結果として、あるいは出身国を出国した後に起きた状況によって難民となった人びとを指す、後発(sur place)難民に該当するといえる。2010年に北朝鮮人民保安部は脱北を「国家反逆」罪とする法令を承認し、刑罰には死刑も含まれる。2013年以降に脱北した北朝鮮人、または北朝鮮国外に住みながら秘密裏に国内との連絡を維持している人びとがヒューマン・ライツ・ウォッチに証言したところによると、捕らわれて中国から強制送還された人間は、国家安全保衛部が運営するクワンリソ(政治犯強制収容所)に送られ、そこで暴力などを受けるという。

2015年11月19日に韓国政府は、北朝鮮による重大な人権侵害を非難する国連総会決議案の共同提出国として、賛成票を投じた。今年10月16日の米韓首脳会談で朴大統領とオバマ米大統領は共同声明を発表。「北朝鮮における人権状況の改善と人権侵害に対するアカウンタビリティの確保、ならびに北朝鮮の人びとの生活向上」で同意した。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは韓国政府に対し、今回の脱北者9人を救うためにリーダーシップを発揮するよう求めた。朴大統領は一行の所在を明らかにするよう、中国政府に強く働きかけるべきだ。かつ、難民の地位に関する条約(1951年)、同条約の選択議定書(1967年)ならびに拷問等禁止条約の批准国として、国際的な難民保護の義務を果たすよう、そしてどんな状況にあっても、決して迫害に直面しうる場所に一行を送り返すことがないよう、要求すべきだ。

前出のロバートソン局長代理は、「朴大統領は中国政府に対し、9人の北朝鮮人は孤立無援でも、名前のない人びとでもないことをはっきりと示す必要がある」と指摘する。「中国は、世界がことの成り行きを見守っていることを知らなければならない。そして拘束力のある国際法のもと、難民保護のコミットメントを遂行することを、国際社会は注視し期待していると認識すべきだ。」

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