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スリランカ:国連人権報告書で 治安部隊による人権侵害の詳細 示される

国連人権理事会は責任追及を進める決議 採択すべき

スリランカのコロンボで記者会見を開くフォルカー・トゥルク国連人権高等弁務官、2025年6月26日。 © 2025 Krishan Kariyawasam/NurPhoto via AP Photo

(ジュネーブ)―国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)のスリランカに関する報告書は、アヌラ・クマラ・ディサナヤカ大統領の下でおきている恣意的な拘禁、拷問、拘束中の死亡などの根深く組織的な人権侵害を詳述していると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。フォルカー・トゥルク国連人権高等弁務官による今回の報告書は、法の裁きを求める家族や活動家を沈黙させるために厳しすぎる法律が濫用されている実態を指摘したうえで、国連人権理事会を通じた継続的な国際社会の関与が「不可欠」であると結論づけている。

人権理事会は、2025年9月8日に開会される第60回会期において、既存のスリランカの国連マンデートを更新すべきだ。スリランカでは、少数派コミュニティの人びとに対する過去の残虐行為ならびに継続的な人権侵害が、ほぼ全面的に不処罰のままになっている。人権理事会は、政府と分離主義勢力「タミル・イーラム解放のトラ」間に起きた内戦(1983年〜2009年)に関する広範な人権侵害をめぐり、一連の決議を長年にわたり採択してきた。2021年以降はスリランカの人権状況に関する国連定期報告を義務づけ、将来の訴追支援を目的として、重大犯罪に関する情報および証拠を収集、分析、保存する国連スリランカ・アカウンタビリティ・プロジェクトを設立した。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局副局長ミナクシ・ガングリーは、「ディサナヤカ大統領は選挙戦で法の裁きの実現を公約したが、実質的な変化はほとんど生まれていない」と述べる。「国連人権理事会は、治安機関による人権侵害が続いていると人権高等弁務官が指摘した事実に留意し、行動を起こすべきだ。」

ディサナヤカ大統領は2024年の選挙運動中、拷問や長期にわたる恣意的拘禁を可能にする厳しすぎるテロ防止(PTA)の廃止や、表現の自由を脅かすオンライン安全法の改正、責任追及推進のための独立検察の設置を公約した。政府はこれらの公約を実行しておらず、むしろ「過去の違反行為につながった構造的条件が依然として存在している」と高等弁務官は結論づけた。

テロ防止法の継続的な適用は特に懸念される。高等弁務官は、同法の適用件数が2024年の38件から2025年の最初の5カ月間で49件に増加したと報告。同法は、タミル人やムスリム・コミュニティのメンバーに対して主に適用されている。また、「拷問やその他の虐待行為の常態化」や拘留中の死亡ケースの複数発生、そして「こうした事案に対する実質的な捜査の欠如」についても言及。スリランカ人権委員会は7月、ヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、昨年は拷問に関して736件の苦情申立てを検討したと述べている。

高等弁務官は「特に北部と東部における監視体制がほぼそのまま残っており、中央政府の監督や指示は最小限レベル」だと指摘。そのため、「失踪者の家族、地域の指導者、市民社会活動家、特に強制失踪の責任追及に取り組む人びとに対する威嚇や嫌がらせ」がいていとした。標的となった人びとの中には、国連人権理事会に働きかけてきた被害者・犠牲者の家族も含まれている。

政府は非政府団体(NGO)や人権活動家の活動を弾圧し続けている。多くの団体が資金調達の制限に直面し、テロ捜査局の職員が活動家を頻繁に召喚して尋問したり、自宅や事務所を訪問したりしている。

報告書は、内戦の犠牲者・被害者、ならびに1987〜89年にスリランカ南部で発生した人民解放戦線(JVP;かつての過激派左翼政党で現在はディサナヤカ政権最大の勢力)による蜂起の際の強制失踪、拷問、超法規的殺害の犠牲者・被害者数千人のための法の裁き実現の重要性を強調。スリランカで約20の集団墓地が発見され、うち5つが現在調査中であることも明らかになっている。政府は、国際基準に沿った遺体の保存と発掘の実施に必要な財政的、人的、技術的資源を確保するために国際社会の支援を模索すべきだ。

しかしながら高等弁務官によると、「国家には加害者とされる者たちを訴追・処罰する意思あるいは能力がない」ことを数多くの象徴的なケースが示している。2019年に教会やホテルで発生し250人超が死亡したイースターサンデー爆破事件をめぐり、歴代政権は「これらの攻撃を可能にした状況、特に治安当局の役割について包括的な説明を行ってこなかった。」

高等弁務官は、ディサナヤカ大統領が昨年9月に就任して以来、汚職事件の追及においては一定の進展を見せているものの、人権侵害、特に重大な国際犯罪への軍や治安部隊の関与をめぐり、歴代政権と同様に政府の責任を認めていないと指摘した。とりわけ紛争に関係した性暴力の被害者は、「報復への恐怖、社会的烙印、司法制度への信頼の欠如」を感じているという。

人権侵害が続いている現状は、人権理事会による国連スリランカ・アカウンタビリティ・プロジェクトへの継続的な支持・支援、国連による継続的な監視と報告の重要性を浮き彫りにしている。人権理事会はスリランカ政府に対し、犠牲者・被害者の家族や人権活動家に対する監視および嫌がらせをやめるとともにテロ防止法の一時停止を求めるべきだ。

前出のガングリー副局長は、「ディサナヤカ大統領の就任から1年が経過したが、スリランカの劣悪な人権状況は大きく改善されてはいない」と指摘する。「政府が全スリランカ国民の人権を尊重・保護するという義務を果たさない限り、国連人権理事会による継続的な関与とアカウンタビリティ・プロジェクトの更新が極めて重要になる。」

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