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勧告が気に入らなければ「報復」。日本政府による国連女性差別撤廃委への拠出停止は、何が問題なのか

日本政府は、グローバルな人権システムを攻撃する中国と米国から距離をとるべきだ。

東京で開催された国際女性デーのデモ行進で男女平等を訴えるデモ参加者たち、2025年3月8日。 © Kyodo via AP Images

外務省は1月27日に、日本政府の任意拠出金の使途から女性差別撤廃委員会を除外するよう国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)に通達したと明らかにした。この動きは、2024年に同委員会が皇位継承者を男性に限ると定めた皇室典範を改正すべきとの勧告を行ったことを受けたものだ。日本政府は委員会の勧告に抗議し、この記述を最終見解から削除するよう強く求めていた。

「皇位につく資格、これは基本的人権に含まれていないことから(…)女子差別撤廃条約にいうところの『女子に対する差別』は該当しない」と、北村俊博外務省報道官は述べた。

2005年以降、日本政府のOHCHRへの任意拠出金(年2000~3000万円)が女性差別撤廃委員会に使われたことはないが、北村報道官は拠出金の停止により「本件に関する日本政府の立場を、より明確に示すことになろうかと考えています」とも述べた。また、日本政府は予定されていた委員会代表団の訪日も見送った。

女性差別撤廃委員会は国連の独立機関として、成人女性と少女の権利を保護する国際条約である国連女性差別撤廃条約の実施状況を審査する任務を負っている。委員会は加盟国が選出した専門家23人で構成され、4年の任期中は自国の代表者としてではなく、自らの専門的見地から職務を遂行する。委員会は、日本を含む条約締結国すべてが条約を順守しているかどうかを体系的に審査し、成人女性と少女の権利保護を改善すべく勧告を行う。

委員会はこれまでに、多くの国々で長年にわたり根付いてきた差別的慣行の改革を勧告してきた。例えば、2009年にはスペインに対し、王位継承における男女の法の下の平等を保障するために必要な憲法改正を完了するよう勧告した。このほかサウジアラビアなどに対し、差別的な男性後見制度の廃止を求めている

日本政府は、今回の対応はおおむね象徴的なものだったと主張しているが、国際的な影響力が強い国家がすでに国連の人権システムの有効性を毀損しつつあるなかでこうした行動を取ることは、他国政府による国連人権システムへの激しい非難を助長しかねない。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは中国政府が近年、市民社会や人権侵害の調査に関する国連決議を骨抜きにすることで、国際人権機関を弱体化させる取り組みを強めていることを明らかにしてきた。中国はロシアとともにこうした機関への資金提供を停止しようともしてきている。中国の狙いが、新疆のウイグル族への人道に対する罪など自国の深刻な人権侵害や、同盟国による人権侵害への批判をかわすことにあることは明確だ。中国のこうしたやり方は、国連の使命を万人の尊厳を守るものから、個々の国家の特権に歩調を合わせたものへと変質させている

国連の人権システムに新たなリスクがいままさに米国によってもたらされていることを踏まえると、日本の支援は今まで以上に重要だ。トランプ政権は対外援助の大半を停止するとともに、すべての国際機関について米国の加盟の見直しと国連人権理事会からの脱退を命じた。たとえ未払金があったとしても、米国の資金拠出は国連予算の大きな割合を占めているため、人権条約の遵守状況を監視する女性差別撤廃委員会のような国連人権機関の活動を維持する上では不可欠だ。

女性差別撤廃委員会をはじめとする独立した国連の人権機関は、国家からの干渉や報復を受けることなく任務を遂行できなければならない。国家が賛同しない勧告への報復として資金提供を制限するような脅しは、特に国連が長年「(手元資金の)流動性危機」に陥っている状況でこうした機関の独立性を損なうものだ。

各国が任意拠出金を特定の国連機関に割り当てることはよくあることだ。しかし、特定の国連人権機関が気に入らない勧告をしたために公な形で拠出金の使途から除外するのは、他国が、自国に都合の悪い法解釈を示した人権機関に対して、資金援助の停止を通じて「罰する」可能性を作ることになる。

人権条約の策定とモニタリングの数十年にわたる前進は、ジェンダーや人種の平等、表現の自由、恣意的拘束や拷問を恐れずに暮らす権利の促進など、世界中の人びとの権利の向上に貢献してきた。

いま日本政府に強く求められているのは、国連人権システムを強化かつ支援することであり、その弱体化を招くことなどではない。日本をはじめとする各国は、国連人権機関について、たとえ勧告内容にすべて賛同できないとしても、その重要な活動を支援すべきだ。

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