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スリランカ:衛星写真と目撃者の証言が、砲撃の継続を示す

国連安保理は、甚大な民間人被害にもかかわらず、動かず 

(ニューヨーク)-新たな衛星写真と目撃者証言は、スリランカ政府の「スリランカ北部の人口密集地帯で、軍はもう重火器を使用していない」という主張が事実と異なることを示す、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

スリランカ政府軍とタミル・イーラム解放のトラ(LTTE)との間の戦闘が続く、海岸沿いの幅の狭い小さなエリアに対する砲撃の結果、2009年5月9日以降だけで400名以上の民間人が死亡し、1000名以上が負傷したと地元の消息筋は報告している。

「最新の衛星写真と目撃者証言は、戦闘地域にいる民間人に対する残虐な砲撃が続いている事を明らかにしている」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムズは述べた。「スリランカ軍もLTTEも、民間人を砲弾の餌食にするのに何の躊躇もないようだ。」

米国科学振興協会(AAAS)は本日、紛争地域の高解像度商用人工衛星写真に対する予備的分析を公開した。人工衛星写真には、重火器の着弾によってできたクレーターや、5月6日から10日までの間、国内避難民(IDPs)によって使用されていた数千の建築物らしき建物が撤去された様子が写っている。「よほどの理由がない限り、国内避難民がこのように一斉に、そして完全に移動することは、まずあり得ない」とAAASは明らかにした。今も、数万人の民間人が戦闘が行なわれている地域に閉じ込められたままでいる。

目撃者たちは、ヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、LTTEにより政府支配地域への脱出を阻まれ、砲撃から避難するために浅い壕の中で過ごした悲惨な日々の体験を語った。

「K・カナガ(K. Kanaga)」は35歳の女性。安全上の理由で名前の公表は差し控えている。彼女は、5月9日午後7時頃、他の15名と一緒にある壕に隠れていた。その壕はトラクターの下に皆で作ったものだったが、その時、一発の砲弾がトラクターに命中した。「トラクターがなかったら、私たちは皆死んでいたでしょう」と彼女は語った。およそ8発から10発の砲弾が、テントや間に合わせの壕が並ぶ彼女のすぐ近くに着弾した。カナガの45歳になるいとこは、近くのテントにいたが、砲撃の際に壕までたどり着くことができず、その攻撃で死亡した。「沢山の人が同じようにケガをしたの。でも何人かはわからない」とカナガは言った。「みんなが泣き叫んでいたわ。」

「R・ラマン」は29歳。彼とその家族は、ムッライバイカル(Mullaivaikal)にある覆いのない地下塹壕に数日間隠れていた。「俺たちはあらゆる方角から攻撃されてた。3人の子どもの食料と水を手に入れるとき以外は、ずっと壕にいた」と彼は語った。

5月9日の早朝、一発の砲弾が近くのテントに命中。ラマンの15歳になる姪を殺害、その姪の兄と姉を負傷させた。ラマンは、その砲弾がスリランカ軍の陣地から飛んできたものだと確信している。標的だったのは、100mくらい離れたジャングルの中で配置についていたLTTE部隊だったのかもしれないと考えている。何発かの砲弾が、避難民たちが住むテントがあるエリアに着弾した。

自分も家族も、恐怖のために、政府支配地域への逃走を試みはしなかった、とラマンは語った。4月初旬、彼の家族を含む数百人の人々が逃走を試みた時、LTTEは彼らに発砲したのだ。「少なくても15人が彼らに撃たれたのを俺は見た。」「1番前の列にいた人たちを撃った。でも生き延びたか亡くなったかは分からない。俺たちは、奴らが撃ち始めるとすぐ、地面に伏せた。銃声がやんだら、ありったけの速さで走って戻ったんだ。撃たれた人たちの中には子どももいたよ」とラマンは述べた。ラマンによれば、その日、約半分の人が何とか逃げおおせたようだ。あとの半分は戻る事を余儀なくされた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチに話をした医師たちによると、5月12日午前8時頃、多くの民間人負傷者が治療を待っていた時、ムッライバイカル(Mullaivaikal)にある仮設病院が再び砲撃された。攻撃の際には、5月9日と10日の攻撃の際に負傷した多くの人たちなど、千名近い患者が病院にいた。伝えられたところによると、面会時間内だったので多くの家族が入院患者を見舞いに来る時間で、医師も通常出勤して来る時間帯に、一発の爆弾が、入院棟の前に着弾して爆発。医師たちは、その攻撃により、49名が死亡(26名即死、他はその後怪我で死亡)、31名が負傷し病院に入院した、と報告した。殺害された者の中には、患者の入院調整をしていた、ムッライバイカル地方保健事業局の行政職員も含まれていた。ある医師は、政府軍が配置されているイラッダイバイカル(Iraddaivaikal)の方向から、砲弾は飛んできたと述べた。ヒューマン・ライツ・ウォッチ及び中立な立場で活動する監視員(モニター)は、紛争地域への立ち入りを政府から許されていないので、これらの犠牲者数に関する確認は出来ない。

ムッライバイカル病院は、前線から離れ、新たに移動してつくられた病院であるが、スリランカ軍が発射したと考えられる砲弾で、繰り返し被弾した(砲撃の後の病院の写真)。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、これまで再三にわたり、紛争の両当事者による国際法違反について、重大な懸念を表明してきた。LTTEは、民間人を人間の盾として使用している事、戦闘ゾーンから避難しようとする民間人を妨害(命を奪いうる武力の使用を含む)している事、自らの部隊を人口密集地帯の近くに意図的に配置する事、などの戦争法(戦時国際法)違反を犯している。スリランカ軍も、病院などを含む人口密集地帯に対する無差別砲撃という戦争法違反を犯してきた。

スリランカ政府は、人口密集地帯、とりわけ病院周辺で重火器の使用を止めるべきである。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、米国・欧州連合・インド・日本・中国などのスリランカの主要資金提供国に対し、これをスリランカ政府に要求するよう、改めて呼びかけた。スリランカ政府もLTTEも、民間人を戦闘ゾーンから避難させるために、人道上の安全避難路の設置を許可しなくてはならない。

ヒューマン・ライツ・ウォッチはスリランカの人道状況が、ニューヨークの国連安全保障理事会で正式に取り上げらるべきであること、並びに、ジュネーブの国連人権理事会の特別セッションでも緊急に取上げられるべきであると、改めて求めた。

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