スポーツ庁「第4期スポーツ基本計画(中間報告)」(2026年7月)の重点課題1「国民のスポーツ実施促進と『健康インフラ』構築を通じた、ウェルビーイングの向上や経済成長・豊かな社会の実現への貢献」に対するヒューマン・ライツ・ウォッチのパブリックコメント
提出にあたって
ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は、日本を含む世界100か国以上で人権状況を監視・報告する非政府組織です。2020年には、日本でスポーツをする子どもが、トレーニング中に暴力や性虐待、暴言の被害に遭っていることを、調査報告書「『数えきれないほど叩かれて』:日本のスポーツにおける子どもの虐待」(https://www.hrw.org/ja/report/2020/07/20/375777)で明らかにしました。
HRWは、スポーツ庁「第4期スポーツ基本計画(中間報告)」パブリックコメント募集に対し、重点課題1「国民のスポーツ実施促進と『健康インフラ』構築を通じた、ウェルビーイングの向上や経済成長・豊かな社会の実現への貢献」について、以下の意見を提出します。
中間報告は、重点課題1の中の複数の目標の一つとして「スポーツ関係者のコンプライアンス違反や体罰、暴力等の根絶を目指す」とし、そのうえで、複数の基本施策の一つとして「ガイドライン等を通じて周知徹底」「ガバナンスコードの周知を行う」としてはいますが、この施策は暴力を防止するには極めて不十分です。また、こうした施策は、第3期スポーツ基本計画を主に引き継いだものにすぎず(第3期計画では「スポーツを実施する者の安全・安心の確保」という暴力根絶等そのものを独立した固有の施策として掲げ、施策目標や具体的施策があったが、第4期計画では、独立した固有の重点施策ですらない)、第3期計画の実施中に成立した2025年の改正スポーツ基本法29条1項が定めた暴力等の防止に向けた措置を講じる国の義務を受けて、これを果たした内容になっているとは到底いえないと、スポーツと人権に関する専門家をはじめ、スポーツをする人の権利保護のために日本で活動している人々が懸念を示しています(https://www.tokyo-np.co.jp/article/507531)。そこで、HRWは、「スポーツ関係者のコンプライアンス違反や体罰、暴力等の根絶を目指す」ための施策を大幅に強化すること、なかでも、「日本版セーフスポーツ・センター」(仮称)の設立と、その根拠となる「セーフスポーツ法」の制定を強く求めます。
第2章 第4期スポーツ基本計画の重点課題
Ⅰ 重点課題設定の背景とねらいの実現
重点課題1 国民のスポーツ実施促進と「健康インフラ」構築を通じた、ウェルビーイングの向上や経済成長・豊かな社会の実現への貢献
HRWは、スポーツ環境の整備のためには、あらゆる暴力の根絶が必要であるという認識、そして指導者養成等やガバナンスコードを活かし、スポーツ事故・暴力・ハラスメントの減少を目指す点を支持します。
しかし、既存の制度だけでは不十分です。スポーツをする人や保護者、子どもが、報復を恐れず通報・相談できる独立機関として、日本版セーフスポーツ・センターが必要です。
通報相談窓口は現在もありますが、団体ごとに手続や基準が異なり、利用方法や時間、必要情報等に大きなばらつきがあります。所属団体への相談は、報復やこれまでとの扱いが変わることへの不安に繋がるため、一元的な仕組みで独立した機関が必要です。
また、改正スポーツ基本法第29条は、スポーツを行う者に対する暴力等の防止について、国が措置を講じる必要を明記しました。第4期スポーツ基本計画は、あらゆる暴力の根絶を、指導者やスポーツ団体に任せるのではなく、法令に沿い、国の責任として対応すべきです。
この点に関連し、スポーツ基本計画部会(第5回)においても、スポーツ・インテグリティの取組みについて、各団体による対応のみでは不十分であることを示唆する発言がありました。
第3章 総合計画編
重点課題1 国民のスポーツ実施促進と「健康インフラ」構築を通じた、ウェルビーイングの向上や経済成長・豊かな社会の実現への貢献
(5)スポーツ実施を促す環境整備の推進◆
②スポーツにおける安全・安心の確保
HRWは、中間報告が、安全対策の不足、気候変動、暴言などのハラスメントを課題と認識している点を支持します。
一方、目標や施策は、意識啓発、ガイドラインとガバナンスコードの周知にとどまります。暴力の問題は、単にコンプライアンスや不祥事の問題ではなく、人権問題です。具体的な対応を義務づけるため、スポーツ基本法8条及び29条1項に基づくセーフスポーツ法の制定を明記すべきです。
スポーツ庁「第4期スポーツ基本計画(中間報告)」(2026年7月)の重点課題2「ハイパフォーマンスの追求とアスリート等を取り巻く環境整備による、成果・知見の社会への還元」に対するヒューマン・ライツ・ウォッチのパブリックコメント
提出にあたって
ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は、日本を含む世界100か国以上で人権状況を監視・報告する非政府組織です。2020年には、日本でスポーツをする子どもが、トレーニング中に暴力や性虐待、暴言の被害に遭っていることを、調査報告書「『数えきれないほど叩かれて』:日本のスポーツにおける子どもの虐待」(https://www.hrw.org/ja/report/2020/07/20/375777)で明らかにしました。
HRWは、スポーツ庁「第4期スポーツ基本計画(中間報告)」パブリックコメント募集に対し、重点課題2「ハイパフォーマンスの追求とアスリート等を取り巻く環境整備による、成果・知見の社会への還元」について、以下の意見を提出します。
中間報告は、重点課題2の中の複数の重点施策の一つとして「スポーツ・インテグリティの強化」を掲げ、その基本施策として「質の高い指導者養成への支援」「アスリートや競技関係者に対する誹謗中傷対策/写真や動画による性的ハラスメントの防止」としてはいますが、これらの施策は、暴力やハラスメント、誹謗中傷等を防止するには極めて不十分です。また、こうした施策は、第3期スポーツ基本計画を主に引き継いだものにすぎず、第3期計画の実施中に成立した2025年の改正スポーツ基本法29条1項が定めた暴力等の防止に向けた措置を講じる国の義務を受けて、これを果たした内容になっているとは到底いえないと、スポーツと人権に関する専門家をはじめ、スポーツをする人の権利保護のために日本で活動している人々が懸念を示しています(https://www.tokyo-np.co.jp/article/507531)。そこで、HRWは、「スポーツ・インテグリティの強化」ための施策を大幅に強化すること、なかでも、「日本版セーフスポーツ・センター」(仮称)の設立と、その根拠となる「セーフスポーツ法」の制定を強く求めます。
第2章 第4期スポーツ基本計画の重点課題
Ⅰ 重点課題設定の背景とねらいの実現
重点課題2 ハイパフォーマンスの追求とアスリート等を取り巻く環境整備による、成果・知見の社会への還元
■ 健全で公正な社会基盤の構築と共生社会の実現への貢献
HRWは、インテグリティに関し、誹謗中傷などの課題が含まれたことを支持します。ただし、暴力等からの保護は、インテグリティのみならず、セーフスポーツの問題として明確に位置づけるべきです。セーフスポーツは、スポーツに関わる全ての人が暴力や差別から守られ、障がいのあるアスリートやLGBTのアスリート等も差別なく参加できる状態を意味します。
セーフスポーツへの取組みは、国際的にも活発化し、最近では、UNESCOが、今年6月に、セーフスポーツ実現に向けての提言をまとめた報告書を出版しています。
部会(第5回、第9回、第10回)でも、インテグリティをより広く体系的に発展させ、セーフスポーツ、誹謗中傷、アスリートの権利・人権などを含める必要性が指摘されています。
第3章 総合計画編
重点課題2 ハイパフォーマンスの追求とアスリート等を取り巻く環境整備による、成果・ 知見の社会への還元
(2)スポーツ・インテグリティの強化◆
①スポーツ団体におけるガバナンス体制の強化◆
HRWは、指導者養成支援で、暴力やハラスメント教育をする施策を支持します。ただし、これをJSPOの公認スポーツ指導者制度等と連携したコンプライアンス教育に限定せず、セーフスポーツ及び人権教育として位置づけ、子どもを指導する全ての指導者に義務づけるべきです。
しかし、これを実現するためには、既存のJSPOの制度だけでは不十分です。公認スポーツ指導者以外にも適用するために、スポーツにおける暴力を根絶し、社会啓発活動をするための独立した専門行政機関である日本版セーフスポーツ・センターが必要です。
また、スポーツをする子どもの指導者全員への研修を義務付けるため、スポーツ基本法8条及び29条1項に基づくセーフスポーツ法の制定を明記すべきです。
②外的要因に左右されずスポーツに専念できる環境の実現◆
中間報告が、誹謗中傷や性的意図を伴う写真や動画の被害を認識している点を支持します。法務支援、心理サポート、広報等は、JOC、JPC、HPSCのみでの対応でなく、日本版セーフスポーツ・センターが担うべきです。これらの問題は、セーフスポーツの概念では暴力等に含まれ、トップアスリートに限らず、地域や学校でスポーツをする子どもを含む全ての人に関わる問題だからです。
部会(第9回)でも、誹謗中傷やウェルビーイングの問題はトップアスリートだけでないことが指摘されています。