大阪府泉佐野市が7月27日、乳児院を新設する方針を明らかにした。乳児院とは、主に3歳未満の子どもを集団養育する施設である。
泉佐野市は、生まれた子を手放す決断をした女性に安全な選択肢を用意する取り組みとして、匿名で新生児を預けられる「赤ちゃんポスト」と、母親の身元を病院だけが把握する内密出産の双方を、行政主導として全国で初めて導入しようとしている。これらを通じた受け入れ人数を年間40人と想定しており、乳児院新設はその受け皿という。
確かに新生児を安全に託せる仕組みは必要だ。こども家庭庁の第21次報告によれば、2023年度に虐待で亡くなった子どもは、心中を除いて48人。うち16人は生後1日を生きられなかった。
だが、乳児院は子どもに害を与える。新設は撤回すべきだ。子どもの権利条約は前文で、「幸福、愛情及び理解のある雰囲気」の家庭環境のもとで育つことを、すべての子どもの基本的な権利と位置づける。国際人権法は各国政府に、親と暮らせない子どもへの代替的な養育の確保を義務づけたうえで、施設への収容を最後の手段としている。国連「子どもの代替的養護に関する指針」は、とりわけ3歳未満について家庭での養育を求める。新生児にとっては、入院治療が必要な間などのまれな場合を除き、施設は選択肢であってはならない。
科学的な根拠も明白だ。医学誌『ランセット・サイキアトリー』に2020年に掲載された系統的レビューは、施設養育が「重大な発達の遅れと関連しており」、それは「身体的成長、脳の成長、認知、注意において最も顕著で、非定型的なアタッチメントもみられる」と結論づけた。同レビューは「生後6〜24か月はとりわけ感受性の高い時期である」とも指摘する。国連児童基金(ユニセフ)と国連人権高等弁務官事務所は経験則として、幼い子どもは施設で3か月過ごすごとに1か月分の発達を失う、と指摘している。
乳児院の職員がどれほど心を尽くしていても、この構造は変えられない。24時間の施設でシフト制でローテーションする労働者として勤務する(週5日、合計40時間勤ほど)以上、どれほど優れた担当養育制を敷いても、同じ大人が常にそばにいることはありえない。しかし、発達途上の脳が必要とするのは、変わらずそこにいる少数の大人である。
日本政府もこれを認めている。2016年改正の児童福祉法は家庭養育優先を原則に掲げた。厚生労働省は2017年に「新しい社会的養育ビジョン」を掲げ、3歳未満の里親等委託率を2020年4月から5年以内に75%以上とすることを目標とした。その期限は、昨春すでに過ぎた。だが大阪府では、2025年3月時点で、代替養育を必要とする110人のうち家庭で暮らしているのは17人にすぎない(里親等委託率15.5%)。この数字は、子どもの施設収容を続けるのではなく、むしろ、残る93人に家庭を見つけるため、行政がいっそう力を尽くす必要を示している。
泉佐野市は正しいことをしようとしている。ならば、乳児院の新設は撤回すべきだ。