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政治的動機による裁判後に収監されている、ミンスク地方弁護士会の元弁護士でベラルーシ国立大学の元教授、Maksim Znakが法廷審理中に檻の中に立つ様子。ミンスク、ベラルーシ、2021年9月6日。 © 2021 Ramil Nasibulin/BelTA pool photo via AP
  • ベラルーシでは、政治的弾圧で逮捕された被告を弁護したり、政府による人権侵害を訴える活動をする弁護士を標的にして、組織的で広範な弾圧を行なっている。
  • ベラルーシ政府当局は法曹界を支配下に置き、その独立性をむしばんでいる―弁護士会は政府の計画や抑圧を媒介する組織となっている。
  • ベラルーシ政府は直ちに、政治的動機に基づく弁護士の訴追を止め、弁護士業務を遂行するための正常な労働環境を構築するべきである。


(ビリニュス、2024年5月27日)ベラルーシ政府当局は、政治的弾圧で逮捕された被告を弁護したり、政府による人権侵害を訴える活動をする弁護士を標的にして、組織的で広範な弾圧を行なっていると、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、ベラルーシ人権弁護士協会、および Right to Defence (弁護を受ける権利)プロジェクトは本日発表された報告書で述べた。

報告書「『弁護人としての義務を正直かつ誠実に果たすことを誓います』:ベラルーシの人権弁護士に対する政治的弾圧」(全95ページ)は、アレクサンドル・ルカシェンコの政府がベラルーシの法曹界をほぼ全面的に支配下に置き、人権弁護士を弾圧している実態を詳述する内容。

「人権弁護士に対し組織的に報復を行い、その権利を侵害し、政治的弾圧により逮捕された被告の権利を侵害することで、ベラルーシ政府当局は司法制度を見せかけだけのものにし、公平な裁判を受ける権利や法の下の平等な保護への権利をベラルーシの人々から奪っている」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのヨーロッパ・中央アジア調査員補佐のアナスタシア・クルオプは述べた。「ベラルーシ政府は政治的動機による弁護士の訴追をやめ、弁護士の独立を復活させるべきである」。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは2023年9月から2024年4月までに19人のベラルーシ人弁護士にインタビューし、過去3年間に各弁護士会のウェブサイトに掲載された文書を分析した。ヒューマン・ライツ・ウォッチはベラルーシ人権弁護士協会およびRight to Defenceプロジェクトと共に、公開されている情報やインタビューに基づき、弁護士が免許を取り消されたケースを140件以上分析し、恣意的で政治的動機に基づく免許取り消しのパターンを明らかにした。

政府が人権弁護士を標的にしているのは、あらゆる形の抗議活動に対する政府主導の厳重な取り締まりの一環である。こうした取り締まりは、2020年の大統領選挙や、6期目も続投しようとするルカシェンコ大統領の動きに対する市民による大規模な抗議行動の前後から、国中に広がった。

国連人権高等弁務官事務所は2023年と2024年の報告書で、あらゆる形の抗議を弱体化しようとするベラルーシ政府当局による人権侵害は、「迫害の罪」を含む「人道に対する罪に相当する可能性がある」と指摘。

権利を平和的に行使したり、人権や基本的自由を守ろうとしただけで訴追されてしまうベラルーシの人にとって、弁護士は命綱である。そうした政治的弾圧事件の被告は、拷問などの深刻な人権侵害を受け、他の受刑者よりも過酷な状況で拘禁されることが多い。

ベラルーシ政府当局は、弁護士が政治的弾圧事件の被告の事件を引き受けた瞬間から、その業務を妨害するため、多くの障壁を作り出す。政府当局は弁護士が依頼人に接見するのを認めず、弁護士と依頼人の内密の会話を盗聴し、記録する。政府当局はまた、広範な秘密保持を義務付ける合意書への署名を弁護士に強制し、裁判を恣意的に非公開にして弁護活動を難しくする。このため弁護士は、事件に関する資料を独立した立場の専門家と共有したり、依頼人が深刻な人権侵害を受けていることを社会に知らせたりすることができない。

政治的弾圧事件の被告の代理人を務めたことへの報復として、現代ベラルーシ史上初めて、弁護士たちが政治的弾圧により投獄されている。少なくとも6人の弁護士—Maksim Znak, Aliaksandr Danilevich, Vital Brahinets, Anastasiya Lazarenka, Yuliya Yurhilevich, そして Aliaksei Barodka—が、罪をでっち上げられた結果、6年から10年の刑に服している。

2020年9月以降、ベラルーシ政府当局は少なくとも23人の弁護士を恣意的に逮捕し、そしてその逮捕を口実に、政治的弾圧事件の被告の弁護をやめさせ、弁護士免許を取り消した。多くの弁護士が恣意的に拘束されて尋問を受け、その他のハラスメントや脅しを経験している。

「政府のこれだけの努力にも拘らず、ベラルーシの人権弁護士たちは、免許が取り消されても、その活動をやめることを拒絶している」とベラルーシ人権弁護士協会の会長、マリヤ・コレサヴァ=フジリナは述べた。「弁護士たちは、ベラルーシで起きている人権侵害の責任追及をするために、国際的手続きを使って亡命先からも闘いを続けている」。

司法省は、弁護士の独立を守る国際原則に違反し、ベラルーシの弁護士を全面的に支配している。司法省は弁護士の資格取得を監督するほか、弁護士の免許の取り消し業務遂行を規制する権限と、弁護士の自治組織から独立性を残らず奪う権限を持っている。ルカシェンコ大統領は、弁護士の業務は国から与えられた任務を果たし国の利益を保護する「国家政治家(statesman)」の業務と見なされるべきだと述べたことがある。

ベラルーシの弁護士会の執行部の編成やその活動を政府が支配していることに照らせば、ベラルーシ共和国弁護士会と各地域の弁護士会を、ベラルーシ全土の弁護士の利益を代表する独立した自治組織と見なすことはできない、と報告書を発表した3団体は指摘。

2021年にベラルーシ共和国弁護士業法が大幅に修正された結果、弁護士は個人として仕事ができず、法律事務所を開くこともできなくなった。弁護士は、各地の弁護士会が司法省と連携して設立し監督する法律相談事務所に加入しなければならない。

ベラルーシ政府は直ちに、政治的動機に基づく訴追を止め、弁護士に対するハラスメントや攻撃を全面的に停止し、弁護士が妨害や報復を恐れることなく義務を果たせるようにするべきである。ベラルーシの弁護士会は、会員に対する政治的動機に基づく報復を止め、弁護士と依頼人の利益を守り、弁護士の独立を支持するべきである。

国際社会は、ベラルーシ政府当局に対し、国際的義務を守り、司法を弾圧の手段として使うのを止め、すべての政治囚を解放し、ベラルーシの弁護士が依頼人の最善の利益のために任務を遂行するのを妨げてはならないと呼びかけるべきである。

「ベラルーシの弁護士会は、弁護士を守らず、国の計画や抑圧を媒介する組織になった」と、Right to Defenceプロジェクト所属の専門家であるマクシム・パラヴィンカは述べた。「弁護士会は政府の頼れる道具となってしまった。政府当局による弁護士に対する政治的報復に喜んで参加している」。

 

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