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トルコ:人権活動家やジャーナリストを脅かすスパイ防止法案

議会は曖昧で範囲の広すぎる今回の刑法改正案を否決すべき

トルコ・アンカラのトルコ大国民議会で開かれた本会議に出席する議員、2023年6月2日。 © 2023 AP Photo/Ali Unal

(イスタンブール、2024年11月2日)―トルコ議会は、スパイ行為の定義を曖昧に拡大し、国内の人権活動家やジャーナリストを始めとする市民社会アクターの正当な活動を犯罪化する恐れのある刑法改正案を否決すべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチと国際法律家委員会(ICJ)は本日述べた。

トルコ議会は近く、「国家の安全または政治的利益を損なう犯罪の遂行」と題する改正案を含む法案の採決を行う予定だ。この改正により、刑法に第339A条が新設され、国家の安全を損なう犯罪への加重刑が創設される。改正案は、国家の安全または「わが国の国内外の政治的利益」を損なう犯罪が、「外国または外国組織の戦略的利益のために、あるいはその命令により」なされた場合、犯人を3年から最長24年の刑に処すと規定する。

「今回の改正案が成立すれば、トルコ政府は、合法的な人権団体、メディア、その他の市民社会にスパイや国家の敵という汚名を着せ、その活動の信用を損ない、ひいては犯罪化する権限を手に入れることになる」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのヨーロッパ・中央アジア局長ヒュー・ウィリアムソンは述べた。「トルコ議会は、曖昧な表現が用いられた今回の改正案が民主国家にはそぐわないだけでなく、言論・結社・集会の自由の行使に深刻なリスクをもたらすことを踏まえて、これを否決すべきである」。

トルコ国内の人権団体、メディア、その他の市民社会組織は、新たな条項が自分たちの合法的な活動を脅かし、外国や外国組織のためにスパイ活動を行ったという虚偽の容疑で起訴される危険を生じさせることに強い懸念を表明している。

トルコ刑法では、現行の「国家機密侵害及びスパイ行為罪」(第326条~第339条)が、国家機密や情報の取得、破壊、流布を刑罰の対象としている。新設される第339A条は独立した罪を創設するものではなく、別の犯罪の起訴と併合されることになる。いずれの場合も起訴には法相の許可が必要となる。

改正案に添付された公式説明によれば、「国内または国外の政治的利益を損なう犯罪」の範疇には「経済、金融、軍事、国防、公衆衛生、公安、技術、文化、運輸、通信、サイバー、重要インフラ、エネルギーといった利益も」入るとされており、既存のスパイ罪よりも対象がはるかに広い。

この解説では、検察官がトルコ国内法に基づきある人物を起訴した場合、その容疑の数にかかわらず、新設された条項に基づいて、外国勢力の戦略的利益のために行動した罪でこの人物を追加で起訴する可能性が想定されていることは明らかだ。例えば、国際的な人権報告書の執筆者を、その内容が大統領に人権侵害の責任があると指摘したことを理由として、「大統領侮辱罪」というそもそも不当な容疑で取り調べる検察官は、この人物を「国家の安全または政治的利益を損なう」犯罪を行った容疑でさらに取り調べることができるのである。

今回の改正案は、欧州人権条約及び市民的及び政治的権利に関する国際規約が定めるトルコの義務、とりわけ表現・結社・集会の自由の権利の尊重とは相容れない。また、改正案の文面は曖昧かつ広すぎて、国際法上の「合法性」基準を満たしていない。法律が有効であるためには、一般人が自らの行動の結果、特に法律違反となる可能性を合理的に予測できるほど十分に明確でなければならない。今回の改正案は多くの点でこの要件を満たしていない。

例えば、「国内または国外の政治的利益を損なう犯罪」を構成するような活動は定義されていないし、予測することもできない。「外国の国家または組織の戦略的利益」の意味についても同様だ。予測可能性、ひいては合法性の欠如は、トルコ当局が批判的または独立した市民社会団体に対して恣意的に法律を適用する余地を大きく与える。

また、同条項の曖昧な表現は、トルコ国内の市民社会組織やメディアが、透明性のある報告・会計要件を満たした上で合法的に外国資金を受け取っている場合でも、新たな法律に抵触する可能性を生じさせる。こうした団体は「外国の国家または組織の戦略的利益に従って活動している」と非難される恐れがある。

「トルコ政府が、平和的な表現・集会・結社を犯罪化する目的で、テロリズムや国家安全保障に関する曖昧な定義の法律を頻繁に濫用している現状を踏まえると、人権擁護活動・ジャーナリズム・その他の市民社会活動を標的とする新たな犯罪化手段を政府が整備しようとしていることは容認できない」と、国際法律家委員会の欧州・中央アジア暫定プログラムディレクター、テムル・シャキロフは述べた。「法案の採決を控えた国会議員は、条文の広範かつ曖昧な性質を理解した上で、これを否決することが極めて重要だ。」

人権の保護と促進は、トルコが負う厳粛な法的義務であり、それ自体が国家の利益にかなうものだ。にもかかわらず、トルコは人権擁護活動を国益とするものに敵対するものとして扱い、人権活動を犯罪化してきた長年の実績があると、ヒューマン・ライツ・ウォッチと国際法曹協会は述べた。

国際人権団体の「戦略的利益」がトルコを含む全ての国々の人権保護であるならば、刑法に新設されようとしているこの条項は、トルコ政府の人権侵害行為を批判する人権専門家が、その活動を理由に刑事訴追されるリスクを生じさせる。これは国際法に違反するだけでなく、全く容認できない状況だと両団体は指摘した。

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