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スリランカ:不当に拘束されているジャーナリストを釈放せよ

政府がメディアの口封じのためにテロ対策法を濫用

(ニューヨーク) スリランカ政府は、言論を理由に裁判にかけられている著名なタミル人ジャーナリスト、J.S.ティッサイナヤガムに対する起訴を直ちに取り下げて釈放すべきである、と本日、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。同じく恣意的に逮捕されているタミル人の出版者N.ジャシハランとその妻V・バラマシーも直ちに釈放されるべきである。

「スリランカ政府は、恥もかえりみず、テロ対策法をつかって、メディアで平和裡に批判的な意見を述べただけのジャーナリストたちを沈黙させている。」とヒューマン・ライツ・ウォッチ、アジア局長ブラッド・アダムスは述べた。「権利を尊重する民主主義国家であると主張する政府が取るべき方法ではない。」

サンデー・タイムス紙のコラムニストであり、「アウトリーチ」ウェブサイトの編集責任者でもあるティッサイナヤガムは、2008年3月7日に警察のテロ捜査局(TID)に逮捕された。その前日、E-クワリティー・プレス(E-Kwality press)のオーナーであるジャシハランとバラマシーもテロ捜査局に逮捕されている。ティッサイナヤガムとジャシハランはアウトリーチ・マルチメディア社の共同責任者である。なお、バラマシーは同社で何らかの役職についてはいない。

ティッサイナヤガムの逮捕から5ヶ月以上が経過した8月25日になって初めて、検察官は同国の非常事態令とテロリズム防止法に基づき、彼が以前編集者を務めていた雑誌「月刊・北東部」を印刷・頒布した容疑及び同雑誌のための資金調達を通じてテロ組織を幇助した容疑で起訴した。現在彼はコロンボの高等裁判所で裁判にかけられている。

ティッサイナヤガムの起訴事実は、彼が「月刊・北東部」に掲載した二本の記事に言及。2006年7月の論説で、ティッサイナヤガムは、見出しの下で以下のとおり述べた。

「今、タミル人のために安全を確保することが、将来の北東部の政治を決定的に左右する。政府がタミル人に何の保護を提供していないことは、どう見ても明らかである。実際には、殺戮は政府の治安維持部隊によって行われているのだ。」

ティッサイナヤガムに対する容疑事実には、2006年11月の記事も一部含まれている。それは、東部バハライでの軍事攻撃に関する記事で、彼は次のように述べた。「こうしたバハライの民間人に対する軍事攻撃と同時に、同地区の住民を追放して人口を激減させる目的で、医療品、燃料、そして食料の供給を絶ち、住民を飢えさせる計画も実行されている。この記事を書いている最中にも、バハライは、激しい砲撃と空爆に曝されている。」

ティッサイナヤガムの容疑事実で触れられているティッサイナヤガムの文章は、政府軍とタミル・イーラム・解放のトラ(タミルホームランドの独立を求める反政府軍)との間の武力紛争下で行われた行為についての意見に過ぎないと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。意見表明の自由と表現の自由は、スリランカも締約国である市民的及び政治的権利に関する国際規約(ICCPR)の第19条で保護されている。同規約は国家安全保障を根拠とする一定の表現の自由に対する制限を認めるものの、恣意性を防ぎ、かつ、国際的に認知されたすべての個人の人権が確実に保障されるよう、そのような制限をつけるための条件は明確でなければならず、狭義に解釈されねばならない。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは拘留されている3名の安全に懸念を表明。11月18日以降、当局はティッサイナヤガムをコロンボのマガジン刑務所に拘留しているが、同刑務所には、有罪判決を受けた140名の囚人たちが収監されている。当該刑務所に移送されるにあたり、ティッサイナヤガムは他の囚人たちから脅迫を受けた。

ジャシハランとバラマシーもまた、脅迫を受けている。11月25日と26日、バッティカロアにいるジャシハランの家族は、彼の身の安全を確保したければ10万ルピー(約900米ドル)を払え、とする電話を受けた。電話をかけてきた者は3日以内にその支払いがなされなければ、ジャシハランは刑務所で殺されると脅した。家族は警察に告訴した。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、バラマシーが他の110名の被拘禁者たちとともにコロンボ刑務所の女性房に収監されていることを突き止めた。それら被拘禁者の大多数が既決囚である。国際規約(ICCPR)は被疑者・被告人と有罪判決を受けたものとを分離して収監するよう定めている。

拘束下の3名には、弁護士へのアクセスが十分与えられていない。警察官らがティッサイナヤガムと彼の弁護士との接見に同席し、秘密交通権を侵害してきた。3名は、最高裁判所に対し、継続中の拘禁の合法性を争う基本的権利申立を行っている。

スリランカの憲法14条は、言論の自由を定めている。しかしながら、2006年以降、マヒンダ・ラージャパクサ政権は、政府の軍事政策や人権状況について政府から独立した意見や政府に反対する意見を持つメディアやNGOその他に対して、脅迫をし、沈黙を強制しており、その度合いはますます強まっている。 政府高官らは、そうした批判を行う者たちを、分離独立派タミル・イーラム・解放のトラの支援者で、国家反逆者だ、と攻撃してきた。

「政府は、この拘禁下にある著名な3人の基本的権利や福祉を無視しているが、これは、治安法のもとで拘禁されている他の数百名の状況についても、更に大きな懸念を抱かせるものだ。」とアダムスは述べた。

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