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外務大臣殿:

今般、ナーフィア・アリー・ナーフィア・スーダン大統領補佐官の訪日の機会に、書簡を送らせていただきます。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ダルフール紛争の早期解決に日本政府が貢献しようとしていると承知しております。特に、ダルフール地方部族間の対話促進支援を歓迎しております。しかしながら、政治プロセスだけでは、今現在、攻撃に曝されている一般市民を守ることができない、さらには過去5年間に犯された残虐行為・不法行為を裁き犠牲者に酬いることはできないということについて強調したいと存じます。

 スーダン政府は、ダルフールの一般市民に対して、大規模な直接攻撃を続けています。最近では2008年2月8日、スーダン政府軍とジャンジャウイ-ド民兵が、西ダルフールの3つの村を攻撃しました。それによって、数百人の無辜の人々が亡くなり、数万人が住居を追われました。以来、政府は同地域を爆撃し続け、国境周辺の少なくとも2万人は、生死に関わる人道支援が届かぬところに、孤立しています。住居を追われた人々が辿り着いた国内難民キャンプさえも、爆撃されました。

 スーダン政府は、被害者を救済する役割の人びとをも積極的に妨害しております。日本政府が、繰返し支援を表明している、国連AU合同ダルフール平和維持部隊(UNAMID)は、決議を十分実効に移せば、過去に例のない大規模な平和維持部隊となります。残念なことに、スーダン政府がUNAMID配備に次々と障壁を設けるため、かろうじて決議の3分の1規模で展開しているのみです。現時点でも依然としてスーダン政府は、部隊への土地の割当て及び装備供給を遅延しています。さらに、アフリカ以外の国からの部隊を拒絶しています。政府はそれに関して、アフリカ諸国の部隊すべての配備を待って、アフリカ以外の国からも受け入れると述べていますが、それは極めて重要な点で誤っております。拒絶されているアフリカ以外からの部隊こそが、アフリカでは現在得られないキャパシティを有し、しかもただちに配備できるからなのです。

 配備を始めた部隊も、重要な装備供給が滞っているため、縮小を余儀なくされています。特に、ヘリコプターはじめ輸送手段が不足しています。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、日本の自衛隊が平和維持活動に参加することについて、憲法上の解釈に立ち入るものではありませんが、憲法の下でUNAMIDに輸送ヘリコプターを供給することができないかご検討いただくよう、日本政府に強く要請いたします。

 スーダン政府はダルフールにおいて、犯罪不処罰の環境を、蔓延させています。同国の裁判所では、ダルフールにおける重大犯罪について、誰一人として訴追されていません。2007年4月、国際刑事裁判所(ICC)は、西ダルフールにおける残虐行為に関し、二人に逮捕状を出しました。しかしスーダン政府は、ICCへの協力を拒否し続け、二人の身柄引渡しも、拒絶しています。逮捕状が発付された一人は、アフマド・ハールーン人道問題担当相です。本来、同人が申立てを受けているその犯罪の被害者たちの福祉について責任を担う役職に就いております。もう一人は、アリー・クシャイブ氏で、他の容疑により一時国内に拘禁されていましたが、07年10月釈放されています。

 日本は、ローマ規程の新しい加盟国となり、斎賀冨美子氏がICC判事に指名されるなど、ICCと国際的正義に、コミットメントを示しました。今回、日本政府からスーダン政府に対し、ICCに全面的に協力するよう、そして即刻ハールーン氏とクシャイブ氏を引渡すよう要求することで、日本は、そのコミットメントの深さを示す機会となると思料いたします。

 政治プロセスと、一般市民の保護や正義をトレードオフすることはできません。スーダン政府が、一般市民への攻撃を継続し、甚大な犯罪の責任者の処罰を拒絶することは、ダルフールの和平の可能性にとって障害となるだけです。日本政府は今回ナーフィア大統領補佐官の来日の機会を捉え、スーダン政府に対し、即刻攻撃を停止すること、UNAMIDの配備を妨害しないこと、全面的にICCに協力することを、働きかけるべきです。加えて、日本政府の平和維持活動への一層のコミットメントを示すためにも、UNAMIDの効果的展開に寄与することとなる輸送ヘリコプターの提供を検討するべきと思料いたします。

ジョージェット・ギャグノン
アフリカ局 アクティング・ディレクター

皆様のあたたかなご支援で、世界各地の人権を守る活動を続けることができます。

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