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エチオピア:休戦には強力な人権状況のモニタリングが必要

2年に及ぶ紛争、残虐行為停止に向けて法による正義の重要性を浮き彫りに

Redwan Hussein (2nd L), Representative of the Ethiopian government, and Getachew Reda (2nd R), Representative of the Tigray People's Liberation Front (TPLF), sign a “cessation of hostilities” agreement between the two parties after African Union-led negotiations, Pretoria, South Africa, November 2, 2022. © 2022 PHILL MAGAKOE/AFP via Getty Images

(ナイロビ)― 2022年11月2日、エチオピア連邦政府とティグレ(ティグライ)当局は「敵対行為の停止」で合意した。これは、さらなる残虐行為と人道的破局を回避するため、国際社会による即時かつ厳格なモニタリングを実施する上で、きわめて重要な機会であると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。この2カ月にわたりティグレ州では戦闘が激化しており、さらなる人権侵害の懸念が高まるとともに、大規模な避難民化が発生している。

アフリカ連合(AU)の主導で南アフリカで行われた10日間の交渉を経て、この主要な2つの紛争当事者は合意に達した。2020年11月4日の開戦から約2年が経過してのことだった。この紛争は、ティグレ州及び隣接するアファール、アムハラ両州に甚大な影響を及ぼしている。ティグレ州の住民の大半は、生存に不可欠な人道援助に依然としてアクセスできない。エチオピア政府が同州をほぼ包囲しているためだ。

「エチオピア北部で2年近く多くの血が流された。今回の敵対行為の停止は、残虐行為と何百万人もの市民の計り知れない苦しみを終わらせる重要な瞬間だ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアフリカ局長代理カリン・カネザ・ナントゥリャは述べた。「広範な人権侵害を行った紛争当事者が、民間人にこれ以上被害を及ぼさないようにするには、国際的なモニタリングが不可欠である。」

この合意達成を支援した関係機関等は、民間人の保護を優先し、強固なモニタリングを強く求めるべきだ。そして、エチオピア政府とティグレ当局が人権に関するコミットメントを完全に実行するようにしなければならないと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、この紛争のすべての当事者による戦時国際法の深刻な違反行為と人権侵害を明らかにしてきた。エチオピアとエリトリアの両政府軍は、同盟する民兵組織ともときに連携しながら、超法規的殺害、レイプと性暴力不法な砲撃空爆、略奪を行った。ティグレ側の軍隊も民間人を殺害し、性暴力や財産の略奪と破壊を行った。

ティグレ州ミイラバウィ県(西県)について、ヒューマン・ライツ・ウォッチはアムネスティ・インターナショナルと共同で、アムハラ州の軍部隊と民兵組織による、ときにエチオピア連邦軍も参加したティグレ人への民族浄化作戦を明らかにした。

この紛争は、世界最悪レベルの人道危機を引き起こしている。2022年6月、国連はアファール、アムハラ、ティグレの3州で1,300万人が人道支援を必要としているとの推計を発表した。2021年6月以降、エチオピア当局はティグレ州を事実上包囲し、何十万人もの人びとに人道支援が届かない状況を作りだし、ベーシックサービス(銀行、電気、通信など)を遮断している。9月、国連人権理事会のマンデートを受けた国際人権専門家委員会は、エチオピア軍が「民間人の飢餓を戦争の手段として意図的に使用している」と認定した

国連は、2020年11月以降、27人の援助関係者が殺害されたと報告した。直近では、ティグレ州で別々に発生した襲撃事件で、エチオピア赤十字の救急車の運転手1人と国際救援委員会(IRC)の職員1人が死亡した。

2022年11月2日に紛争当事者が発表した共同声明で、エチオピア政府は「人道支援機関との協力を強化し、援助を必要としているすべての人びとへの援助を迅速に実施すること」、また「紛争の影響を受けたすべてのコミュニティの(略)公共サービスの回復に引き続き努めること」に合意した。紛争が始まって以来、エチオピア政府当局は、ティグレ州での人道支援の妨害を否定してきた。このため、アフリカ連合など合意を監視する機関が、妨害行為の停止を実現させることが重要になると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。これには、ティグレ州へのベーシックサービスを直ちに復旧させること、独立した人道支援を、被害を受けたすべてのコミュニティに行き渡らせるようにすることも含まれるべきだ。

エチオピアのパートナー国は、敵対行為の停止の遵守を監督するメカニズムの設置にあたり、人権モニタリング部門とジェンダーの権利に関する専門家が現状報告を適時公表する機会を設けるべきだ。また、今後人権侵害が発生した場合には、具体的な対応を行う態勢を整えておくことも求められる。

ヒューマン・ライツ・ウォッチが今回の合意文書を見たところ、民族浄化作戦の現場となったティグレ州西県の民間人の状況に関する明確な言及はなかった。紛争当事者は、国際人道機関が、公式・非公式な収容施設にたいして事前通告せずに行うものを含めて、即時かつ安全にアクセスできるようにすることが求められる。

連邦政府と地方政府は、エチオピアに関する国際人権専門家委員会(International Commission of Human Rights Experts on Ethiopia)などの独立した人権監視団に対し、本合意でなされた人権関連の約束の完全実施を求めるために、紛争の影響を受けた地域への完全かつ安全なアクセスを行うことを認めるようにすべきである。

今回の合意には、公的なアカウンタビリティ(責任追及)についての詳しい記述がない。共同声明が「アカウンタビリティ、真実、和解、癒しを確保するための移行期正義政策のフレームワーク(transitional justice policy framework to ensure accountability, truth, reconciliation, and healing)」に言及しているのみだ。

エチオピア政府とそのパートナー国は、人びとが経験を語り合う枠組みの設定などの移行期正義(トランジショナル・ジャスティス)の取り組みに加え、すべての紛争当事者が行った国際法違反行為の調査を支援すべきである。

「この2年間、重大犯罪への不処罰が根付き、それがさらなる人権侵害の要因となった」と前出のカネザ・ナントゥリャ局長代理は述べた。「エチオピアのパートナー国・機関及び今回の合意を支援した機関等は、重大犯罪のアカウンタビリティ(責任調査・追及)は議題であり続けると明確にし、この悲惨な紛争の無数の被害者が、法による正義への道を得ることができるようにすることが求められている。」

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