日本ウイグル議員連盟 会長
古屋圭司 殿
CC: 事務局長 石橋林太郎 殿
CC: 経済安全保障担当大臣 小野田紀美 殿
CC: 外務大臣 茂木敏充 殿
CC: 経済産業大臣 赤沢亮正 殿
私どもヒューマン・ライツ・ウォッチは、貴殿が日本ウイグル議員連盟の会長として、米国「ウイグル強制労働防止法(UFLPA)」の日本版を起草する計画を進めているという報道を受けて、その取り組みを全面的に支持すべく、本書簡を差し上げる次第です。
ヒューマン・ライツ・ウォッチはこれまで、中国政府がウイグル人およびその他のテュルク系ムスリムに対して行っている強制労働プログラムについて、詳細な調査を行ってきました。2024年の報告書では、日本の会社を含む複数のグローバルな自動車会社が、アルミニウムのサプライチェーンにおいてウイグルの強制労働にさらされるリスクを明らかにしました。この報告書は、太陽光パネル、アパレル、水産物、重要鉱物など、様々な産業がウイグルの強制労働によって世界的に損なわれている状況を示す複数の調査結果に連なるものです。ヒューマン・ライツ・ウォッチはまた、「ウイグル強制労働廃絶連合」(Coalition to End Forced Labor in the Uyghur Region)および「コットン・キャンペーン」の長年のメンバーであり、共同創設団体でもあります。この二つは共に、様々な背景や地域においてなされている国家強制型強制労働(SIFL)に対処することを主な目的としています。
貴連盟が、UFLPAをモデルとした立法を検討し、日本の企業や消費者がウイグルの強制労働に関連する製品にさらされるリスクに対処しようとされていることを、私たちは心強く感じております。強制労働が関与した製品の流入を阻止する輸入規制措置は、新疆ウイグル自治区内外での強制労働を終わらせるよう中国政府に圧力をかけるための、極めて重要なメカニズムです。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、米国のUFLPAおよび、強制労働に関与した製品の欧州連合(EU)への輸入を禁じた「強制労働禁止規則」(EU FLR)の立法・施行過程を注視してまいりました。私どもは本書簡により、日本ウイグル議員連盟が輸入規制法案を策定する上で有益と思われる、UELPAとEU FLRに関する私どもの活動から得られた知見と提言を共有いたします。
私どもの提言を是非ご検討いただきますようお願いいたします。貴連盟と建設的な関係を構築いたしたく、この問題について、またその他の問題について意見交換をする場を頂戴したく存じます。までどうぞご連絡ください。
敬具
ヒューマン・ライツ・ウォッチ
日本代表
土井香苗
ヒューマン・ライツ・ウォッチ
シニア・アドボケート コーポレート・アカウンタビリティ
エレーヌ・ド・ランジェルヴェ
提言
国家による強制労働のリスクが高い地域全体からの製品および製品群を対象とした輸入制限は、大規模な強制労働リスクに対処する強力な手段になります。
国家による強制労働が関わる商品の規模を踏まえると、EUの強制労働規制(EU FLR)のように製品ごとに調査を行う方式は、調査当局にとって非効率であるだけでなく、実際の影響も極めて限定的です。法の序文でも指摘されているように、サプライチェーン全体が影響を受けていることから、特定の製品群に対する地域単位での輸入禁止措置を検討することを強く推奨します。2021年12月のUFLPA発効から2025年8月までに、米国税関・国境警備局(CBP)は、新疆とのつながりが疑われるとして、37億万ドル相当の貨物を差し止め、最終的に1万6千件以上の輸入を拒否しました。同法は、企業により責任ある調達およびサプライチェーン管理を促す上で大きな効果を上げています。調査によれば、主にUFLPAへの対応として、太陽光発電業界の投資パターンに顕著な変化が生じており、同業界の企業はウイグル地域からの調達を避け、新疆産の原材料・部材に依存しない代替サプライチェーンの構築を進めています。
輸入制限は、「国家による強制労働」のリスクが高いあらゆる地域を対象とすべきであり、新疆を含むものの、同地域に限定されるべきではありません。
世界では推定390万人が、トルクメニスタン、北朝鮮、新疆などの国や地域で国家による強制労働の下に置かれています。世界中の国家による強制労働に対処することは、その出所に関わらず、消費者が強制労働によって生産された製品を知らずに購入してしまうことを防ぐ上で重要です。
国家による強制労働を対象とする立法には、「反証可能な推定(rebuttable presumption)」規定を盛り込む必要があります。
これは、国家による強制労働のリスクが高い地域からの製品(または製品群全体)について、原則として強制労働によって生産されたものとして扱い、輸入を禁止する仕組みです。新疆のように、広範な監視、アクセス制限、労働者と監査人へのリスクにより独立した評価が不可能な地域では、この手法が不可欠です。「反証可能な推定」は、当該地域で事業活動や調達を行う企業に立証責任を課す一方で、企業が決定に異議を申し立て、製品が強制労働によって生産されていないことを示す証拠を提出する機会を確保するものです。
輸入禁止措置における強制労働の定義は、国家による強制労働を十分に捉えるべきです。
広く知られる国際労働機関(ILO)の「強制労働の11個の指標」は重要ですが、主に民間サプライチェーンでの強制労働を対象としており、国家による強制労働には適用されません。ILO第105号条約(強制労働廃止条約)第1条は、国家が次の手段、制裁または方法として強制労働を課すことを明確に禁じています。
- 政治的な圧制若しくは教育の手段又は、政治的な見解若しくは既存の政治的、社会的若しくは経済的制度に思想的に反対する見解をいだき、若しくは発表することに対する制裁
- 経済的発展の目的のために、労働力を動員し、及び利用する方法
- 労働規律の手段
- 同盟罷業に参加したことに対する制裁
- 人種的、社会的、国民的又は宗教的差別待遇の手段
提案される立法における国家による強制労働の定義は、ILOの「Hard to see, harder to count: Handbook on forced labor surveys(2024年版)」第9章に記載された指標と状況、およびILOが公表予定の国家による強制労働の類型に準拠すべきです。
企業に対し、サプライチェーン全体の把握(マッピング)を義務付けるべきです。
強制労働によって生産された製品の流入を効果的に防ぐため、企業には厳格な書面ベースのデューデリジェンスの実施を求める必要があります。サプライチェーンのマッピング、リスク評価、購買慣行のレビューといった多くのデューデリジェンス手順は遠隔でも実施可能ですが、実効性のある緩和や是正には、労働者や現地パートナーとの信頼できる現場での関与が不可欠です。しかし、新疆のような地域では、基本的自由に対する体系的な制限により、こうした関与は不可能です。通常、監査人が訪問を許されるのは、当局が用意した「模範施設」に限られ、常に政府監視員の監視下に置かれます。また、選別され、事前に指示を受けた労働者や管理者としか対話できず、人々は報復を恐れて国家の主張を繰り返す以外の発言ができません。輸入規制はこうした限界を踏まえ、実現不可能な現地検証に依拠するのではなく、遠隔でのリスク分析を重視すべきです。
企業向けのデューデリジェンス・ガイダンスでは、サプライチェーン内で国家による強制労働の可能性または実際の発生をどのように特定するかを明確に示す必要があります。
このガイダンスでは、独立した労働者との関与が不可能な抑圧的環境では、ソーシャル・オーディット(社会監査)が信頼できる情報源とはなり得ないことを説明すべきです。また、「ディスエンゲージメント」に関する指針も含まる必要があります。これは、企業が加担を避けるため、国家による強制労働が存在する地域での事業運営、調達、または取引関係から完全に撤退することを指します。このアプローチは、「国連ビジネスと人権に関する指導原則」および「ウイグル強制労働廃絶連合(Coalition to End Uyghur Forced Labor)」の提言と整合します。
税関当局は、国家による強制労働に関連する製品を特定し、輸入を阻止するために必要な調査権限と資源を備えるべきです。
調査当局には、職権で製品や企業に対する調査を開始する権限に加え、第三者からの情報提供を受け付ける権限も付与されるべきです。輸入禁止措置を実効的に運用するには、当局が十分なリソースと能力を備えることが欠かせません。政府はまた、ステークホルダー(被害者、市民社会団体、地域社会など)が、国家による強制労働の実態を記録し、証拠を収集するための調査を行えるよう支援すべきです。さらに、税関当局には、調査結果および輸入禁止決定の根拠を公表することを義務付けるべきです。
法案には、調査における外国政府の非協力に対処する措置を盛り込むべきです。
国家による強制労働は政府主導で行われるため、当該国当局が調査へのアクセスを遮断あるいは妨害する事態がしばしば生じます。反証可能な推定が存在しない場合、EUのFLRには「非協力条項」(第17条4、第20条2)が設けられており、情報への直接アクセスが拒否された場合に、欧州委員会が間接証拠に基づいて当該の強制労働を認定できるようにしています。この規定は、企業や公的機関が、正当な理由なく情報提供を拒否・遅延したり、情報を改ざんしたりするなどして調査を妨げる状況(誤解を招く行為、アクセス拒否、威圧行為などを含む)を対象とし、特に国家による強制労働が疑われる事案に適用されます。
法案では、国家による強制労働への対応力を高め、保護の手薄な市場への迂回輸出を防ぐため、同様の法制度を有する第三国の当局と税関当局との関与・協力を義務づけるべきです。
EUのFLRでは、欧州委員会が他国政府と、強制労働のリスクのある地域や製品(国家による強制労働リスクを含む)、ベストプラクティス、そして製品禁輸決定に関する情報(理由や証拠を含む)を交換することを義務づけています。