(バンコク)軍事クーデターからの2年間で、ミャンマー国軍は殺傷能力のある武器や弾圧的措置の使用を拡大してあらゆる抵抗勢力を抑えている、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。諸外国政府は基本的自由と民主的な文民統治を確立させるために連携して国軍に対する圧力を強めるべきだ。
ミャンマー国軍は2021年2月1日、事実上の指導者であるアウンサンスーチーなど選挙で選ばれた文民高官を拘束した。以来、軍政はいかなる抵抗も容赦なく弾圧し、表現・結社・集会の自由を厳しく制限している。非政府団体の政治囚支援協会によれば少なくとも1万7,000人の抗議者や活動家が逮捕され、2,900人が殺された。治安部隊は恣意的拘束、拷問、性暴力、集団殺害その他の人権侵害を行っており、それらは人道に対する罪に相当する。
「ミャンマー国軍はクーデター以後の2年間で、ミャンマーの人々に対して人道に対する罪や戦争犯罪に相当する残虐行為をますます悪化させる一方である」とヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長エレイン・ピアソンは述べた。「ミャンマーの将軍たちは、当然見せかけだけのものになる『選挙』を8月に行うのではなく、自らの犯罪について国際的に追及されるべきである」
拡大された軍事作戦の際に国軍は民間人に対する攻撃を行い、これらはカチン、カレン、カレンニー、シャン各州の少数民族住民に対する戦争犯罪に相当する。国軍は「焦土」戦術を使い、マグウェ管区域とザガイン管区域で村を焼き払った。
国軍は紛争地域にいる数百万人もの避難民などへの人道支援を阻止してきた。長年ロヒンギャが迫害やアパルトヘイトなど人道に対する罪に相当する組織的な人権侵害や差別に直面してきたラカイン州では、治安部隊が移動や援助に新たな制限を課している。こうした制限は食料や水不足を悪化させ、予防可能な病気や深刻な栄養失調の危険を高めている。
国連人道問題調整事務所(OCHA)は、ミャンマーで少なくとも1,760万人が人道支援を緊急に必要としていると推定している。クーデター以降の戦闘によって国内には100万人以上の避難民がおり、さらに7万人の難民が近隣国に逃れている。
2022年12月21日、クーデター以降の国軍による人権侵害を非難する画期的な国連安保理決議が採択されたが、国際的な武器禁輸措置や国際刑事裁判所への付託には及ばなかった。ロシアと中国が棄権したことが、国軍がますます国際的に孤立していることを告げた。安保理理事国は、武器禁輸措置のほか、国軍や国軍所有企業に対する標的制裁を課すべきだ。
各国政府は国軍の主な収入源を効果的な形で標的するべきだ。特に、金属、宝石、木材の輸出から外貨収入を得ており、その収入で武器や軍事装備品、燃料を購入している、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。
カナダや欧州連合(EU)、英国、米国が科している経済的な標的制裁は、実施が不十分であるために効果が限られている。オーストラリア、日本、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国などその他の主要国は、クーデター以降いかなる標的制裁も科していない。
ASEANの指導者らは、ASEANの高級レベル会議へのミャンマー国軍指導者の参加を禁じている。2022年には、国軍が2021年4月にASEANとの間で合意した「5つのコンセンサス」の内容を実行していないと指摘して「軍政」を公然と批判し始めたASEAN指導者もいた。
2023年には、ASEAN議長国としてのインドネシアの評価は、一つには継続中の人権侵害について国軍に圧力をかけられるかどうかにかかっている、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。2月3〜4日にジャカルタで開かれる外相会議では、インドネシアは国軍が5つのコンセンサスで約束した内容の達成度について2023年4月を最終期限とすることを提案するべきである。「軍政」指導者がコンセンサスについて引き続き何もしなければ、ASEAN加盟国は重大な人権侵害について国軍の責任を追及するために他国政府や国連との具体的な関与をすると約束するべきである。
国軍は8月に詐欺的な「選挙」を計画しており、1月27日に政党登録法を制定した。同法は「軍政」との「協力」を拒否するいかなる政党にも制限が課されることを定めている。国軍が「反乱分子」「テロリスト」「違法」団体と見なす個人または政党は参加を禁じられており、これによって文民による影の政府である国民統一政府(NUG)や多くの少数民族政党の参加が事実上阻止される。諸外国政府は、選挙監視団の派遣や技術支援の提供などを通じて、計画されているこの選挙を正当な選挙として扱うべきではない。
「ミャンマー国軍は『選挙』を実施する身振りをしてうわべだけの信頼性を確立させようとしているが、国際社会は騙されたり脅されたりしてこの見せかけの選挙を認めるべきではない」とピアソンは述べた。「国民に対して基本的権利をすべて否定し、政治的反対者を投獄したり参加資格がないと見なしたりしているのでは、自由で公正な選挙を行うことなどできない」
EU加盟国と米国、英国は、国軍高官や国軍所有企業に対する制裁を強化するためにいっそう連携するべきである。より厳しい行動によって、外貨収入の流れを止め、国軍が武器や物資を購入する能力を抑制し、ASEANその他の仲介者が、国軍が人権侵害を止め民主的な文民統治を確立させるように圧力をかけるのを助けることができるだろう。
「特にインドネシア、マレーシア、シンガポールは米国とEUに対し、国軍に対する既存の制裁の強化や実施を支持すると表明するべきである」とピアソンは述べた。「標的制裁が強化されなければ、ミャンマー国軍はミャンマーの人々に対する残忍な統制を強める一方になるだろう。」