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ミャンマー:日本政府の建設事業が国軍を利する

株式会社横河ブリッジはミャンマー国軍と関係を断つべき

Members of the Myanmar military stand atop trucks loaded with missiles during a parade to commemorate Myanmar's 77th Armed Forces Day in Naypyitaw, Myanmar, March 27, 2022. © 2022 AP Photo/Aung Shine Oo

(東京) -株式会社横河ブリッジは、日本政府の開発援助事業のためにミャンマーの軍系企業ミャンマー・エコノミック・コーポレーション(MEC)に100万米ドル以上(約1.3億円以上)を2022年に支払ったとみられると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。

日本政府は、ミャンマー国軍を利する人道支援以外の開発援助をすべて停止すべきだ。国軍は2021年2月1日の軍事クーデター以降、広範かつ組織的な人権侵害を犯してきた。また日本政府は、横河ブリッジを含む日本企業が軍系企業などと事業関係を断つよう促すべきだ。

「日本政府は、横河ブリッジとMECの事業関係を通じて、資金面でミャンマー国軍の人権侵害に事実上加担した」とヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局プログラムオフィサーの笠井哲平は述べた。「日本政府は、ミャンマー国軍に人道支援以外の開発援助を提供すべきではない。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチが分析した取引履歴によると、横河ブリッジは2022年7月から11月の間にMECに約130万米ドル(約1.7億円)をバゴー橋建設事業のために支払った。支払いは、日本のみずほ銀行からミャンマー外国貿易銀行のMECの口座に複数回行われた。

日本政府は2016年に、対ミャンマー政府開発援助(ODA)であるバゴー橋建設事業を承認。同事業には国際協力機構(JICA)による約310億円の借款が含まれる。横河ブリッジは2019年3月に同事業の工事を受注した。

外務省の担当者はヒューマン・ライツ・ウォッチの書簡に対して、クーデター以降停止していたバゴー橋の工事が、2022年4月1日に再開したと回答した。また、横河ブリッジによるMECへの支払いに関しては、「下請け契約に基づく民間企業間の取引に係る事柄であり、日本政府として説明する立場にありません」とした。

横河ブリッジはヒューマン・ライツ・ウォッチの書簡に対して、「個別案件についての回答は差し控える」とした。みずほ銀行は「個別の案件については守秘義務の観点からお答えすることができない」とした。

2021年2月1日のクーデター後、米国、イギリス、欧州連合とカナダは、国軍の膨大な資金源であるとして、MECと軍系企業ミャンマー・エコノミック・ホールディングスに制裁を科した。クーデター以降、ミャンマー国軍は超法規的殺人、拷問、そして「人道に対する罪」や戦争犯罪である民間人に対する無差別攻撃を行ってきた。

政治囚人支援協会によると、ミャンマーの治安部隊はクーデター以降、277人の子どもを含む2700人以上を殺害し、1万7千人以上を恣意的に拘束した。

バゴー橋建設事業におけるMECの関与は、現地メディア「ミャンマー・ナウ」が、建設にMECが保有する製鉄所が携わっていることを2021年3月に報じたことで明らかになった。JICAは報道後、ヒューマン・ライツ・ウォッチの問い合わせに対して、横河ブリッジが2019年11月にMEC及び関連会社と下請契約を締結したと認めた。2021年4月、横河ブリッジの親会社である横河ブリッジホールディングスは、工事は「現地の情勢から実質的にストップ」しており、「人権を尊重した企業行動を行って」いくとした。

以前ヒューマン・ライツ・ウォッチが記録した通り、横河ブリッジとMECの事業関係はバゴー橋建設事業の前から存在している。2015年の決算説明会資料によると、横河ブリッジは2014年3月にMECと覚書を締結しており、同資料によると、横河ブリッジはMECと「技術協力について関係を構築」し、MEC の「友好ファブへの育成」を目指している。

国連が設置した事実調査団は、2019年9月の報告書でMECはミャンマー国軍に保有されており、製造、鉱業や通信などあらゆる事業を通じて国軍に膨大な利益を生み出していると指摘。事実調査団は、ミャンマー国軍やMECを含む軍系企業が関与する「あらゆる外国の企業活動」が、「国際人権法および人道法違反に寄与あるいは関与するリスク」が高いと結論付けた。最低でも、「こうした外国企業がミャンマー国軍の財政能力を支援している」とした。

国連の人権高等弁務官事務所は、2019年の事実調査団の報告書のフォローアップとして、2022年9月に新たな報告書を発表。国際社会が、ミャンマー国軍を財政的に孤立させるために十分な行動を取っていないと指摘した上で、「ミャンマーの人々の支援を強化しつつ、国軍の財政的孤立を一丸となり実現すべき」とした。

また、国連の人権高等弁務官事務所はバゴー橋建設事業を引用する形で、各国政府は「人道支援や開発援助が国家行政評議会や軍系企業の利益にならないよう対処すべきだ」とした。その上、「ミャンマーで事業や取引、投資など行っている企業らは、サプライチェーン事業も含み、ミャンマー国軍及び国軍が所有・指揮する企業(子会社を含む)や国軍個人と事業関係を新たに持たない上継続しないようデ ューデリジェンスを実施すべきだ」と指摘している。

2021 年 5 月 21 日に国連ビジネスと人権に関するワーキンググループは、「企業 は人権に対する責任を全うし、ミャンマー国軍が深刻な人権侵害を止めるよう働きかけるべきだ」と声明を発表した。具体的には、企業は「国連のビジネスと人 権の指導原則に沿い、人権侵害の助長」を避けるべきであり、行動を取らない場合は国軍の人権侵害に「加担」してしまうと指摘した。

国連ビジネスと人権に関する指導原則」には、企業は「自らの活動を通じて人権に負の影響を引き起こしたり助長することを回避し、そのような影響が生じた場合にはこれに対処」すべきであり、「たとえその影響を助長していない場合であっても、取引関係によって企業の事業、製品またはサービスと直接的につながっている人権への負の影響を防止または軽減するように努める」と定められている。

日本政府は未だに、各国政府と連携しておらず、ミャンマー国軍に対して具体的な措置を取っていない。日本政府は速やかにミャンマー国軍幹部及び軍系企業らに標的制裁を科した上で、横河ブリッジを含む日本企業に制裁の規定に従うよう促すべきだ。

「日本政府はミャンマー国軍に資金を提供するのではなく、ミャンマーの人々のために行動すべきだ」と笠井は述べた。「日本政府はミャンマー国軍による人権侵害の加担者であるべきではない。」

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