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カンボジア:「Stop Covid-19」システムがプライバシーの懸念をうむ

権利に踏み入らない措置を講じ、情報保護法を採択せよ

Cambodian school girls walk home at the end of their school day outside Phnom Penh, Cambodia. © 2021 AP Photo/Heng Sinith

(バンコク)–カンボジア政府の「Stop Covid-19」QRコード追跡システムが、プライバシー権をはじめとする人権の重大な懸念となっている、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。当局は、新型コロナウィルス感染症の拡大防止のためでも、権利を大きく侵害しない手段を選ぶべきだ。

2021年2月20日、カンボジアの郵便・電気通信省および保健省は、近ごろ増加しつつあるコロナ感染ケースの接触者追跡を目的としたQRコード追跡システムを開始した。両省は当該システムを通じて収集した情報をどのように使用するのか、誰がどのような目的でアクセスするのか、情報を保護するために講じられた措置はあるのか、どのくらいの期間、情報が保存されるのかについて公に説明すべきだ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局局長代理フィル・ロバートソンは、「カンボジアのQRコード追跡システムには個人情報の保護策が組み込まれておらず、権利侵害の温床となっている」と指摘する。「パンデミックの発生以来、政府がカンボジア市民のオンライン監視を強めており、批評家や活動家のリスクが拡大していることから、当該システムへの懸念はなおさらだ。」

「Stop Covid-19」QRコード追跡システムにおける個人情報へのアクセスおよびその保管・保護について、郵便・電気通信省に3月19日付書簡で照会したが、まだ回答を得ていない。書簡の宛先に含まれていたその他の省庁も同様だ。

郵便・電気通信省のFacebookページには、QRコード追跡システムの使用は「任意」だが「参加を強く勧める」旨の投稿がある。当該システムへ登録し、政府のウェブサイトからQRコードをダウンロードして印刷・表示してある施設や機関内に入るときは、QRコードをスキャンするようユーザーに求めている。

ユーザーが特定の施設に入ると、携帯電話にテキストメッセージで6桁のコードが送られてくるので、それを電話に入力する仕組みだ。3月25日付の同省Facebookページの投稿によると、全国で15万4,869の公的・私的機関が当該システムに登録、1,100万超のスポットでスキャンされたという。州当局の一部は、コロナ感染の強制検査の一環として、州境検問所で当該システムを使用している。

モーム・ブンヘーン保健相は、システムの目的はユーザーのプライバシーを侵害することなく、登録施設や店の顧客、訪問者、スタッフの移動を記録することにあると述べている。しかし、3月8日に郵便・電気通信省は、QRコードスキャンによりユーザーの位置情報を取得することで、当局がユーザーを迅速に特定するだけでなく、2週間の自主隔離義務を守っているかどうかを確認できると発表した。

人びとがいる場所を記録することで、個人の身元や居場所、行動、所属団体、活動といったプライバシー権を侵害する繊細な実情が浮き彫りになるため、すでに存在する政府の踏み込んだ監視慣行がさらに強化されてしまう。

一部の事業主は、政府が課した措置に従っていないとみなされることを恐れて、QRコード追跡システムを厳密に実行しているとヒューマン・ライツ・ウォッチに語った。近ごろ可決された「新型コロナ感染症ほか重大かつ危険な伝染病の拡大防止措置に関する法律」が適用され、最高20年の刑および罰金という、不釣り合いに厳しい刑事罰などを科される可能性もある。当該システムには法上の根拠がなく、このような表向きは自発的な性質の措置に制裁を盛り込むべきではない。

カンボジアは、プライバシー権をはじめとする諸権利の国際基準に従って、個人情報の使用・収集・保持を規制し、かつ保護する情報保護法を制定すべきだ。

国際法は、新型コロナウィルス感染症拡大防止の対策をしている各国政府に対し、措置が法律に基づき、必要かつ釣り合いが取れていること、意図された目的のために最低限しか(プライバシーに)踏み込んでないことを義務づけている。カンボジアのQRコード追跡システムをはじめとする接触者追跡措置は、範囲と目的を制限し、プライバシー権を保護し、かつパンデミック対策にのみ使用が限られるべきだ。

措置では、収集された個人情報の十分なセキュリティを確保する必要がある。そして、他の公的・民間部門の事業体とのデータ共有合意について透明性を保ち、人権侵害的な監視に対する保護策を組み込み、実質的な救済策へのアクセスを人びとに提供しなければならない。そして、パンデミック対策で必要な限りに期間を限定し、社会から取り残された人びとに対する差別やその他の権利侵害のリスクを軽減し、情報収集の取り組みに関係する利害関係者に自由かつ積極的かつ有意義な参加機会を提供すべきだ。

ロバートソン局長代理は、「カンボジア政府は情報保護に関する法律と、QRコード追跡システムのために個人情報をめぐるプライバシー権の保障およびセキュリティに特化したガイドラインを早急に策定すべきだ」と述べる。「在カンボジア国連機関は、新型コロナウィルス感染症対策において、政府が国際人権法を遵守しないでいることを、共同で非難しなければならない。」

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