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中国:新型コロナウイルス感染症以外の病気の治療が受けられず

医療へのアクセスを保障し、親子を引き離すのを止め、言論の自由を認めるべき

People in PPE load groceries off a truck before distributing them to locals under the Covid-19 lockdown in Shanghai, China, April 5, 2022. © 2022 FeatureChina via AP Images

(ニューヨーク)中国政府は国内での新型コロナウイルス感染症拡大への対応にあたって健康権またその他の基本的権利を尊重するべきである、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

上海市当局は2022年3月以降、極めて厳格なロックダウン措置を取っており、医療や食料その他生活に必要なものへのアクセスを大きく妨げている。新型コロナウイルス以外の病気について処置をしてもらえなかったために亡くなった人々は数知れない。当局は、検査で陽性となった人を病院または指定された施設に隔離する「ゼロコロナ」政策の下、検査で陽性となった幼い子どもを親から引き離している。また当局はソーシャルメディアに対する制限をさらに強め、新型コロナウイルス感染症への対応をめぐる社会の懸念についての議論も妨げている。

「都市全域で厳しいロックダウンを行う中国政府の『ゼロコロナ』政策は、新型コロナウイルス感染症ではないが重い病気を持つ人々の医療面のニーズの組織的な否定につながっている」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの中国担当上級調査員ヤチウ・ワンは述べた。「当局は、感染率ゼロではなく市民の健康を最終目標として扱うべきである」

中国政府は4月3日、上海の全住民2,500万人を対象とした新型コロナウイルスの強制検査実施を支援するために数千人の軍職員を派遣すると発表した。4月4日、上海市当局は全住民の検査結果を調べる間、同市のロックダウン、つまり住民が自宅を出ることを禁じる措置を無期限に延長すると述べた。

多くのネットユーザーが、新型コロナウイルス関連の制限によって病院が閉鎖されている、または医療従事者が隔離されたり検査業務に回されたりして不足しているために愛する人たちが新型コロナウイルス感染症以外の病気の治療を受けられなかった話を中国のソーシャルメディアで共有した。上海の看護師だったジョウ・シェンニは、自分の働く病院で治療を断られて喘息で亡くなった。救急処置室が消毒のため閉鎖され、他に使える施設がなかったためだった。ある女性は、住んでいた集合住宅から出ることを禁じられたために血液透析を受けることができず亡くなった。腎臓病を患う77歳の男性は、彼が新型コロナウイルスに感染していることを理由に病院がすぐに透析を行わなかったために病院で亡くなった

ネットユーザーたちは、家族が医療を拒否された場合に自傷や暴力が起きる恐れを報告している。ある病院の警備員は「人が死んでも知らない、とにかく[陰性の]検査結果がないのなら入るな」と、吐血している父親の治療を求めて来た男性に告げたとされる。男性は警備員に「お前を刺し殺してやる、どうなってもいい、それならどうだ?」と言ったとソーシャルメディアに書いた。すると父親は入院を認められた。ある母親は、高熱を出している娘に検査を受けさせ入院させるためなら自宅のあるアパートから飛び降りると脅した

当局は検査で陽性になった子どもの一部を医療施設で隔離するために強制的に親から引き離している。急速に広まったある映像には、上海の施設で数十人の幼児や乳児が金属製の柵のついたベッドに押し込められて泣いている様子が映っている。幼い子どもの母親たち数人は記者に対し、あるいはソーシャルメディア上で、子どもとの面会を禁じられており、病院は子どもの状況を何日間も知らせてこなかったと述べた。「愛する人から引き離されていることが何よりも怖い」と、2歳の息子が隔離のために連れ去られた母親はメディアに対して述べた。別の、2歳の娘を持つ母親はこの状況を「完全に非人道的」だと表現した

一般市民の怒りを受け、上海市当局はゼロコロナ政策の正当性を主張し、陽性になった人は年齢に関わらず陰性者から隔離されなければならず、親子が一緒に隔離されるのは親と子の両方が陽性である場合だけだと述べた。

中国も締約国である子どもの権利条約は、「締約国は、児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する。ただし、権限のある当局が司法の審査に従うことを条件として適用のある法律及び手続に従いその分離が児童の最善の利益のために必要であると決定する場合は、この限りでない」と定める。

中国政府は依然としてパンデミックについての情報の流れを規制し、政府の対応に対する批判を検閲しようとしている。山東省の魯東大学は、4月にキャンパスのロックダウンに反対して単独の抗議行動をした大学院生のスン・ジアンを退学処分にした。ソーシャルメディア・プラットフォームのウェイボーではロックダウンに関連する多くの投稿が検閲された。上海市当局は3月、あるネチズンに対し、自宅のある集合住宅の住民がそこに住む移住労働者たちを退去させたことに触れたウェイボー上の投稿を削除するよう命じた

ウェイボーに出回っている映像には、ジャーナリストらが政府からの支援を受けなかった店主たちにインタビューするのを拒否し、ジャーナリストの一人が「インタビューの対象になるのは支援を受けた人だけ」と言う様子が映っている。遼寧省の国営放送局のアナウンサーだったチュー・シアは、ライブ配信中に、新たに感染が拡大する中で「理由は言えないが」自分の身を守るように視聴者に呼びかけたために解雇された

国際人権法、特に中国が署名したが批准していない市民的及び政治的権利に関する国際規約は、公衆衛生や公共の緊急事態を名目とした人権の制限は合法性、証拠に基づいた必要性、そして比例性の要件を満たす必要があると定める。感染が疑われる、または感染している人の検疫や隔離などの制限は、最低でも、法によって定められ、実行されなければならない。それらの制限は、あくまでも正当な目的を達成するために必要であり、目的を達成するものの中で介入と制限の度合いがもっとも低く、科学的な証拠に基づき、恣意的でも差別的でもない方法で適用され、期限が限定され、人間の尊厳を尊重し、審査の対象となるものでなければならない。

強制隔離が行われる際には、政府は食料、水、医療へのアクセスを確保する義務を負う。また権利を制限する措置は、一般の人々の政府の感染拡大防止対策に従う意欲に配慮した上で取られるべきである。大規模な対応においては特に、自宅隔離や対人距離の確保に自発的に従うほうが、人々が検査や治療を避けることにつながりうる強制措置や厳しい規制よりも人権とも調和しやすい。しかし、一般の人々の支持を得るには、政府は透明性、デュープロセス、そして公平性を持って行動しなければならない。

「新型コロナウイルス感染の新たな拡大への対処の名目で人々の人権を否定するのは非生産的である」とワンは述べた。「当局は人々の願いに耳を傾け、必要としている人全員に適切な医療を提供するべきである」

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