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東京新聞・中日新聞 2020年5月8日

 新型コロナウイルス感染症で中国政府が当初から情報を隠蔽いんぺいし、感染拡大に拍車をかけたとみられている。ほかにアジアには、新型コロナ対策を理由に抑圧を強める権威主義的国家がある。

例えばカンボジア。独裁色を強めていたフン・セン首相が新しい非常事態法を定め、通信の監視やメディアの恣意的しいてきな制限など、人びとの市民的・政治的自由を無制限に制限する権限を掌握。新型コロナのフェイクニュースをシェアした容疑で、野党政治家や評論家が三十人以上逮捕された。

タイ政府は、感染防護具の不足で政府を批判するジャーナリスト等を脅迫するなど、情報を隠蔽した。フィリピンでは、外出禁止令に違反した人びとが、超「三密」というべき悪名高い拘禁施設に収容されている。「麻薬戦争」で五千人以上(国連によれば二万七千人以上)を超法規的に殺害したドゥテルテ大統領は、新型コロナ対応でも「問題があれば、射殺する」と国民に警告した。

公衆衛生の危機にあっても国際法上、政府の緊急措置は合法で必要性に則のっとる必要がある。情報を統制・隠蔽し、批判に対し弾圧で臨む政府は、その国の国民の人権を侵害する上、近隣諸国にとってリスクでもある。弱い立場の人びとを守り、命に関わる情報の検閲や隠蔽を防ぐため、日本政府は透明性と人権の保護を求める外交を展開すべきだ。

(ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表)

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