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ビルマ:国軍の報告書、民族浄化を糊塗

国際調査と法的責任を追及し、ロヒンギャに法による正義の実現を

Mohammed Taher, 50, a Rohingya refugee holds his son Mohammed Shoaib, 7, outside a medical center at Kutupalong refugee camp near Cox’s Bazar, Bangladesh, on November 5, 2017. His son was shot in the chest before crossing the border from Burma in August. © 2017 Reuters/Adnan Abidi

(ニューヨーク)― ビルマ国軍は、最近のラカイン州での対ロヒンギャ軍事作戦で、軍は人権侵害を起こさなかったと改めて主張した。しかし増え続ける多数の証拠と矛盾すると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。2017年11月13日、ビルマ国軍「調査チーム」は、「無実の人びとの死亡例はなかった」とする一方、戦闘では少なくとも376人の「テロリスト」が殺害されたとする報告書を発表した。

人道に対する罪に該当する重大な人権侵害について、ビルマ当局が信頼に足る公平な調査を行わなかったことは、国連が任命した事実調査団に対し、同国が独立調査の実施を認める必要性を示していると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。

「大規模な残虐行為には関係ないと言い張ろうとする、ビルマ国軍の馬鹿げた努力は、事実確定と責任者特定のための独立した国際調査の必要性を際立たせるものだ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムズは述べた。「ビルマ当局は、信頼に足る調査を行う能力も意志もないことを改めて露呈した。」

広範な目撃証言や衛星写真などから、ビルマ治安部隊はロヒンギャ・ムスリムを対象とする民族浄化作戦で、広範な人権侵害を行ったことが明らかになっている。軍事作戦は2017年8月25日、アラカン・ロヒンギャ救世軍(ARSA)による一連の政府拠点襲撃を受けて始まったもので、以来政府軍は、大量殺害レイプ、恣意的拘禁、放火などを行ってきた。ヒューマン・ライツ・ウォッチの衛星写真解析結果によれば、ロヒンギャが住民の主体である288の村が8月下旬以降に大部分、または村全体が破壊されている。

防衛監察官のエイウィン中将を代表とするビルマ国軍の調査チームは、10月13日から11月7日まで住民3,217人に聞き取りを行い、804件の証言を集めたと主張する。聞き取り対象には、ビルマ政府がバングラデシュ出身の外国人と見なす「ベンガル人」(ロヒンギャの侮蔑的呼称)も含まれたと見られる。バングラデシュには、治安部隊による軍事作戦の開始以来、60万人以上のロヒンギャが逃れたが、調査チームが同国で聞き取りを行った形跡はない。

報告書は、国軍が「自衛権との関わりで、また武力紛争と反テロ軍事作戦下での公務執行にあたり、上級機関の命令と指示、とくに交戦規則に従った」と主張。治安部隊が自宅から逃れるロヒンギャ住民への無差別発砲のほか、レイプなどの性とジェンダーに基づく暴力、略奪、家屋やモスクの破壊や、自宅放棄を求める脅迫行為などを行ったとする訴えを退けた。また作戦行動にあたり、治安部隊には手榴弾やランチャーなどの「重火器」は配備されていないとも主張している。

国軍による人権侵害の否定と自らによる調査の結論は、国連、ヒューマン・ライツ・ウォッチほか人権団体、国際メディアの調査結果と真っ向から対立する。国連人権高等弁務官ゼイド・ラアド・アル・フセイン氏は9月、ロヒンギャの現状を「民族浄化の典型例」と表現した。その後の調査からも、放火、超法規的処刑、レイプ、拷問、礼拝所への攻撃の証拠が明らかになっている。

2016年末、ビルマ治安部隊は2016年10月9日の国境警察隊詰所3カ所に対するARSAの襲撃後、ロヒンギャへの広範な人権侵害を行った。国連人権高等弁務官事務所による2017年2月3日付報告書は、対ロヒンギャ攻撃が人道に対する罪の犯行に匹敵する「可能性はかなり高い」との結論を示した。これを受けて3月には国連人権理事会が決議を採択し、ラカイン州を中心としたビルマ国内での人権侵害の訴えに関する調査をマンデートとする、独立した国際事実調査団の設置を決めた。しかしその後、ビルマ政府は委員の入国を認めていない。

ビルマ政府は、2016年10月9日以降にラカイン州で発生した暴力事件を調査する委員会をいくつも立ち上げた。しかし信頼に足るか公平なものは一つもない。国軍によるものとされる昨年末の人権侵害について、前回国軍が行った調査はやはりエイウィン中将が指揮したものだが、治安作戦中に生じた人権侵害について、軽微な事象2件を認定しただけだった

国連安全保障理事会はビルマの現状を国際刑事裁判所(ICC)に付託すべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。安保理と関係国は、暴力事件に関与した軍幹部への対象限定型制裁とビザ発給制限の措置を個別にとるべきだ。また国連加盟国は、人権理事会と国連総会での手続きを進め、ICCなどの司法機関での訴追提案に向けた犯罪行為の証拠集めを行うべきだ。

「国軍が責任を問われず重大な犯罪を行っている事実は、国際刑事裁判所の創設目的に完全に合致する」と、前出のアダムズ局長は述べた。「国連安保理はビルマをICCに付託すべきだが、それに先だち国連加盟国は、調査が実施され、今後の刑事訴追に用いる証拠保全がなされるようにすべきである。もしビルマ国軍が責任を問われずに軍事行動を展開し続けるなら、ロヒンギャに対する新たな暴力が繰り返される可能性が高いのである。」

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