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(ジャカルタ)— インドネシア政府は、国家警察官を志望する女性に対し「処女検査」を実施しているが、これは差別的で尊厳をそこなうものであると、本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べ、併せて問題を調査・検証したビデオも発表した。

 ヒューマン・ライツ・ウォッチは、6都市でこの検査を受けた女性警察官および候補生に聞き取り調査を行った。うち2人は今年に入ってから検査を受けている。検査に「引っかかった」候補生たちは、必ずしも警察学校を退学処分になるわけではなかったものの、検査は苦痛でトラウマになったなどと経験を詳述した。女性警察官たちはこの問題について、警察上層部に異議を申し立てている。これに対し幹部は、検査はもう実施されていないと主張することもある。しかし、公式の警察官募集サイトには、女性志望者に処女検査は必須とあり、ヒューマン・ライツ・ウォッチの聞き取り調査も、検査がいまだ広く行われていることを裏づけている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ女性の権利局の局長代理ニーシャ・バリアは、「インドネシア国家警察による『処女検査』は女性を傷つけ、侮辱する差別的な慣行だ」と指摘する。「ジャカルタの警察関係者は、即時かつ確実に検査を廃止し、全国の警察募集所でもこの検査を取りやめる必要がある。」

 

検査は、採用が「無差別的」かつ「人道的」でなければならないとする国家警察の原則に矛盾するもので、平等、無差別、プライバシーへの国際的人権にも抵触する。強制的な「処女検査」はまた、国際法が禁ずる残虐で非人道的、若しくは品位を傷つける取り扱いに該当する可能性もある。

今年5月〜10月にかけて、ヒューマン・ライツ・ウォッチは現・元女性警察官および候補生8人、ならびに複数の警察医、人員募集の評価担当官1人、国家警察委員会委員1人、そして複数の女性の権利活動家に聞き取り調査を行った。調査を実施したのは、バンドン、ジャカルタ、パダン、プカンバルー、マカッサル、メダンの各都市。検査を受けた女性の全員が、警察学校で一緒だったほかの女性候補生たちもすべて検査を受けさせられたと話している。

「処女検査」は、候補生のための健康診断ガイドライン中の警察署長規定第5号/2009に従って行われる。同規定の第36条は警察学校の女性候補生に「産婦人科」検査を義務づけている。同規定は、「処女検査」がこの婦人科検査の一部として実施されるべきであるとは特に定めていないが、女性警察幹部2人が検査は長きにわたって慣例となっていると証言した。検査は採用過程の初期段階で、健康診断の一環として行われる。警察の医療保険センター職員が、警察病院で主に担当する。女性候補生の処女膜が無傷かを確認するため、信頼できないと言われかつ女性の尊厳を無視している「二本指検査」が検査に含まれることが、今回の調査で明らかになった。

 「国家警察改革トレーニング(National Police Reform Training)」を支援してきたある国際組織が2012年に作成した覚書は、国家警察幹部からスマランの精鋭警察学校に宛てた2008年の書簡を引用しており、その書簡内で女性候補生が処女であることを確認するための検査の必要性がとかれている。国家警察のスリ・ルミアティ高等弁務官は10月、ヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、2010年に当時の国家警察長官Sigit Sudarmanto准将が、処女検査の廃止に同意したと話した。医療センターのある警察将官も検査はもう実施されていないと主張している。

しかしながら、国家警察が検査停止に向けて措置を取ったことを示す証拠はほとんどない。2014年11月5日の時点でもインドネシア国家警察の募集サイトには、「健康診断に加えて、警察官を志望する女性は処女検査を受けなければならない。ゆえに志望する女性は処女のままいるべきである」とある。既婚女性は警察官への応募資格がない

この検査は長く続く慣行であり、今現在も実施されている。1965年に採用され、今は引退した元女性警察官も検査を受けなければならなかったと話す。2008年に検査を受けた女性はその時の様子を思い出しながら、次のように語った。「処女検査の行われる部屋に入る時は本当に動揺しました。検査をされたら、もう処女ではなくなってしまうのではないかと恐ろしくて。とても痛かった。私の友達などは気絶してしまいました…。だって本当に痛いんです。」

国家警察は12月までに女性警察官の数を50%増の2万1,000人にする計画だ。現在の警察官数は約40万人であることから、この計画で女性警察官の割合は3%から5%になる。

4月に国家警察は今までにない規模で人員募集を開始。結果7,000人の女性候補生が、ジャワ島とバリ島にある警察訓練施設8カ所で、7カ月の特別訓練プログラムを受講した。

西スマトラ島のパダンにある女性権利団体Nurani Perempuan のYefri Heriyaniディレクターは、12年以上にわたり数多くの女性警察官志望者に接してきた。こうした女性たちの大半が処女検査のトラウマを抱えているという。「これら女性警察官たちは、検査でトラウマとストレスを経験しています。それなのに[国家警察は]回復をしっかりサポートしようともしません。こうしたトラウマとストレスに対する無作為は、彼女たちの今後の人生にも長く悪影響を残すことでしょう。多くが検査を受けたことについて、自分自身を責めてしまっているからです。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチはこれまで、エジプトやインド、アフガニスタンなどの国々でも、警察による人権侵害的な「処女検査」を調査・検証してきた。インドネシアでも、女生徒に対する「処女検査」を要求する声に対し、これは人権侵害であり、また主観的かつ非科学的であると非難してきた。

前出のバリア局長代理は、「いわゆる処女検査は差別的であり、性別に起因する暴力の一形態だ。決して女性の警察におけるキャリア資格をはかる物差しにはならない」と述べる。「しかも、この悪質な慣行は能力ある女性を警察から遠ざけるだけにとどまらない。最適な才能を有する人たちからなる警察を、インドネシア国民から奪っているといえる。」

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