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スリランカ:強制収容所の環境悪化で緊張が高まる

政府は避難民の違法拘束を直ちにやめ、25万の国内難民の解放を

(ニューヨーク)-スリランカ政府は、強制収容所に今も拘束中の25万人のタミル人を直ちに解放するべきである、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。2009年10月5日以来の水不足や迫りくる雨季の洪水の恐れともあいまって強制収容所の状況は悪化しており、収容所で生活する人々の間の緊張を高め、スリランカ軍との衝突をもたらしている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、日本・米国・EU加盟国などの国際的ドナー(資金提供)国に、国内避難民を拘束し続ければ、国際社会とスリランカの関係に重大な結果を及ぼす、という明確なメッセージをスリランカ政府に伝えるよう求めた。

「必要性もないのに、これだけ多くの人々が悲惨な環境に閉じ込められている。収容所では緊張が高まり、険悪な状況になっている。」とヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムズは語った。「モンスーンが襲来する季節になる前に収容所から解放されない場合、国内避難民たちの生命と健康は重大な危険にさらされてしまう。」

スリランカ政府は、先の内戦により避難民となった人たちを事実上全員強制収容所に閉じ込め、権利と移動の自由を違法に奪っている。国連によれば、内戦終結後4ヶ月以上経過した9月末の時点でも、政府は255,551名の避難民を収容所と病院に拘禁し続けている。うち大多数が収容されているのは、バブニヤ(Vavuniya)にある「マニック・ファーム(Manik Farm)」と呼ばれる巨大な収容キャンプである。

スリランカ政府はタミル人避難民を解放することを拒否。これに対する批判が高まっている。9月29日、国内避難民の人権に関する国連事務総長代理ウォルター・カリン(Walter Kälin)氏は、タミル人の解放のペースが遅れているのを批判し、「スリランカが自国民の権利を尊重し、国際法への誓約と義務に従っているというのであれば、避難民の移動の自由を迅速かつ実質的に復活させることが、緊急に必要だ」と述べた。

スリランカはタミル人難民を速やかに再定住させないと、「敵意」を生み出す危険がある、と国連事務総長・潘基文は警告し、英国開発大臣は10月6日、収容所を訪問した後、「人道上の危機を回避しようとするなら、移動の自由は非常に重要である。」と述べた。

スリランカ政府は、強制収容所に拘束中の人々に対し、タミルの虎(LTTE)支援者か否かのスクリーニングを行なっているが、その手続きは、透明性に欠けるうえに遅々として進んでいない。しかも、明らかにスクリーニングが済み、疑いが晴れた人びとさえも解放されていない。スリランカ外務大臣は9月に、16万2千名の被収容者がスクリーニングを終えたと語った。しかし国連によれば、スリランカ政府がこれまでに解放した人は、9月28日現在1万5千名に満たない。

スリランカ政府は、マニック・ファームで拘束されている数千名の避難民が帰郷を許された事実と異なる発表もたびたび行なってきている。例えば9月24日、政府は4万人の人々が帰郷したと発表。しかし政府が解放したと主張した人々の多くは、実際はマニック・ファームから他の強制収容所に移されただけであり、残りの人びとは、バブニヤにある一時拘禁施設「中間ステーション」に今尚拘束されたままである。国連によれば、9月13日にマニック・ファームから中間ステーションに移され解放されるはずだった1,500名以上の人々が、今もそこに拘束されていて、急速に悪化する環境に耐えているそうである。

「確かに、政府には、治安上の理由から避難民をスクリーニングする権利がある。しかし、このスクリーニングプロセスは、できるだけ多くのタミル人をできるだけ長く強制収容所に拘束するたくらみに変化してしまった」とアダムズは述べた。「スリランカ政府の不誠実な声明と約束により、欺かれるべきではない。」

スリランカ政府は、強制収容所に拘束されている人々を解放するとともに、人びとの福祉を保障すべきである。国際社会は、これをスリランカ政府に要求すべきである、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

強制収容所の環境の悪化

複数の避難民たちが、ヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、強制収容所の状況が最近悪化し、緊張が高まり混乱が起きていると語った。

マニック・ファームの「ゾーン」と呼ばれるセクションに住む住民たちは、近くの川から水を汲み上げている主要なパイプラインが川の水位が下がったために10月5日に止まってしまって以来、少ししか水を入手できない。UNHCRは、少なくとも1日あたり1人15リットルの水が必要であると勧告している。

強制収容所のゾーン2の住人「ジービタ」(38歳)はヒューマン・ライツ・ウォッチに以下のように話してくれた。

「今朝、私は5人の家族のために20リットルの水を手に入れるのがやっとだった。明日まではもうだめだろうね。飲んだり、料理したり、洗濯したり、風呂に入ったりするけど、これしかない。この3日間風呂に入れなかったし、体をキレイにも出来なかった。ほんとに怒りでいっぱいだ。この収容所の管理当局は、私たちの面倒を見る気がないらしいね。」

ゾーン2で1歳の息子と生活する「アーナチ」(30歳、女性)は、ヒューマン・ライツ・ウォッチに以下のように話してくれた。

「私は今日4時間半並んでたのよ、でも結局あきらめた。とっても疲れたわ。昨日は夜中ごろまで並んで、やっと朝の9時になって水を手に入れたのよ。私と1歳の息子のために30リットルの水を手に入れた。私たちはそれで何とかやってけるけど、10人とかもっと沢山の家族が同じ量でしのがなきゃならないのよ。」

ゾーン1の住民の「マーダビ」(32歳)は、水不足で人々が自暴自棄になってきていると語った。10月7日の朝、突然、30分だけパイプラインから水が出るようになった時、住民たちは自分のバケツを一杯にするために殺到し、乱闘が始まったのだそうだ。

「みんなが怒鳴りあって、石をぶつけあった。収容所の管理人のところに行ったんだけど、あいつらは我慢するしかないって言うんだ。もしあいつらが明日までに水をくれないなら、俺たちはフェンスを破って、自分たちで水を探し行く!」

この2週間、マニック・ファーム収容所では強風で避難所に被害がでており、既に悲惨だった生活環境はさらに深刻化した。収容所で5人の家族と暮らしている20歳の「クマラベル」はヒューマン・ライツ・ウォッチに以下のように語った。

「風で木の枝が折れて、小屋のトタン屋根も飛ばされて、それがテントに落ちてきたんだ。俺たちは外で料理をしなきゃならなくなったんだけど、風でホコリや土が食べ物に入っちゃって、実際には食べられる状態じゃなかった。ここで生活するのは本当に大変だよ。」

マニック・ファームは過密状態で、クマラベルの家族は5人用テントをもう一つの4人家族と一緒に使っている。彼らが生活しているマニック・ファームのゾーン2セクションには、5万2千名以上が収容されている。国連基準では2万9千名以下の定員であるにも拘らずである。夜間、女性たちはテントの中で眠り、男性たちは外や収容所内にある仮設教室で眠る。クマラベルは、雨季になったらどうすればいいのかと心配している。通常雨季は10月からはじまる。

「一ヶ月前に豪雨が降った。地獄だったよ。ここの地面は水を吸い込まない、だから、水が集まる。歩くこともできなくなった。当局がドブ改良の工事をしていたけれど、それが効くとは思えないな。」

8月中旬の豪雨はひどい洪水を引き起こした。水がテント他の避難所を壊し、多くの住民たちは調理することも出来なくなり、加えて道路が崩壊したために、飲料水のような極めて重要な援助物資の配布も妨げられた。水は便所にも流れ込み、下水がテントに溢れかえった。それ以来、マニック・ファーム収容所(大部分は、この4月と5月に大量の避難民が流れ込んだ時期に設置された)の状況は一層悪化した。ほとんどの人々が生活している緊急用のテントや避難所キットは、3ヶ月から6ヶ月の使用に耐えるようにしか設計されていない。

住民とスリランカ軍の衝突

悪化する環境と移動する自由がないために避難民の中に募った不満が、収容所を警備する軍との衝突をもたらした。9月26日、兵士は収容所住民の一団に発砲、少なくとも2名を負傷させた。スリランカ軍の広報官はそのグループが逃亡を図り石と手製手榴弾を投げたので、兵士は発砲せざるを得なかった、と主張した。当局は、「負傷した容疑者及び群集はテロリストと関係を持っていた」 とも断定した。

しかし、目撃者たちはヒューマン・ライツ・ウォッチに、異なる事実を伝えている。マニック・ファーム収容所の住民たちによると、親類訪問又は薪集めのためならば、時折ゾーン1とゾーン2の境を越えることは許されていたということである(ゾーン1では薪集め不可能)。その日午後5時30分頃、収容所を分断する道路を渡る許可を待って住民が長い列を作っていた。その時ある兵士が薪を運んでいるある男に前に出るよう求めた。兵士たちが突然その男に襲いかかった、と4名の目撃者がそれぞれ別にヒューマン・ライツ・ウォッチに話した。クマラベルもその目撃者の1人で以下のように語った。

「1人の兵隊がその男を殴りはじめたんだ。そしたらもう1人の兵隊も一緒に殴り始めた。列で待ってたみんなが止めようとしたんだけど、兵隊の1人が銃を撃ち、他の兵隊は手榴弾を持ち出して、投げるぞって脅しやがったのさ。すぐ後にその他の兵隊も来て、みんなを殴り始めたんだ。」

兵士たちが群集を解散させた後、最初の兵士が男の運んできた薪の中に手榴弾を置き、兵士の携帯電話で写真を撮っていた、と2名の目撃者がヒューマン・ライツ・ウォッチに語った。その男は連行され、負傷者たちは病院に連れて行かれたと目撃者は述べた。政府はその事件の後、避難民男性19名を逮捕したと発表。逮捕された者の内少なくとも幾人かが拘禁中に暴行を受けた、という信頼性の高い情報をヒューマン・ライツ・ウォッチは入手した。少なくともその後数人は釈放されている。

この事件の数日前には、バブニヤの別の収容所でも兵士たちが収容所住民たちと衝突。9月23日、プーントタム収容所の住民たちが、兵士と警官及び彼らの車両を襲った。警官が収容所住民の1人を連行したためである。暴動は3時間続き、警察がその連行された男性を連れ戻したために終結した。

「スリランカ政府及び援助国政府は、こうした事件を警告(wake-up call)として役立たせるべきである」とアダムズは述べた。「そして、援助をしている諸外国政府は、国際基準をいつまでもあからさまに無視する行動を続ければ、深刻な結果をもたらすという明確なメッセージを、今こそスリランカ政府に伝えるべきである。」

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