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スリランカ: 民間人の犠牲を避けるため緊急の行動を

タミル解放の虎は人びとの移動を禁止、政府は援助を制限

(ニューヨーク)-スリランカ政府とタミル・イーラム・解放のトラ(LTTE)は、ますます狭まくなる戦闘地域に閉じ込められた多数の民間人が避難できるよう安全な回廊を設けるとともに、絶対的に不足している人道援助が届けられるよう直ちに措置をとるべきである、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。およそ25万人とみられる民間人が、スリランカ軍と分離独立派武装組織LTTEの間の戦闘地域に囚われており、民間人犠牲者はこの一週間で激増した。

「ワンニの戦闘地域に閉じ込められている数十万人もの民間人は、危険が高まる中、逃れるすべもない」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長、ブラッド・アダムスは述べた。「政府軍とLTTEは、双方とも、民間人の大量殺害を防ぐため、緊急に行動を取らねばならない。」

LTTEは、一般市民がLTTEの支配地域から政府の支配地域へ避難することを、長らく阻止してきた。2008年10月にスリランカ軍の攻勢が始まって以降、北部ワンニの拠点にLTTEは退却、民間人たちをLTTEの支配地域奥深くに強制移住させた。国連と国際人道援助団体の現地職員およそ300名も、ワンニに残されたまま。こうした職員たちが安全な地域へ避難するのをLTTEが許可しないためである。現在、合計で約25万人の民間人が、LTTE支配下のムライティブの狭いエリアに閉じ込められている。

一方のスリランカ政府も、LTTEの支配地域からなんとか逃げられた人びとを、家族全員まとめて逮捕して軍収容施設に拘留するなど、移動の自由を奪って危険にさらしている。

「民間人たちは、激しい戦闘にさらされながら、避難先を求めてひしめきあっている。その中には、子どもや負傷者、高齢者など、緊急に援助が必要な人びとも多数いる」と、アダムスは語った。「国連と関係諸政府は、民間人の犠牲を避けるため全ての必要な措置を取るよう、スリランカ政府に圧力をかけるべきだ。」

ムライティブには数人の医師がいるが、その医師たちから、この一週間の戦闘で多数の民間人被害が出ているとの報告がなされた。スリランカ軍は、戦闘地域内に民間人のための「安全地帯」を設立したとするが、その安全地帯の中で砲撃が起きているという複数の信頼に足る報告されている。

国連によれば、1月24日と25日、安全地帯内の国連現地スタッフの避難先施設が砲撃を受け、民間人が少なくとも9名死亡、20名以上が負傷したとのことである。1月26日には、安全地帯で働いていた国連現地職員のすぐ近くに砲撃が着弾、伝えられるところよると民間人数十名が死亡したとのことである。1月27日の声明で、赤十字国際委員会(ICRC)は、「緊急治療と政府支配地域にあるバブニヤ病院への搬送・避難を必要としている患者が数百名いる」との懸念を表明した。ジャーナリストや人権監視員の活動を政府が規制しているため、ヒューマン・ライツ・ウォッチはこの情報を独自に確認することが出来なかった。

軍報道官のウダヤ・ナナヤッカラ准将はメディアに対して、「民間人に死者は出ていない」と述べ、さらに「我々が標的にしているのはLTTEである。民間人を標的にはしていない。したがって民間人が殺されるはずがない」と付け加えた。ヒューマン・ライツ・ウォッチは「スリランカ軍は、直近の戦闘で民間人に死者が出たことを全否定している。こんな態度でいるスリランカ政府が、本当に民間人犠牲者を極力減らすために真摯な検討をしているのか、重大な懸念がある」と述べた。

2008年9月、スリランカ政府は、すべての国連組織及び非政府系人道援助団体に、ワンニからの撤退命令を出した(但し、ICRCとカリタス(カトリック系人道援助団体)を除く)。その結果、避難場所や、食糧、医薬品、その他人道支援物資の不足が深刻化し、重大な人道危機がおきた。この人道的危機の実態は、ヒューマン・ライツ・ウォッチが発表した2008年12月の報告書「包囲され、追放され、拘束される民間人たち:スリランカのワンニ地域の住民の窮状」(https://www.hrw.org/en/news/2008/12/23-1 )に、取りまとめられている。関連報告書である「閉じ込められ、虐待される民間人たち:ワンニでのLTTEによる虐待」(https://www.hrw.org/en/news/2008/12/15-4 )には、LTTEによるワンニの民間人住民に対する人権侵害の実態に焦点をあてている。

「スリランカ政府が、戦闘地域からの情報をほぼ完全にブロックしているため、スリランカ国民にも世界の人々にも、ワンニで起きている人道危機の正確な規模はわからない」と、アダムスは述べた。「スリランカ政府は、あたかも自分は関係ないかのように、全ての責任をLTTEに被せる態度を取ることはできない。」

スリランカでの紛争には、国際人道法が適用される。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、スリランカ政府及びLTTEの両方に、軍事作戦による民間人への危害を最小限にするため、可能な限りすべての予防措置を講じるとともに、民間人に対する人道支援へのアクセスを確保するなど、戦争法規を順守するよう長い間強く求めてきている。

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