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イラン:アフガニスタン人の難民申請を認めるべき

滞在許可延長は評価できるが、難民申請不可では不十分

(ベイルート)イラン政府は2014年12月13日、国内のアフガニスタン人45万人に対し、6ヶ月の滞在許可延長を認めると発表した。これは差し迫った送還を回避する点で有益な決定だと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。しかし滞在許可延長では、イランに新たにやってきたアフガニスタン人の申請を受け付ける難民認定制度の代わりにはならない。

あるイラン外務省当局者は、今回の決定をイランとアフガニスタンとの「兄弟的な関係」の表れだと述べた。またアフガニスタン政府とは、この45万人が帰国した際の再統合支援策を策定することですでに合意しているとも述べた。今回の計画により、これまで非正規状態だったアフガニスタン人が一時滞在許可と労働許可を申請できる。

「イラン政府の決定により、直ちに送還されかねないアフガニスタン人50万人ちかくが救われた。この点は評価に値する」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアフガニスタン上級調査員パトリシア・ゴスマンは述べた。「しかし滞在許可延長は、イランの難民申請制度の欠陥を補うものではない。同国では難民登録や適正手続き、強制送還に対する法的な異議申立ての機会がなく、非正規のアフガニスタン人の拘束と送還が日常化している。」

アフガニスタンのムハンマド・モハケック第2副大統領は12月14日に記者団に対し、滞在許可延長策の詳しい内容の一部を確認した。またイラン政府が、非正規アフガニスタン人の子どもにイランでの就学を認め、大学生の学費は半額にすることを約束したと述べた。

イラン政府は過去に、イランでの一時滞在資格を持つアフガニスタン人数十万人に滞在許可延長措置を認めてきた。2010年から2012年6月にかけて、イラン政府は包括的正規化計画(CRP)に基づき、非正規アフガニスタン人に対して、正規化のための登録と一時滞在許可および労働許可証の発給申請を認めた。ただし滞在延長は必ず認められるわけではなかった。

このとき男性単身者が滞在許可証を申請する際には、いったん帰国する必要があった。他方で家族がいる場合は、イランを出国せずの申請が可能だった。この手続は困窮した移民には難しく、高額なものだったが、その理由の1つは、申請者全員がアフガニスタンの旅券をあらかじめ取得しておくことが求められたからだ。またイラン当局は、難民としての法的地位を持つアフガニスタン人に対し、難民の地位をイランの滞在許可証に切り替えるよう促した。

国連難民高等弁務官事務所によれば、過去30年にわたりイランは世界最大級の難民受入国だった。しかし現在、イランに住む推定300万のアフガニスタン人のうち、難民としての法的地位を持つのは、わずか84万人だ。イラン政府はそれ以外の人びとを難民申請手続の対象から外した。一時滞在者としての法的地位がイラン政府により今回延長されたアフガニスタン人もいるが、それよりはるかに多いのが一時滞在許可証を現在持っているか、そもそも非正規状態のアフガニスタン人だ。

2013年の報告書でヒューマン・ライツ・ウォッチは、イランには難民認定制度が事実上存在せず、法的な異議申し立ての適正手続や機会がないままに拘束・送還が行われている実態を明らかにした。イラン政府当局は近年、アフガニスタン国内の状況が悪化しているにもかかわらず、アフガニスタン人が難民申請を行う法的手段に制約を加えている。こうした政策は、過去に難民認定を受けており、アフガニスタンでの武力紛争や迫害、治安の悪化から逃れてきた、あるいは今後逃れるだろう少数の人びと以外のアフガニスタン人難民申請者を重大な危険にさらすものだ。イランは1951年の難民条約の締約国であり、迫害の恐れなど本人の生命や自由への深刻な脅威を訴える者について、その主張を検討せずに送還してはならない義務を負う。

アフガニスタンからの外国部隊の撤退完了により、反政府勢力による民間人への致死的攻撃が増加し、政府軍や民兵組織、反政府武装組織間での戦闘が激化することで、アフガニスタンに恣意的に送還されたアフガニスタン人のうち、少なくとも一部が脅威にさらされる深刻な懸念があると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。送還された場合には、紛争により国内避難民となった人の増加もあり、避難民と資源をめぐって争うことにもなるだろう。国連の推計によれば、国連の援助を必要とする国内避難民(IDPs)となっているアフガニスタン人は2015年1月時点で、1年前の63万1千人から増え、75万5千人に上る。

2013年のヒューマン・ライツ・ウォッチの報告書はまた、身体的な虐待、不衛生で劣悪な状況での拘禁、身柄移送費や送還用収容所での滞在経費の強制徴集、強制労働、家族の強制的分離など、イランにいるアフガニスタン人への人権侵害を明らかにした。ヒューマン・ライツ・ウォッチはこのほか、イラン治安部隊が保護者のいない移民の子どもや、相当数存在するアフガニスタン人移住労働者、また送還対象者に行われている人権侵害を明らかにした。

ヒューマン・ライツ・ウォッチはイラン政府に対し、難民申請を行うイランのアフガニスタン人の権利を保護するため、次の措置を取るよう強く求める。

  • 新たに到着したアフガニスタン人や不法滞在で逮捕されたアフガニスタン人について難民申請を認め、その主張を公正かつ効率的に評価するとともに、申請を拒否された者には異議申し立ての機会を与えること。
  • 送還対象となったアフガニスタン人全員について、自らの事案について裁判官の審理と法的支援を受け、異議申し立てを行う権利を保障すること

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