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タイ・バンコクの入国管理局施設、2025年2月26日。 © 2025 Jerry Harmer/AP Photo

(バンコク)―タイ政府は、少なくとも40人のウイグル人男性を強制的に中国に送還し、拷問や恣意的な拘束、長期投獄に直面させる可能性があり、国内法および国際法に違反していると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表した。彼らはタイの入国管理局に10年以上拘束されていた。

2025年2月27日午前2時14分、窓を黒いテープで覆った数台のトラックが、40人以上のウイグル人男性が収容されていたバンコクのスアン・プル移民収容所を出発した。午前4時48分、予定外の中国南方航空便がドンムアン国際空港を出発し、6時間後に中国新疆ウイグル自治区の都市カシュガルに着陸した。その直後、中国国営メディアの中国中央電視台(CCTV)は公安部の記者会見を報じ、「不法出国しタイで拘束された40人の中国人が(中国に)戻された」と認めた。タイのプームタム・ウェーチャヤチャイ副首相兼国防相は後日、メディアのインタビューで、ウイグル族が中国に送還されたことを認めた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長エレイン・ピアソンは、「タイ政府は、ウイグル男性らを強制的に中国に送り、迫害に直面させることで、国内法や国際的な義務をあからさまに無視した。」「タイの入国管理局で11年間も非人道的な拘束を受けたウイグルの人びとは、現在、拷問や強制失踪、中国政府による長期拘束などの重大な危険にさらされている。」と指摘する。

2014年3月、マレーシア国境に近いソンクラー(Songkhla)県のタイ警察は、約220人のウイグル男性、女性、子どもを逮捕し、入国管理法違反で起訴し、バンコクの入国管理収容施設に移送した。同時期に数回にわたり、当局は他のウイグル族数十人を逮捕し、国内各地で入国管理局に収容した。2015年7月、ソンクラーで拘束されていた約170人のウイグル人女性と子どもがトルコに解放された。その1週間後、タイ政府当局は100人以上のウイグル男性を中国当局に強制移送し、中国当局は彼らをバンコクから中国に送還した。

残りのウイグル男性らは、タイ当局が中国政府からの圧力を受け、無期限拘束のまま放置された。近日中に中国に送還されるのではと恐れた彼らは、1月10日にハンガーストライキを開始した。タイ政府当局が中国に送還されることはないと保証したため、彼らは1月29日に食事を再開した。

ウイグル族はトルコ語を話すイスラム教徒で、そのほとんどが中国北西部の新疆ウイグル自治区に住んでいる。中国政府は長い間、ウイグルのアイデンティティの表現を敵視してきた。2016年後半以降、中国政府当局は、人道に対する罪を含む、ウイグル人に対する広範かつ組織的な人権弾圧を強化している。

中国政府当局はウイグルの人びとを恣意的に拘束し、不当に投獄し、自分らの文化を実践していることを理由に迫害し、集団監視や強制労働の対象としてきた。現在も続く弾圧の一環として、推定50万人のウイグルの人びとが今も投獄されたままであり、当局は日常的に、礼拝や海外の親族への連絡といった日常的な平和的行為を、テロや過激主義と捉えている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、不法に中国を出国したとみなされたウイグルの人びとは、帰国した場合、強い疑いの目で見られ、拘禁、尋問、拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱いを受けると述べた。また、当局は海外に住むウイグル族の家族に対しても人権侵害を繰り返してきた。

国連人権高等弁務官事務所は2022年の報告書で、こうした人権侵害の激化を文書化し、中国政府の行為は「国際犯罪、特に人道に対する犯罪を構成する可能性がある」と結論づけた。

タイ政府は1951年難民条約の締約国ではなく、庇護申請を審査する効果的な国内メカニズムも有していない。タイの入国管理当局は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の面会を繰り返し拒否しており、難民認定を求める権利の行使を妨げている。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は2月27日に発表した声明で次のように述べた。「国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、タイ政府当局に対し、彼らとの面会を繰り返し求め、帰還の恐れを表明している彼らが強制送還されないとの確約を求めた。そのような面会は許可されず、タイ王国政府当局に説明を求めたところ、このグループを強制送還する決定はなされていないと述べた。」

タイ政府は、迫害、拷問、その他の深刻な虐待、生命への脅威、その他これに匹敵する深刻な人権侵害の現実に直面する危険のある場所に人を送還することを禁止する国際法上のノンルフールマン原則(不帰還の原則)を尊重する義務がある。タイ政府が加わっている国連の拷問禁止条約や国際慣習法でも、強制送還は禁止されている。

強制送還の禁止は、タイの「拷問及び強制失踪の防止及び制圧に関する法律」(2023年)に盛り込まれている。2月27日、ペートンタール・チナワット首相はメディアのインタビューで、ウイグル族の送還は法律、国際的なプロセス、人権の原則に従う必要があると述べた。

「憂慮する各国政府は、中国政府に対し、送還された人びとが家族と面会できるようにすること、また独立した組織及び関連する国連機関と面会できるようにすることを強く求めるべきだ」と前出のピアソンは述べた。「中国政府によるウイグルの人びとに対する恐ろしい人権侵害の実態と、タイ政府に対する彼らの送還の圧力は、送還された人びとのウェルビーイングへの最大の懸念を引き起こさせる。」と指摘する。

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