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中国:新疆の公式統計から受刑者数の増加が明らかに

取り締まりで50 万人が訴追・投獄される

Guard towers on the perimeter wall of the Urumqi No. 3 Detention Center in Dabancheng in western China's Xinjiang region on April 23, 2021.   © AP Photo/Mark Schiefelbein

(ニューヨーク) - 新疆ウイグル自治区(以下、新疆)での過酷な取り締まり期間中に、中国政府は同国司法制度に基づいて、推定50万人を有罪にして投獄した、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。

有罪判決を受けた受刑者全員が政治的な罪だったわけではないが、入手できた統計から、新疆で不当に投獄された人の総数が、公式統計に基づいてこれまで一般的に報告されていたよりも、はるかに多いことがわかる。こうした正式な訴追では多くの人びとが裁判を経ずに判決を言い渡されたが、これは超法規的な「政治教育」収容所における恣意的な拘禁とは性質が異なる。関係各国は中国政府に対し、新疆などで不当に拘束されているすべてのウイグル系ほかテュルク系マイノリティを釈放するよう圧力をかけるべきだ。

「中国政府は、新疆の人びとを正式に訴追することで、超法規的な政治教育収容所での大量拘禁にスポットライトが当てられることを避けられるのではないかと期待していたのかもしれない」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの中国担当上級調査員の王松蓮(マヤ・ワン)は述べた。「しかし、これら多くの有罪判決により、ウイグル系ほかテュルク系住民の不当な投獄という、人道に対する罪が重くなるばかりだ。」

新疆当局は、2014年に「暴力的テロ猛撃キャンペーン」(严厉打击暴力恐怖活动专项行动)を開始したが、2017 年にはそれを大幅にエスカレートさせた。新疆高級人民法院の以前の統計によると、2017 〜18 年に刑を宣告された人の総数は232,524人で、この数字が2019年に広く一般に報道された。 以来、同裁判所は新たな公式統計を公表していない。

統計の公表を続けている新疆高級人民検察院は、2022年2月、2017 年以降に当該地域で計540,826人が訴追されたと報告。中国の有罪判決率が99.9パーセント超であることを考えれば、ほぼ全員が有罪判決を受けたと推察される。

新疆での訴追の数/年
(出典:新疆高級人民検察院)
2017
215,823
2018
135,546
2019
96,596
2020
48,258
2021
44,603
Total
540,826
猛撃キャンペーン中の合計訴追数

新疆高級人民検察院が公開した逮捕および訴追の年間統計は、猛撃キャンペーンを綿密になぞるものとなっている。2014 年に取り締まりが始まったとき、新疆の年間逮捕率は96パーセント、訴追率は59%パーセント跳ね上がった。そして2017年に新疆当局が取り締まりを強化した際には、いずれも劇的に上昇した。

2020年と2021年にその数は減少したものの高止まりしており、猛撃キャンペーン開始時に匹敵する。つまり、キャンペーンは継続していることがうかがえる。

新疆での逮捕と訴追

また、入手できた証拠から、訴追された540,826人の大多数が未だ刑務所に収監されている可能性が高いことがわかる。猛撃キャンペーン開始時の新疆高級人民法院の公式統計は、長期刑を下された人数の劇的な増加を示していた。2017年以前は、有罪判決を受けた約10.8パーセントが5年超の刑を宣告されていたが、2017年にはそれが87パーセントに上昇。新疆高級人民法院は、判決の内訳についても新たに公表していない。

NGO「新疆被害者データベース」は、家族の証言および公式文書に基づき、被拘禁者8,000人超の事例を広範囲に文書化してきた。そして、リークされた新疆南部カシュガル地区コナシェヘル県の受刑者リストから、2017年に5年か、それ以上の刑期を宣告された人の率は99パーセントにのぼり、平均刑期は9.24年であることを割り出した

このような情報に基づくと、2017年の猛撃キャンペーンの強化以来、新疆では推定50万人が当該地域の刑務所に収監されたままとなっている。

猛撃キャンペーンに関連する判決はほとんどない。NGO新疆被害者データベースは、中国政府がほとんどの判決を公開すると公式に誓約したにも関わらず、被拘禁者の家族や弁護士 (まれに法的アクセスを持つ場合)そして一般に対し、判決を隠ぺいしていることを明らかにしてきた

入手可能だった58の判決について、ヒューマン・ライツ・ウォッチが先に行った分析は、猛撃キャンペーン期間中に有罪判決を受けた人の多くが、法的に認識可能な罪を犯していないにもかかわらず投獄されたことを示唆していた。また、新疆被害者データベースの調査でも、一部の事例では有罪判決が下された際に被告が出廷していなかったことが明らかになっている。これらの事例では、刑事裁判的なものは一切なく、判決が下った時すでに超法規的な政治教育収容所や未決囚収容所に収監されていた。

新疆の猛撃キャンペーンは、テュルク系ムスリムの「イデオロギー・ウイルス」と中国政府が呼ぶものをターゲットにしている。これらには、極端な宗教的教義と当局が呼ぶものや、非漢民族的アイデンティティの感覚、国外の人びととの関係が含まれている。

表面上は安定性を維持し、テロに対抗するためとして、猛撃キャンペーンでは集団監視と全住民の政治的教化が用いられている。アプリのWhatsAppやヴァーチャル・プライベート・ネットワーク(VPN)を使用しているかなど、でたらめで広範な基準に基づき、人びとの思考、行動、関係を評価して、その行為を「修正」する方法を当局が決定しているのである。

100万人もの人びとが、取り締まりの盛りに、政治教育収容所や未決囚収容所、刑務所に不法拘禁されていた。 当局が軽いとみなしている違反を犯した人びとは、超法規的な政治教育収容所に収監されるか、自宅軟禁を含むなんらかの移動制限を課されている。一部収監されていた人びとが国際社会の圧力後に釈放されたが、監視活動や移動の制限、場合によっては強制労働も継続しており、強制失踪させられたままの人びともいる。中国政府の過去の慣行から、より多くの「重大な」事案が、遅かれ早かれ正式な刑事司法制度下でプロセスされると考えられる。

中国共産党は刑事司法制度下の3機関すべてを掌握しており、結果として公正な裁判を受ける権利が広範にわたって否定されている。基本的な手続き上の保護は存在するが、当局は容易にそれを回避できる。中国政府が、政治的な事案の被疑者からあらゆる保護を剥奪するのは日常茶飯事で、とりわけ共産党がトップダウンで行っている猛撃キャンペーンで顕著だ。当該キャンペーンでは、警察、検察、司法が政治上の目的を果たすために協力体制を敷くよう党が指示した。

2021年4月、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、新疆での猛撃キャンペーンにおける人権侵害が、人道に対する罪、つまり住民に対する広範または組織的な攻撃の一環という重大犯罪に該当すると結論づけた。具体的には、大量の恣意的拘禁、拷問、強制失踪、大規模な監視、文化的および宗教的迫害、家族の分離、中国への強制帰還、強制労働、性暴力と生殖権侵害が含まれている。

近時の公式演説および政府報告書は、新疆における「反テロリズムと安定維持」は「合法化かつ常態化」(反恐维稳法治化常态化)されなければならないと強調している。この文言は2020年9月の第3回中央新疆工作座談会によせた習近平国家主席のスピーチの解釈とみられる。正式な刑事司法制度の活用は、新疆の取り締まりを「合法化かつ常態化」するための当局による取り組みの一環である可能性が高い。

当該キャンペーンを「合法化かつ常態化」されたものとして示さんとする政府の取り組みが、最初から計画されたものだったのか、あるいは 2018 年後半以後に政治教育収容所をめぐり前例のない関心が国際社会から寄せられたことへの対応だったのか、あるいはその両方が組み合わさった結果なのかははっきりしていない。2018年初め以降の政策文書は、キャンペーンをエスカレートさせる段階が2017年から5年間というビジョンを共有しており、「1年以内に安定」させ、2 年目に [そのような状態] を固め、3年目に常態化させ、 5年間で全体的な安定」 (一年稳住、两年巩固、三年常态、五年全面稳定)を達成するだろうとしている。

2021年12月、中国の航空宇宙産業のテクノクラートで、深セン市と広東省の富裕沿岸地域を統治した経験を持つ馬興瑞氏が、新疆の人権侵害にもっとも責任のある高官の 1 人陳全国氏に代わって党委書記に就任した。 2022 年 7 月、習近平国家主席は 2014 年以来初めて新疆を訪問し、これが弾圧的なキャンペーンの道を固めるきっかけとなった可能性がある。訪問中、習主席は、当該地域が「安定をしっかりと維持」しつつ、「繁栄に向けて進む」必要を説いた。

8月31日、国連人権高等弁務官事務所は、新疆の複数の人権団体によって文書化された恣意的な大量拘禁、拷問、文化的迫害、強制労働ほか重大な人権侵害を裏づける報告書を発表した。この報告書では、当該地域における中国政府の行為が国際犯罪、「とりわけ人道に対する罪」に該当する可能性を指摘している。

「新疆について中国政府が織りなす物語りは、フィクションを事実に差し替えようとする試みだ。つまり、すべてが計画どおりに進んでおり、中国共産党は不安を鎮めて、今や経済的なチャンスをかの地に提供しているというフィクションだ」と王松蓮は述べる。「各国政府はこのおとぎ話を拒否し、国連報告書が作りだした勢いをとらえて、人道に対する罪の責任を負う中国政府高官を捜査し、その説明責任を問う試みを強化していくべきだ。」

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