Yasami and Ali Habibi from Afghanistan, their 6-year-old twins and 2-year-old son, and Ali's 14-year-old brother, have all lived in this tent at Eiliniko camp in Athens when Human Rights Watch visited them in October 2016. Their 6-year-old son has a learning disability and difficulties walking. Photograph by Emina Cerimovic. © 2016 Human Rights Watch

(ブリュッセル、2017年1月18日)ギリシアの難民受入施設では、障害を持つ難民や難民申請者、その他の移民が適切に識別されておらず、サービスを平等に利用できていないと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。障がい者はその他の移民や難民申請者とともに、いまだ氷点下の環境に無防備で放置されている。

欧州連合は、ギリシア東部の「ホットスポット」と呼ばれるエーゲ海島嶼部のセンターや本土のキャンプの運営に際して、ギリシア政府や国連、NGOにかなりの金銭支援を提供してきた。しかし障がいを持つ難民申請者などの移民は、住居やトイレ、医療などの基本的なサービスを利用することが特に難しい。また他の弱い立場に置かれた移民と同様、精神保健医療を十分に利用できない。例えば車いすユーザーの女性高齢者は1カ月もシャワーを浴びていなかった。

「障がいを持つ人は難民や移民のなかで特にリスクが高いにもかかわらず、基本的なサービスを利用する上で見過ごされている」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの障がい者の権利ディレクター・シャンタ・ラウ・バリガは指摘する。「ギリシア政府とEU、国連、援助組織は、障がい者の事を、後になって付け足しのように検討する姿勢をかえるべきだ。」

ギリシアの難民受入現場で活動する国連高等難民弁務官事務所(UNHCR)、8つの国際援助機関、1つの現地団体からヒューマン・ライツ・ウォッチが話を聞いたところ、障がいを持つ難民申請者や難民、その他の移民について、その権利とニーズに応える特別のプログラムが皆無又はほとんどないと異口同音の回答が返ってきた。

EUがトルコと結んだ大きな問題のある難民申請者送還協定、バルカン・ルート沿いの国境閉鎖、管マネジメントの問題、EU加盟国間の協調の欠如により、難民申請者とその他の移民約62,700人が現在もギリシアで足止められ閉じ込められた状況だ。欧州委員会によると、2017年1月12日時点で、難民問題への対処に関するEU移住メカニズムにより既に移住した、またはこれから移住する人の数はわずか7,448人。2015年の合意にある66,400人の12%程度にすぎない。ギリシアに残された人々は悲惨かつきわめて不安定な状況に置かれ、十分なサービスと宿泊設備が利用できないでいる。難民数千人がギリシア各地で薄いテントに身を寄せ、マイナス14度にもなる厳冬の中を堪え忍んでいる。なかでもリスクを抱えているのが障がいだ。

ギリシア本土と島嶼部で2016年10月と2017年1月に行った調査および、2016年12月と2017年1月のフォローアップのための電話での聞き取り調査に基づき、ヒューマン・ライツ・ウォッチは障害を持つ難民申請者と難民がギリシアで適切に識別されていないことを明らかにした。理由の1つは登録プロセスが性急であり、また職員への十分な指示が行われていないことだ。規模とニーズを十分に理解しなければ、援助組織が効果的に対応することは不可能である。

精神医療は難民申請者およびその他の移民のニーズがきわめて高いにもかかわらず、深刻な不足状態にある。ヒューマン・ライツ・ウォッチが話を聞いた40人の半数が、自分や家族が心的外傷、不安、鬱などを患っていると述べた。母国での暴力、危険な移動、家族との生き別れ、キャンプ内での不安定で安心できない状況が原因だ。

アフガニスタン出身の女性アムラさん(19、仮名)は、レスボス島のカラテペ・キャンプで自らの自殺願望について医師の診察を望んだ。「自分を傷つけたくありません。とにかく苦しいのです」と話す。キャンプで活動する支援団体からカウンセリングを2度受けたが、それ以上の支援はできないと告げられたという。ヒューマン・ライツ・ウォッチの訪問後には心理士から数回のカウンセリングを受けている。

2015年以降、欧州評議会はギリシア政府に1億2,500万ユーロを超える額を、またUNHCRなど難民支援を行う援助機関と国際組織に約3億7,000万ユーロを提供している。ギリシア政府とUNHCRはEUの資金について、冬本番になる前にキャンプの生活状況を十分に改善するために使うべきなのに対応を怠っているとして批判されている。このためいまだ多数が凍えながら寝泊まりしている。

UNHCRとギリシア政府は、拠出された資金が障がい者を含むすべての難民に差別なく役立つようにすべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。EUは事業パートナーに情報提供を求め、資金提供したプログラムが障がい者などリスクを抱える集団に役立つようにすべきだ。EU政府と加盟国は取り組みを強化するとともに、経済問題で苦しむギリシアに追加支援を行い、援助を全土のキャンプに公平に行き渡らせるべきである。

ギリシア当局は、他のEU加盟国やUNHCR、援助団体の支援をあおぎ、障がい者をはじめ、子どもなどリスクを抱える集団が難民と移民を収容するセンターやキャンプに提供される支援を平等に利用できるよう直ちに取り組むべきだ。水やトイレ、食料の配給、住居、精神医療と心理社会的支援を含む医療などが支援の中身である。こうした対策を取らないことは差別であり、国連の障害者権利条約やEU法に違反するものである。

UNHCRとギリシア政府は現場職員に対し、障がい者の識別と登録に関する明確な指示を与えるべきだ。障害には知的障害や精神障害などすぐにはわからない場合もある。ギリシア政府の難民受入識別局と難民手続きを行う担当官は、障がい者のニーズを見分け、適切に対処する方法に関する研修を受け、難民登録プロセスの全体で障がい者がサービスを利用できるようにすべきだ。障がいを持つ難民や難民申請者、移民はこうした取り組みに包摂され、意見を求められるべきである。

今冬の気象条件を踏まえると、ギリシア政府はUNCHRの支援の下、何らかの障がいを持つすべての人や、妊婦や子ども、高齢者などリスクを抱える集団に属する人々で現在もテント暮らしの人々をお湯の出る暖房設備のついたプレハブに少しでも早く移すことに優先して取り組むべきだ。いまだテント暮らしの人々はすべてできるだけ早く適切な住居に移されるべきである。

長期的にいえば、ギリシア当局はEUとUNHCRの支援を受け、キャンプでの野営状態を全廃して地域内の住居を提供すべきだ。キャンプ生活が続くことで、故郷を追われたことからくる心的外傷が永続化したり、身体的・性的暴力や健康状態の悪化などの重大な保護上のリスクが高まったりする可能性がある。

前出のバリガ・ディレクターは「国連によれば世界の7人に1人が障がい者である。しかし国連などは人道危機への対応となると障がい者の存在を看過している。障がいを持つ難民申請者と移民がギリシアで直面する過酷な状況は、国連とEUがこの問題についてより真剣な取り組みに着手すべきという警鐘を鳴らしている」と話す。