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中国:自白と非公開裁判 不公正な司法

弁護士・活動家への訴追を取り下げ、強制自白と拘禁を止めるべき

Fan Lili, the wife of imprisoned activist Gou Hongguo, is escorted by Li Wenzu, the wife of imprisoned lawyer Wang Quanzhang, and another woman as they stage a protest outside the Tianjin No. 2 Intermediate People's Court in Tianjin, China on Monday, August 1, 2016. © 2016 Associated Press

(ニューヨーク)- 天津市第2中級人民法院(地裁)で今週行われている北京鋒鋭弁護士事務所所長、周世鋒(Zhou Shifeng)弁護士および活動家の胡石根(Hu Shigen)氏、翟岩民(Zhai Yanmin)氏、勾洪国(Gou Hongguo)氏の裁判は、公正な司法とは言えないと、本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。中国当局はただちに、2015年7月9日の一斉連行事件で拘禁された弁護士、弁護士補助員、および人権活動家に対する訴追をすべて取り下げるべきだ。裁判は8月2日から5日に開かれているが、中国政府当局が主張するような公開裁判ではない。

8月2日、裁判所は翟岩民氏に、「国家政権転覆罪」で懲役3年、執行猶予4年の判決を5時間以内に言い渡した。 8月3日には胡石根氏に、「国家政権転覆罪」で懲役7年6カ月の実刑判決を数時間以内に言い渡している

また8月1日には、中国国営メディアや香港の中国政府系新聞が、北京鋒鋭弁護士事務所のもっとも著名な弁護士のひとりである王宇(Wang Yu)氏の保釈を報じた。またテレビに本人が登場し、強制されているとみられる自白も放映されている。彼女の所在は不明のままだ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの中国部長ソフィー・リチャードソンは、「これらの事例はまさに、中国政府当局による恥知らずな法制度の操作にほかならない。法の支配を求める人びとや政府批判をひねりつぶす試みだ」と述べる。「当局は公開裁判であると嘘をつき、また、王宇氏の保釈でも嘘を重ねている。ここで唯一確かな真実は、中国の人権状況が大きく後退をしているということだ。」

8月2日から、天津市第2中級人民法院は周、胡、翟、勾の各氏に対する「国家政権転覆罪」の事案について審理を行っている。信用性のある証拠は示されておらず、4人の被告および王氏の弁護人は無実を主張している。国営新華社通信によると、裁判は「一般公開」されているという。しかし、当局は被告全員の家族および弁護人に裁判を知らせなかった。当然のことながら家族の傍聴や弁護人の弁護も許可していない。裁判は報道機関や弁護人も参加しているとの触れ込みではあるが、実際に出廷・傍聴しているのは当局が選んだ者だけだ。

新華社通信によると翟氏は、様々な抗議活動へ参加したこと、これらについて「事実を歪曲」したインターネットへの投稿をしたこと、人権活動家および弁護士との集まりに参加し、そのほかの「繊細な問題」への関与方法について議論したことで罪に問われたという。思想、言論、活動を通じて、氏は「国家および法制度を攻撃し」、「色の革命」を起こす目的で「政府に対する憎悪を煽った」と報じられている。中国刑法の第105条(1)によれば、「国家政権転覆罪」は、終身刑になる可能性もある重大な政治犯罪だ。

7月29日には、天津市に拘禁されているこれら弁護士および活動家の妻である劉二敏(Liu Ermin)氏、王峭嶺(Wang Xiaoling)氏、李文足(Li Wenzu)氏、樊麗麗(Fan Lili)氏が裁判に関する情報を求めて裁判所におもむき、当局に身柄を拘束された。その後8月1日に、 裁判を傍聴できないよう、当局が劉氏、王氏、李氏を自宅軟禁下においた。

前出のリチャードソン部長は、「政府高官がしばしば口にするように中国が本当に法の支配を支持しているのであれば、王氏は彼女の身に何が起きたのか自由に語ることができたはずで、また拘束された人びとの家族も、身柄拘束の恐れなどなしに事案に関する情報を当局から得ることができたはずだ」と指摘する。

2015年7月9日から9月にかけて中国警察は、北京鋒鋭弁護士事務所を支援したり、関係があるとして、約300人の人権派弁護士や弁護士補助員、活動家を全国で一斉連行。多くは尋問の後、一両日中に釈放されたが、人権団体Chinese Human Rights Defendersによると、少なくとも16人が依然として拘束されている。それ以来、当局はこれらの事案に関し、重大な法的手続き違反を複数犯してきた。1年にもなる拘禁期間中に、16人の大半が外界との連絡を断たれて隔離拘禁され、自らが選んだ弁護人との接見や家族との面会も許されていない。

弁護士たちが隔離拘禁されている一方で、当局は国営通信社や香港の中国政府系メディアにこれらの被拘禁者とのアクセスを認め、政府の筋書き通りの自白を記録させている。これらはのちに一般公開された。2015年5月に発表した報告書内でヒューマン・ライツ・ウォッチは、刑事訴訟手続きをビデオ録画する過程で警察が行っている人権侵害について調査・検証している。被疑者は自白の録画前に拷問されたり、脅迫を受け、その後の手続きでそれを撤回すれば、また警察による拷問や虐待行為に繋がるのである。

直近の自白公開が、中国政府系の香港紙「星島日報」および中国本土のメディアによって秘密裁判前日の8月1日に報じられたものだ。王氏はその自白のなかでこれまでの活動を悔い、同僚である周氏を「適性を欠く弁護士」と評したうえで、「中国を中傷する」ために海外組織に利用されたと話した。加えて、彼女の活動を称える国際的な賞を「受け取ることはない」と受賞を拒否。友人や同僚は、こうした発言が氏の考え方とは正反対であることを指摘している。氏は人権擁護への献身と、ウイグル族の経済学者イリハム・トフティ氏や女性の権利活動家の李婷婷(Li Tingting)氏などの著名な事件で弁護人をつとめてきた実績で知られている。王氏の弁護人はいまだ王氏と連絡が取れず、保釈も確認できていないとしている。王氏の夫である包龍軍(Bao Longjun)氏も依然として拘禁下にあり、10代の息子、包卓軒(Bao Zhuoxuan)氏も自宅軟禁されている。

李和平(Li Heping)弁護士の弁護士補助員である趙威(Zhao Wei)氏は、2015年7月以来拘禁されていたが、7月7日同様に「保釈」された。中国のソーシャルネットワーク「微博」のアカウントに自白の文面を投稿したとされているものの、彼女の家族および弁護人は、いまだ連絡がとれずにいる。

こうした事例に国際社会が懸念を示し、約8カ国が8月1日の公判を傍聴させようと、天津市第2中級人民法院外に外交官を送り込んだ。ヒューマン・ライツ・ウォッチはこれらの国々に対して、秘密裁判や自白の強要、拘禁継続を非難し、被拘禁者の釈放を求める声明を発表するよう要請する。これまでに複数の政府がこうした内容の声明を出しており、その一例が、前例のなかった国連人権理事会における2016年3月の共同声明である。同声明は活動家および弁護士の釈放、自白の放送停止、そして公正な裁判を受ける権利の保障を求めるものだ。

リチャードソン部長は、「これらの事例は公正または透明な法の裁きから程遠い。司法手続きの仮面をかぶった政治的迫害にすぎない」と指摘した。

 

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