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(ニューヨーク)-中国政府は、官吏の資産公開義務化を求めた後に拘禁された活動家4人を即時釈放すべきだ。今回の拘禁は、「腐敗撲滅」の公約履行を政府に働きかけてきた草の根運動の活動家に対して、これまでで最も厳しい措置といえる。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの中国部長ソフィー・リチャードソンは、「反汚職活動家4人の拘禁により、習近平国家主席の汚職問題に厳しい姿勢で臨むという公約に疑問が生じた」と述べる。「これら活動家に対する処遇は、中国でまん延する腐敗に終止符を打つという国家主席のキャンペーンが、単なる雄弁な見かけ倒しにすぎないか否かのテストとなろう。」

北京警察は2013年3月31日、ホウ・シン(Hou Xin)、ユアン・ドン(Yuan Dong)、ジャン・バオチェン(Zhang Baocheng)、マ・シンリ(Ma Xinli)の4人を逮捕。4人は、「官吏の資産公開を義務づけよ」「腐敗官吏を葬らない限り、チャイナ・ドリームは白昼夢でしかない」といった大横断幕を掲げていた。活動家たちはまた、北京市西城区にある西単文化プラザで腐敗に対する取り組みの必要性について演説を行った。

4人は最高5年以下の刑である、「不法集会」容疑で逮捕された。ユアン氏、ジャン氏、マ氏の3人は北京第3留置所に、ホウ氏は第1留置所に拘禁されている。中国国内法下では、犯罪の被疑者は拘束後48時間以内に弁護士に接見する権利を有している。警察は検察局から正式な逮捕状を得るよう義務づけられているが、それまでに37日間被疑者を拘束することができる。

習国家主席は注目される腐敗撲滅運動を開始し、「あらゆる形態の汚職ほか違法行為と断固闘う」ことを公約。腐敗を放置すれば、「共産党の崩壊と国家の破綻」を招くだろうと警告した。ここで最も重要なのは、腐敗撲滅運動で「虎とハエ」両方、すなわち下層の役人同様に有力な高官もたたくと述べたことだ。過去4カ月の間に、贅沢な金の使い方や汚職で取り調べを受け、免職となった官吏が相次いでいる。中でも際立ったのは、強大な権力を持つ李春城・四川省党委副書記の摘発で、「党の規律違反」で拘束された。

官吏は現在、資産報告の義務があるが、それを一般に公開する必要はない。ここ数年は最高指導者層でさえ、官吏の収入について透明性を高めるよう求めていた。これには温家宝・前首相も含まれており、彼は2011年2月に「長期的には」こうした措置が必要となるだろうと述べた。更に最高顧問機関である中国人民政治協商会議の兪正声主席も2012年11月に、「資産公開制度の段階的実施」が求められると述べている。

活動家たちは中国政府に、官吏の資産公開を義務づける法律の導入を求めている。昨年12月に民間学識者の一団が、自らの資産公開で範を示すことを求める書簡を中国共産党中央委員会委員に宛てて送付。7,000人超の人びとが署名した本書簡が、今年3月の全国人民代表大会に先立ち手渡された。この運動に関与した活動家の一部は全国をまわって署名を集めたり、ビラを配布し、横断幕を掲げた。2012年中には、政府情報公開法に基づき、多くの大学生が官吏の資産に関する情報を求める申請書を提出している。

中国政府はこの運動に対して、主催者への嫌がらせや召喚、更には書簡の検閲と主催者のミニブログ消去などで応じた。運動に参加した活動家の一部は短期間拘禁されたり、あるいは活動自体が制限されたりした。そのうちのひとりユアン・ユンホワ(Yuan Yunhua)は、短期間ではあるが2度拘禁されている。最初は今年1月に正体不明の男たちによるもので、反腐敗運動について「よく考える」よう言われた。2度目は3月初旬、活動家仲間のジャン・クン(Zhang Kun)と共に警察に拘禁された。2人は警察官の同伴で出身地に送り返されている。3月中旬には北京警察が、2人の活動家、リー・マオリン(Li Maolin)とルオ・リジュン(Luo Lijun)を、釈放するまで1週間以上にわたり、秘密の「裏監獄」に拘禁していた。

前出のリチャードソン部長は、「腐敗抑止のためのより高い透明性を求めるという正当な要求を沈黙させることは、活動家を封じることにも、腐敗というガンを消滅させることにも繋がらないだろう」と指摘。「これは習国家主席にとって、自らが前任者たちとは異なり、権力者に立ち向かう市民の味方であることを示す好機といえる。」 

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