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日本:ミャンマー警察への無償資金協力の停止を

国軍支配下の組織への支援、全面停止すべき

Myanmar border guard police officers walk along a path in Tin May village in northern Rakhine State, Myanmar, July 14, 2017. © 2017 AP Photo

(東京)― 日本政府は、ミャンマー警察への車両および無線機器の購入を目的とする無償資金供与を直ちに中止すべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。文民政府の統制外にあり、国軍に支援されて活動する同国の警察には、深刻な人権侵害を行ってきた歴史がある。

2020年7月2日、日本の外務省はミャンマー警察への資金協力を発表した。要人保護用の車両のほか無線機器などを購入するための、総額1億円の無償資金協力だ。外務省は、寄付金はミャンマー警察の「治安対策能力を強化し、社会の安定化を図り、同国の経済社会開発に寄与するもの」だとしている。

「警察に資金協力を行うことで、ミャンマー国内で人権侵害を引き起こしてきた治安機関に便宜を図ろうとするような日本側の動きは不可解だ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチ アジア局長ブラッド・アダムズは述べた。「日本は、ミャンマー警察への支援ではなく、他国政府と協力して治安部隊の責任を追及するとともに、人権侵害や民族浄化の犠牲者を支援すべきである。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチによれば、ミャンマー警察は、50年続いた軍政期で弾圧の中核的役割を担っており、反体制派や学生活動家を恣意的に拘禁し、拷問を広範に行って、国内に恐怖の空気を作り出してきた。警察は相変わらず人権侵害を行い、活動の制約も受けていない。国軍の起草による憲法が、警察にたいする国軍の統制を維持したことが理由の一つだ。警察は内務省の管轄で、同省はミャンマー憲法の定めで現役軍人が率いる。事実上、国軍の指揮下にある。

近年、警察は国軍との共同作戦に従事しており、2012年、2016年、2017年にはラカイン州のロヒンギャに対し、人道に対する罪を含む残虐を行った。ミャンマー警察と国境警備隊、治安警察大隊は、大量殺戮やレイプ、放火などの原因となった「掃討作戦」で国軍に同行した。警察の関与は、ロヒンギャ数百人が殺害されたトゥラトゥリ村グダーピン村での虐殺を含む、2017年8月~9月に多数の死者を出した一連の出来事で明らかになっている。

警察は、ロヒンギャの成人女性や少女へのレイプ(集団レイプを含む)に加担し、母親が襲われている間にその子どもを殺してもいる。ラテーダウン郡ザイディーピン村の女性は、ミャンマーに関する国連の事実調査団に、「何人の警察官にレイプされたのかは覚えていません。人数の問題ではありませんでした。私が唯一覚えているのは、あいつらが子どもたちを連れ去ろうとしていたことです。寝台の下から息子を引きずり出しました。私は子どもたちを守ろうと叫び続けました。それが息子を見た最後です。」 複数の村落では、治安部隊が成人女性や少女を拉致して警察や軍の施設に連れて行き、そこで集団レイプを行っている。

ラカイン州では、ミャンマー警察が大部分のチェックポイントを管理している。チェックポイントは、同州におけるロヒンギャの移動の自由への重大な侵害で中心的な役割を果たしている。警察はチェックポイントで、身体的嫌がらせだけでなく、事細かに金銭をゆすり取っており、ロヒンギャの村落や収容施設への恣意的監禁を支えている。ヒューマン・ライツ・ウォッチなどは、国境警備隊を含む警察による、恣意的に拘束されたロヒンギャへの拷問も明らかにしている。

ミャンマー警察は、批判や抗議に対し、恣意的逮捕や過剰かつ不必要な実力行使で対応してきた。2017年には、インディン村でのロヒンギャ10人虐殺事件をロイター通信が取材したところ、記者2人がミャンマー警察におとり捜査で逮捕された。治安警察官はロイターに対し、国軍の命令で村の襲撃に参加したと語った

2018年1月、当局によるイベント中止を受け、ムラウーにある地方政府の建物前に集まった群衆に対して警察が発砲し、抗議行動に参加していたラカイン人7人が射殺された。

警察はまた、ミャンマーの様々な地域での過剰な武力行使にも関与している。2020年4月、新型コロナウイルス感染症を理由とする外出禁止令に違反したとして、マンダレーで警察が男性1人を殴るところを収めた動画が出回った。2019年2月、警察は、ミャンマーの独立指導者アウンサン将軍を称える像の設置に抗議したカレンニー人の若者に対し、ゴム弾射撃と放水車での放水を行った。警察のバリケードを乗り越えて進もうとしたデモ隊側に少なくとも20人の負傷者が出た。

ヒューマン・ライツ・ウォッチが供与に関してどのような人権デュー・ディリジェンスが行われたか外務省に問い合わせたところ、「本支援は、同目的に基づいて、適切に、効果的に、かつ排他的に使用・維持されることをミャンマー政府側と確認しています」と同省担当者は述べた。また、同省は現地の大使館などを通じて、機材が適切に使用されているかモニタリングするとした。

日本政府は、全面的な改革がなされ、また警察が文民統制下に置かれるまで、ミャンマー警察への支援を全面停止すべきだ。日本はまた、内務省を含む、国軍管理下にあるすべての組織や省庁への援助を停止すべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘する。

「日本政府は、ミャンマーの警察に真新しい設備を提供しても、警察による人権侵害の抑制にはつながらないことを自覚すべきだ」と、前出のアダムス局長は述べた。「ミャンマー警察に対してふさわしくない正当性を与えることで、日本政府はミャンマー国民にたいし、その苦しみをほとんど意に介していないというメッセージを送っているのである。」

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