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ビルマ:アラカン州の全住民に自由の保障を

非常事態の解除で、ロヒンギャへの規制を撤廃すべき

(ニューヨーク)ビルマ政府はアラカン州での非常事態を解除したが、これに引き続き、ロヒンギャ民族やその他のムスリム住民に人権侵害をもたらす様々な規制も即時解除すべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。

A Rohingya woman walks at an IDP camp in Pauktaw, Arakan State on April 23, 2014. © 2014 Reuters

新政権への権力委譲の前日である2016年3月29日に、退任するテインセイン大統領はアラカン州の非常事態の解除を命じた。これは2012年に仏教徒とロヒンギャ・ムスリムとの宗派間対立の最中に発せられていた。国営メディアは、この命令は国民及び財産への危害がもはや存在しないことを政府が確認したことを受けたものと報じた。

「テインセイン大統領が退任間際にアラカン州の非常事態を解除したことで、長年迫害を受けている少数者ロヒンギャに対し、新政権が基本的自由を保障する安定した土台が築かれた」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長代理フィル・ロバートソンは述べた。「今度は、新政権が現地の当局者や治安部隊と協働し、非常事態の解除を、アラカン州の全住民の人権状況の現実的な改善へとつなげるようにしなければならない。」

アラカン州首相に新任される国民民主連盟(NLD)のニーピュー氏、ティンチョー新大統領には、すべてのコミュニティが差別なく平等な保護を受けることができるようにするため、いっそうの努力が求められていると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。治安部隊と国軍が支配する省庁により、いまだに行われている基本的自由への制限は、ただちに撤廃されるべきである。

差別的な1982年国籍法に基づき、ロヒンギャ120万人に実質的にビルマ国籍を認めていない政府の対応が、ロヒンギャの移動の自由の権利への制限、教育へのアクセスに関する差別的な制限、恣意的な拘禁や徴税、強制労働、財産没収といった人権侵害を助長してきた。例えばロヒンギャは、郡内および郡間を移動する際に許可が必要だ。医療を利用したり、生計を立てるにあたり、極めて深刻な影響を受けている。アラカン州マウンドーとブティーダウン両郡のロヒンギャも、婚姻や出生登録の許可を得るといった膨大な規制に対応しなければならない。

2012年に起きた宗派間暴力について、ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査結果はこれが民族浄化と人道に対する罪にあたることを示したが、この事件以降、13万人以上のロヒンギャ・ムスリムが今も避難民となったままだ。地元当局と治安部隊は、州都シットウェーのロヒンギャの国内避難民キャンプと、アラカン州北部のロヒンギャのコミュニティに対する援助団体のアクセスを制限している。現地での差別的な施策が速やかに撤回されれば、無国籍状態にあるロヒンギャや、その他のムスリム少数者の生活条件は劇的に改善されるだろうと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

2016年2月8日にアラカン州北部の当局は、モスクを含めた公共の場で5人以上が集まることを禁止する夜間外出禁止令を2か月間延長した。この命令が非常事態宣言の一部なのかは定かではないが、中央政府は夜間外出禁止令の全面解除を優先して行うべきだ。

「非常事態宣言は、ロヒンギャ住民を実質的に隔離し、基本的なサービスの受給を阻む抑圧的なシステムの氷山の一角に過ぎない」と、前出のロバートソンは述べた。「こうした過酷な政策を廃止することが、ロヒンギャをめぐる深刻な状況に長期的な解決をもたらすには必要だ。この問題はアラカン州のすべての人びとに影響を与えている。」

国および地方政府とビルマ国軍は、非合法結社法による恣意的拘禁を停止すべきである。同法は、反政府組織のアラカン軍への支援や支持を疑われる民間人の拘束に用いられている。昨年を通じ、国軍と仏教徒アラカン民族の反政府武装組織アラカン軍との戦闘が、アラカン州北部とチン州南部で激しくなった。当局はこの法律を根拠に、多くの民間人を恣意的に逮捕、起訴している。

アラカン州での戦況が激しくなるにつれ、国軍と非政府武装勢力の民間人への人権侵害が報告されている。強制労働や、民間人居住区付近での無差別な対人地雷敷設などだ。民間人数千人が戦闘によって一時的に住む場所を離れざるをえず、治安に関する過剰な規制が援助団体のアクセスを妨害しているケースもある。

「ビルマ国軍は、アラカン州で徐々に高まりつつある武力紛争に巻き込まれたアラカン民族仏教徒への人権侵害を停止すべきだ」と、前出のロバートソンは指摘する。「治安部隊による嫌がらせと人権侵害が続けば、2012年の宗派間暴力後の、信頼と人権尊重を回復しようとする努力は台無しになることだろう。」

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