(東京)―キリンホールディングス株式会社(以下キリン)は、合併事業提携先のミャンマー・エコノミック・ホールディングス社(以下MEHL)が少数民族を迫害しているミャンマー国軍との繋がりがあるため、同提携を解消すべきだ、と認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウ、国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ、特定非営利活動法人日本国際ボランティアセンター、そして認定NPO法人シャプラニール=市民による海外協力の会が本日述べた。同4団体は、2020年5月22日付けの書簡で、キリンにMEHLとの提携を解消するよう求め、6月12日に同社は返事をした。
「キリンは、ロヒンギャや他の少数民族に対して数え切れないほどの人権侵害を犯したミャンマー国軍に、資金を提供しているようなものだ」とヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局局長代理のフィル・ロバートソンは述べた。「キリンは軍系企業とミャンマー国軍のしがらみから抜け出し、自社の風評被害を回復すべきだ。」
現在、キリンはミャンマー・ブルワリー社(以下MBL)とマンダレー・ブルワリー社(以下MDL)の過半数の株を、MEHLとの提携の下保有している。2015年にキリンはミャンマー国軍が所有するMEHLとの合弁事業提携により、MBLの株式の55%を買収し、その後、発行済株式総数の4%をMEHLに譲渡した。2017年にはMEHLとの別の合弁事業でMDLの株式の51%を買収した。
ミャンマー国軍(タッマドー)は長きに渡って同国の少数民族に対して深刻な人権侵害や戦争犯罪を犯してきた。そして、2017年8月以降には、ミャンマー治安部隊が民族浄化のキャンペーンを展開し、ラカイン州のロヒンギャ・ムスリムに対して、殺害、性暴力、強制退去はじめとする数多くの人道に対する罪を犯した。
国連が設置した事実調査団(以下「FFM」)は2018年に、軍による残虐行為が「戦争犯罪および人道に対する罪のレベルに達した」との調査結果を報告した。FFMは2019年9月の報告書で、ミャンマー国軍ならびに軍系企業のMEHLやミャンマー・エコノミック・コーポレーション(MEC)と関係する「あらゆる外国の企業活動」が、「国際人権法および国際人道法違反に寄与あるいは関与するリスク」を負っており、「少なくともこうした外国企業がミャンマー国軍の財政能力を支援している」と結論づけた。FFMは、現在進行中の、また今後の国際人権法および国際人道法の違反を阻止するために、軍の「財政的孤立」を強く求めている。
「事実調査団の報告書がタッマドーの財政的孤立を呼びかけてから半年以上経つが、未だにキリンはMEHLと提携を結んでいる」と認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウの伊藤和子事務局長が述べた。「キリンが現状の関係性を保つ以上、同社の企業活動がミャンマー国軍の人権侵害を助長するリスクが毎日生じている。」
キリンは他にもミャンマー国軍との繋がりがある。アムネスティ・インターナショナルによると、同社の子会社であるMBLは、2017年9月〜10月の間に、ミャンマー国軍及びラカイン州政府に少なくとも3万米ドル相当を寄付した。これは、ロヒンギャ・ムスリムに対する軍の民族浄化キャンペーンが最高潮に達していた時期と重なる。
「キリンは自社の子会社が、組織的にロヒンギャを殺害、レイプ、迫害し、そしてロヒンギャの村に放火していたミャンマー国軍と当局になぜ数万米ドル相当を寄付していたのか、十分な説明をしていない」と、特定非営利活動法人日本国際ボランティアセンターの長谷部貴俊事務局長が述べた。「キリンは事実調査団の報告書を深刻に受け止め、直ちに軍系企業との関係を絶つべきだ。」
キリングループの人権方針は、「国連ビジネスと人権に関する指導原則」など人権を守る国際的な取り組みを尊重する、としている。同原則によると、キリンは「自らの活動を通じて人権に負の影響を引き起こしたり、助長することを回避し、そのような影響が生じた場合にはこれに対処」すべきであり、「たとえその影響を助長していない場合であっても、取引関係によって企業の事業、製品またはサービスと直接的につながっている人権への負の影響を防止または軽減するように努める」べきだ。
同社は2020年6月12日に4団体による書簡に返事をした。キリンは、「当社は、ミャンマーでの事業運営に関して国際社会が提起した懸念に対処していく所存」であるとし、「ミャンマーの人々にとってポジティブな結果をもたらすように、当社がとりうる全ての取り組みと選択肢を検討」していると述べた。同社は、「合弁事業からの収益が軍事目的で使用されないことを条件」に、「MEHLとの合弁契約を締結する」に至ったとしたが、外部のアドバイザーの協力を得て、「当社のミャンマー事業の持分所有について複数の選択肢を検討するプロセスを正式に開始」したと説明。
また、「MEHLとの合弁事業2社からの収益は、どのような収益であれ、軍事目的で使用されることはキリングループとして到底受け入れらない」と述べた。キリンは、「MEHLとの合弁事業からの収益が軍事目的で使用された可能性の有無を確認するため、MEHLの財務構造及びガバナンス体制の詳細を提示するよう正式にまた繰り返し要求」したと説明した後、外部のアドバイザーの協力を得て、「MEHLから提供される資料やその他一般に入手可能な情報の評価を実施する」とした。
キリンはMEHLとの提携を至急解消し、同社の子会社がミャンマー国軍とのさらなる協力や寄付が発生しないように努めるべきだ、と前出の4団体は述べた。
「キリンは自社の人権方針へのコミットメントを示すため、ミャンマー国軍が運営する軍系企業との関係を断ち切るべきだ」と認定NPO法人シャプラニール=市民による海外協力の会の小松豊明事務局長は述べた。「そのような責任ある行動を取れば、ミャンマーで迫害されているロヒンギャなどの少数民族に、正義とアカウンタビリティーを求めれば結果を出せると示せるだろう。」
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ニュースリリース
ミャンマー:キリンは軍と関係を断つべき
日本の大手企業が人権問題について対策をとると説明
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