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(ニューヨーク)-リビアにおける重大な犯罪に対する国際刑事裁判所(ICC) 検察官による逮捕状の要求は、法の正義の実現にとっての最初の一歩である、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。2011年5月16日、ICC検察官は、リビア指導者ムアンマル・カダフィ大佐(Muammar Gaddafi)など3人に対し、人道に対する罪の容疑で逮捕状を発付するよう、同裁判所裁判官に請求した。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのインターナショナル・ジャスティス プログラムのディレクター、リチャード・ディッカーは、「ICC検察官の逮捕状請求は、重大犯罪は処罰されるという警鐘として機能する」と語る。「重大な人権侵害に関与する者に対し、自分たちの行為の責任は問われることになる、というメッセージなのだ。」

検察官は、ムアンマル・カダフィ氏、次男のセイフルイスラム(Seif al-Islam)氏、アブドラ・サヌッシ(Abdullah Sanussi)氏の逮捕を求めている。

2月15日にリビア東部で始まった反政府デモは、隣国のチュニジアやエジプトで政権交代をもたらした広範な民主化運動を受けてのものであった。リビア政府治安部隊は、ベンガジ(Benghazi)、ダーナ(Derna)、トブルク(Tobruk)、首都トリポリ(Tripoli)やリビア西部の複数の都市で起きた非暴力デモの参加者に対して、逮捕と襲撃で応じた。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、多数の人びとの恣意的な逮捕や失踪、政府軍が平和的なデモ隊に発砲した事件などを調査して取りまとめている。

前出のディッカーは、「過去数ヶ月にわたり悪夢のような状況を生き抜いてきたリビア市民は、独立かつ公平な司法手続きを通した補償を受けて当然である」と言う。「本日の発表は、その機会を提供するものだ。」

ICCで問われる刑事責任は、犯罪を実際に行った者のみならず、命令を下した上官で、人権侵害が行われた事を認識しているべきであるが、その発生の防止、報告もしくはその責任者を訴追しなかった、指揮権を持つ地位にある者を含む。ICCを設立した条約であるローマ規程(Rome Statute)は、免責を主張した場合でも、国家元首や政府高官を含む全ての個人に平等に適用される。

カダフィ氏に対する逮捕状を裁判所が発付した場合でも、それは国際裁判所による現役国家元首あての初めての逮捕状ではない。1999年、旧ユーゴ国際刑事裁判所(International Criminal Tribunal for the Former Yugoslavia)がユーゴスラビア大統領スロボダン・ミロシェビッチ(Slobodan Milosevic)に対し、コソボでの戦争犯罪及び人道に対する罪の容疑で、初めての起訴状を出している。2003年には、シエラレオネ国際戦犯法廷(Special Court for Sierra Leone)が、当時のリベリア大統領チャールズ・テーラー(Charles Taylor)への起訴状を公開している。最も直近では、ICCがスーダンのオマル・アル・バシール大統領に対し、集団殺害罪、人道に対する罪、戦争犯罪の容疑で2通の逮捕状を発付している。

「リビアでの犯罪でムアンマル・カダフィ氏への逮捕状を請求することは、何人も法を超越した存在にはなれないということを示す」と前出のディカーは述べる。「証拠が導く先がどこであろうと、例え国家元首であろうとも、それを追って行くのが検察官の職務だ。」

ICC検察官の今回の請求は、国連安全保障理事会がリビアをICCに付託するという1970決議を全会一致で採択しておよそ2ヶ月半が経過した後のことである。2月26日の理事会による付託を受け、ICC検察官は3月3日に、2月15日以降リビアで行われた可能性のある人道に対する罪に関して、捜査を開始すると明らかにした。

ICCの予審裁判部(Pre-Trial Chamber)は、請求を認めるかどうか判断するために、検察官が提出した情報を直ちに精査しなければならない。予審裁判部判事は、容疑を掛けられている犯罪を犯したと「信じるに足る合理的根拠」があると判断した場合、逮捕状を発付する事になる。

逮捕状が発付された場合、逮捕されたあるいはICCに自首してきた容疑者には皆、「罪状確認」聴聞会で、容疑や証拠に異議を申し立てる機会がある。裁判に持ち込むためには、その時点で予審裁判部が、起訴されたそれぞれの犯罪をその者が行ったということを「信じるに足る根拠」を確立するだけの、充分な証拠が存在するかどうかを判断しなければならない。

ICCが最初の逮捕状要求を検討している間、ICC検察官が、紛争の際に犯された戦争犯罪を含む、リビア国内の全勢力が行った可能性のある重大犯罪に対する捜査を続行するよう、ヒューマン・ライツ・ウォッチは強く求めた。安全保障理事会決議1970は、2011年2月15日以降リビア領土内で行われた戦争犯罪及び人道に対する罪に関する、継続的な管轄権をICCに付与している。

「リビアにおけるアカウンタビリティ(真相究明と法的責任追及)は、政府及び反政府の双方の部隊が行った可能性のある犯罪を捜査する事を含まなければならない」とディカーは語る。「私たちは、政治的主張に拘わらず、重大な人権侵害の責任者が法の下で裁かれるよう、検察官がその職務権限を公平に執行することを期待している。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、リビア政府軍部隊が、ミスラタ(Misrata)や西部ナフサ(Nafusa)山地の複数の街の居住地区に対して繰り返し行った無差別攻撃を含む、重大な戦争法違反の数々を取りまとめてきた。

ICCは、証拠収集とその保全を進めるとともに、逮捕状の執行の支援など、捜査を進めるにあたり政府の協力に依存しなければならない。安全保障理事会決議1970は、リビア当局にICCへの全面協力を義務付けている。4月にリビアで自ら任じた反政府当局である、暫定移行国民評議会(Interim Transitional National Council)は、ICC検察官事務所に宛てた書簡で、ICCへの協力を約束している。

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