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日本政府のODA事業が引き続きミャンマー国軍を利する

支払いを停止し、標的制裁を科すべきだ

国連大学のデモでミャンマーのクーデター指導者ミン・アウン・フラインに反対するプラカードを掲げるデモ参加者。2021年2月11日、東京。 © Photo by Viola Kam/SOPA Images/Sipa USA, Sipa via AP Images

昨年2月、岸田文雄首相は日本政府のODA事業を通して資金がミャンマー国軍に流れている件について「適切に対応すべき」と答弁した。しかし、外務省担当者は今週の国会で、ODA事業を受注した大手橋梁メーカーの横河ブリッジは、今後もミャンマー国軍が保有する軍系企業のミャンマー・エコノミック・コーポレーション(MEC)に支払いを行うと答弁した。

現地メディア「ミャンマー・ナウ」は2021年3月に、軍系企業ミャンマー・エコノミック・コーポレーション(MEC)が保有する製鉄所が同事業に資材を提供して「膨大な利益を得ている」と報道。ヒューマン・ライツ・ウォッチが分析した取引履歴によると、横河ブリッジは2022年7月から2023年1月にかけて、米国政府の許可を得た上でMECに約200万米ドルを同事業のために送金した。

上川陽子外務大臣は参議院決算委員会で、同ODA事業におけるMECの役務は昨年12月に完了しており、横河ブリッジによるMECへの「進捗払い」も終わっていると答弁した。一方、外務省国際協力局の日下部英紀審議官は立憲民主党の石橋みちひろ議員の質疑に対して、横河ブリッジは今後もMECに「留保金」という形で支払いを行うことを明らかにした。具体的な時期や金額は明かさなかった。

国連が設置した事実調査団は、2019年9月の報告書で、MECはミャンマー国軍に保有されており、製造、鉱業や通信などあらゆる事業を通じて国軍に膨大な利益を生み出していると指摘米国イギリス欧州連合カナダオーストラリアは、国軍の膨大な資金源であるとして、MECと軍系企業ミャンマー・エコノミック・ホールディングスに制裁を科している。

ミャンマー国軍は2021年2月に軍事クーデターを起こし、超法規的殺人、拷問、「人道に対する罪」や戦争犯罪である民間人に対する無差別攻撃など、広範かつ組織的な人権侵害を犯してきた。

また、ミャンマーの治安部隊などはクーデター前から、ラカイン州の少数民族ロヒンギャ・ムスリムに対して「人道に対する罪」やジェノサイドの行為に値する人権侵害を犯してきた。その結果、大勢のロヒンギャが隣国バングラデシュに避難し、現在も約90万人が劣悪な難民キャンプでの生活を余儀なくされている。さらに、ラカイン州には約60万人のロヒンギャがおり、最近ではミャンマー国軍と少数民族武装勢力アラカン軍との戦闘に巻き込まれている上、強制的に徴兵されている。

岸田首相は、「適切に対応すべき」という答弁に責任を持つべきだ。MECへのさらなる支払いや人道支援以外のODAを停止し、ミャンマー国軍の幹部および軍系企業に対して標的制裁を科すべきだ。

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