(ニューヨーク、2017年1月30日)−ロドリゴ・ドゥテルテ比大統領の人権侵害的な「戦争麻薬」をめぐるフィリピン国家警察の違法な殺害疑惑について、国連は独立した国際捜査を主導すべきだ、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。ロナルド・デラローサ国家警察長官は2017年1月30日、韓国人実業家が警察官に麻薬捜査の名目で残虐に殺害された疑惑が今月明るみに出たことを受け、「内部浄化」のために薬物取締りへの警察の関与を一時停止すると発表した。

Rosalina Perez (L), sits next to the coffin of her brother Benjamin Visda, who was shot by police during a drug investigation, inside their home in Manila, Philippines.


7月1日以降、ドゥテルテ大統領の麻薬取締りキャンペーンで7,000人超のフィリピン人が殺された。しかし、超法規的処刑ほか関連犯罪で訴追されたとされる警察官は1人もいない。デラローサ警察長官は、薬物取締りに関する警察活動の中断は一時的なもので、捜査は違法な麻薬取引に関与した警察官の一掃であり、違法殺害の責任を追及するものではないと明言している。 ドゥテルテ大統領は1月29日の記者会見で、「麻薬戦争」は「任期最後の日まで」続けると宣言。このままいけば人権侵害は無期限に続くことになりそうだ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局局長代理フィリム・カインは、「警察による麻薬取締り作戦を中断すれば殺害数を減らすことはできるだろうが、すでに報告されている7,000人の犠牲に関し意味のある捜査が行われない限り、殺害が止まることはないだろう」と指摘する。「フィリピン国家警察が身内を真剣に捜査するとは考えにくいことから、国連がこれに代わるべきだ。」

警察は過去7カ月間に2,551人を薬物の使用や売買の疑いで殺害したと報告している。これらの殺害は被疑者たちが「逮捕に抵抗し、警察官を銃撃」したためと主張するが、正当防衛を示す証拠は示していない。一部の捜査班が被疑者たちを略式処刑しているという信頼性の高い証拠があるにもかかわらず、これまでに捜査・訴追された警察官は皆無だ。また7月1日以来、3603人が「身元不明の人物」に殺害されているにもかかわらず、デラローサ長官の発表ではこれに関する言及がなかった。そんななか、平服姿の警察官からなる「死の部隊」がこうした殺害に一部、あるいは多く関与しているという疑惑も聞こえてくる。

The Philippine police won’t seriously investigate themselves, so the UN should take the lead in conducting an investigation.

Phelim Kine

Deputy Asia Director

ある非政府系の犯罪撲滅団体はここ数カ月間、麻薬取締り担当の警察官が「捜査令状を調達し、家宅捜索代わりにと被害者たちをゆすっている」実態を調査・検証してきた。元警察署署長のパンフィロ・ラクソン(Panfilo Lacson)上院議員は、1月26日の上院会議で、麻薬取締り班の警察官が、ある会社の事務所に踏み込んだ際に違法な薬物を仕込んだ様子が映っているとされる動画を再生。フィリピン国家警察には長きにわたる汚職の歴史があり、同国で人権侵害的な法執行機関の最たる例が警察だと米国務省は明言している。ドゥテルテ大統領は1月29日の発言で、警察組織内の40%が「芯まで腐敗している」と述べた

フィリピン政府は、「麻薬戦争」殺害を調査しようとする国連の働きかけを拒んで来た。外務大臣は昨年12月14日に、「大統領の示した条件に従わない」という理由で、予定されていた国連の超法規的殺害に関する特別報告者アグネス・カラマード氏の公式訪問を中止したと発表。その条件の1つにはドゥテルテ大統領との「公開討論」への参加があったが、カラマード氏は「特別報告者の行動規範と一致しない」と述べていた。この条件では、被害者による証言の秘密を守る義務に反するおそれがある、とカラマード特別報告者は指摘する。国連上層部はフィリピン政府に対し、このような条件を取り消してカラマード氏をはじめとする国連関係者が「麻薬戦争」における殺害状況を調査し、かつ結果を発表するために、フィリピンへの自由で開かれたアクセスを許可するよう圧力をかけるべきだ。

カイン局長代理は、「これらの殺害について独立した国際的捜査が行われない限り、すでに長くなりつつある「麻薬戦争」関連の重大な人権侵害リストは、あっという間に長くなっていくだろう」と指摘する。