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(ソウル)- 北朝鮮の金正日総書記の死去から今日で3年となる。すさまじい飢饉など自国民への組織的な人道に対する罪が、その指導下で行われたことを忘れてはならないと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。金総書記は、世界で最も閉鎖的かつ抑圧的な政権で17年にわたり絶大な権力を行使していた。

「金正日総書記は反体制派への徹底的な弾圧を通じて国を支配し、その残虐さで人びとの心を恐怖に陥れ、沈黙させた。さらに国民を餓死へと追い込んだ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのフィル・ロバートソン アジア局長代理は述べた。「不幸なことだが、現在の最高指導者で息子の金正恩第一書記は、父親とかなり似た道をたどりつつある。」

北朝鮮では1990年代後半に「苦難の行軍」と呼ばれる深刻な飢饉が発生し、大量の餓死者と絶望的な状況が生まれた。金総書記による経済政策の失敗に自然災害が拍車をかけたためだ。政府は危機に対処できず、「先軍政治」を唱えて体制の温存に注力し、朝鮮人民軍には食糧や貴重な物資が最優先で供給された。北朝鮮では飢饉が最も深刻だった1994年から1998年にかけて、正確な数は依然不明だが、数十万人から350万人が死亡したと推計される。しかしその一方で金総書記は軍と政府のエリート層の延命を保障した。

政治囚強制収容所である「管理所」で数万人が死亡したことについても、金総書記の責任が問われるべきだ。北朝鮮では、今なお8万から12万人が強制収容所にいると見られる。囚人は看守の恒常的な拷問と虐待にさらされ、食糧は餓死すれすれの水準しか配給されず、危険な環境での重労働を強いられるなど、死と隣り合わせの状況にある。北朝鮮は政治犯罪で有罪になった本人だけでなく、その家族三代全員を強制収容所に入れる連座制を行っていると、元囚人の脱北者らはヒューマン・ライツ・ウォッチに述べている。

金正日体制の約20年間で何万人もの北朝鮮人が、政権にあえて反旗を翻すより、北朝鮮を脱出した。しかし無許可出国は国家反逆罪とみなされ、逮捕・送還された人びとは、収容所で虐待と強制労働にさらされてきた。金正恩第一書記は権力掌握後、中国国境への監視・管理体制を著しく強化し、逃亡を図った人びとに厳罰を科している。しかしそれでも毎年数百人が命がけで脱出している。

国連調査委員会は2014年2月、金日成、金正日、金正恩と続く歴代政権が組織的な人権侵害を行っており、その規模も深刻さも現代世界で類を見ないレベルであることを明らかにした。調査委員が記録した人権侵害には、処刑、殺人、奴隷労働、拷問、拘禁のほか、強かんや強制堕胎などの性暴力がある。2014年3月、国連人権理事会は調査委員会の調査結果を支持する決議を採択した。11月に国連総会第3委員会は賛成111、反対19(棄権55)という圧倒的な数字でこの決議に続いた。これらの決議は安全保障理事会に対し、歴代の北朝鮮政権による人道に対する罪について、国際社会がその責任を果たすために行動することを求めている。その1つが、北朝鮮指導部の国際刑事裁判所(ICC)への付託だ。今週後半にも、国連総会プレナリーセッションにて第3委員会の採択が支持される見込みであり、年内には安保理において初めて北朝鮮の人権状況が話し合われる予定となっている。

「遅きに失したとはいえ、金正日体制下での激しい人権侵害が、国際社会の中心的な関心事についに加わった」と、前出のロバートソン局長代理は述べた。「しかし北朝鮮が金正日総書記死去3年を熱狂的に祝っている事実は、同国が人権尊重義務をいかに無視しているかを明らかにするとともに、各国政府には、現在の最高指導者である金正恩第一書記の責任追及に向けたいっそうの努力が求められることを示すものである。」

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