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韓国:名誉毀損でメディアを刑事告訴するのをやめるべき

報道の自由の弾圧を終わらせるために法改正が必要

(ソウル)— 韓国政府は速やかに、メディアを沈黙させるために名誉毀損罪を使うのをやめるべきだ、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

2014年11月28日、朴槿恵(パク・クネ)大統領の秘書官など8人が、韓国紙の世界日報(セゲイルボ)に勤務する計6人の記者らを名誉毀損で刑事告訴した。青瓦台(大統領府)の内部監察報告書を入手したとして、それを報道したことがその理由だ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局 局長代理フィル・ロバートソンは、「名誉毀損罪は、表現の自由を萎縮させる力を持つ。政府関係者の違法行為について世間が語るのを封じ込め、公共の利益に反するものだ」と指摘する。「韓国政府は仕事に徹しているだけのジャーナリストたちを刑事告訴することをやめるべきだ。また、名誉毀損を犯罪とする法律を改正すべきだ。」

報道によると、今回流出した文書により、朴大統領の元側近男性が政府の正式な要職についていなかったにもかかわらず、大統領からたびたび政治的な相談を受けていたことが明らかになったという。なお前日の27日からはこれとは別件で、大統領への名誉毀損で在宅起訴された産経新聞の加藤達也前ソウル支局長の公判が始まった。起訴理由は、旅客船セウォル号沈没事故当日の大統領の所在をめぐり、当初韓国メディアで報道された「うわさ」を、同前支局長が報道したことによる。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは名誉毀損に関する刑事法について、個人の名誉の保護には過剰かつ不必要であり、また表現の自由を萎縮させるものであることから、反対の立場をとる。国際人権法は、他者の名誉をまもるために表現の自由に制約を課すことを認めてはいるが、こうした制約は必要かつ限定的に定義されていなければならない。個人の名誉をまもり、公共の秩序を維持するには、民事法上で名誉毀損を禁ずること、及び刑事法で教唆・煽動行為を処罰すれば十分であるし、同時に表現の自由を適切に保護することもできる。

韓国の名誉毀損罪は、個人について言われたり、書かれたことが公共の利益にあたるか否かにのみ焦点を当てたもので、それらが真実か否かは関係がない。つまり、たとえある中傷意図が「事実」に基づくと裁判所が認めても、最長で3年の刑あるいは最高で2,000万ウォン(1万7,839米ドル)の罰金という有罪判決を下すことができる。「公然と虚偽の事実」を用いた名誉毀損となれば、最長で7年の刑あるいは最高で5,000万ウォン(4万4,577米ドル)の罰金となる可能性がある。

前出のロバートソン局長代理は、「韓国関係当局は、国際基準に準じて、表現の自由に対する脅威を除くために、名誉毀損関連法規を速やかに改正すべきだ」と述べる。「韓国のジャーナリストは政府の脅しを恐れながら仕事をする状況に置かれるべきではないし、政治的に繊細な問題やトピックを報道することで刑事訴追の可能性に直面すべきでもない。」

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