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ウガンダ:同性愛禁止法 大きな悪影響

差別法が引き起こす 逮捕・襲撃・立退き・避難

(ナイロビ)-ウガンダ在住のレズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー・インターセックスたち(以下、性的少数者(LGBTI))によると、2013年12月20日に同性愛禁止法成立して以来、人権侵害が急増している、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチとアムネスティ・インターナショナルは述べた。

以前から性的少数者(LGBTI)への風当たりが非常に厳しく差別的な環境であったウガンダでは、警察による恣意的な逮捕、虐待、そして恐喝、また職場を追われる、住居を追われホームレス化する、といった事態が急増し、国外に逃れる性的少数者(LGBTI)が後を絶たない。法律が署名されてから少なくとも1人のトランスジェンダーが、明確な同性愛憎悪に基づいたヘイトクライムによって殺害されている。医療関係者は必要不可欠な医療・保健サービスを性的少数者(LGBTI)に提供することを減らし、性的少数者(LGBTI)も医療・保健サービスが必要な際に嫌がらせに遭ったり逮捕されることを恐れている。差別的な法律の成立の結果、ウガンダの性的少数者(LGBTI)に様々な人権侵害をもたらしているだけでなく、被害者が有効な救済措置を受けるアクセスまでも遮断している。首都カンパラで活動する団体「セクシャル・マイノリティーズ・ウガンダ(SMUG)」が最近公表した報告書では、「国家、なかでも立法府と行政府が総力を挙げて、ウガンダの性的少数者(LGBTI)を追い詰め、晒し者にし、辱め、弾圧している」と述べている。

「同性愛禁止法は、ホームレスと失業者を生み出し、命を守るためのHIVに関する活動を制限し、逮捕した被害者から金銭を脅し取る汚職警官の懐を肥やしている」とヒューマン・ライツ・ウォッチのレズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダーの権利上級調査員ニーラ・ゴシャルは指摘。「この法律の廃止は、ウガンダ人が暴力や嫌がらせに怯えることのない生活を送るためには、不可避だ。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチとアムネスティ・インターナショナルは、カンパラとウガンダ国内の複数の町で、同性愛禁止法の成立によって直接影響を受けた個人38人、弁護士とそのアシスタント4人、性的少数者(LGBTI)に医療・保健サービスを提供している4団体に対して2014年4月、聞き取り調査を行った。加えてヒューマン・ライツ・ウォッチは、2014年1月から3月の間にウガンダを脱出したウガンダ避難民4人に、ケニアのナイロビでインタビューを行っている。

同性愛禁止法案は2014年2月24日、ヨウェリ・ムセベニ大統領の署名によって成立、同年3月10日に施行された。同法は、成人間の同意に基づく一部の性行為に、終身刑を科すことを認めている。また同性愛(未定義)を「促進する活動」を犯罪とする規定を盛り込んでおり、人権保護アドボカシー活動を脅かすと共に、米国政府とマケレレ大学が共同で実施しているHIV研究と医療介入計画に対して、警察が強制捜査を行うという事態を引き起こしている。また「あらゆる同性愛の意図のもとに、家や部屋もしくは複数の部屋を維持している者」を、犯罪者とする規定も盛り込んでおり、性的少数者(LGBTI)の賃借人を追い出すことの正当化に利用されてきた。ウガンダの現行刑法はこれまでも男性間の同意に基づいた性交渉を犯罪としていたが、新しい規定は、同刑法を強化する内容。

2013年12月に法案が通過して以来、ヒューマン・ライツ・ウォッチとアムネスティ・インターナショナルは、成人間の同意に基づく同性愛行為容疑、もしくは性的少数者(LGBTI)に見えたというだけで逮捕された人びとが少なくとも17人いることを確認している。

一方で、こういったケースを見つけ法的支援を行っているウガンダの団体「人権啓蒙促進フォーラム」の報告によると、2007年から2011年の5年間では、同性間行為の容疑では23件の逮捕しか確認されておらず、訴追に至ったケースはなかったそうだ。この半年で逮捕が増えた結果、身柄を拘束された性的少数者(LGBTI)本人はもちろん、性的少数者全体へ悪影響がでている。なぜなら、日々逮捕の恐怖に怯え、当局との関わりを避けようとするからである。暴力や差別の被害を受けた性的少数者(LGBTI)は、自らも逮捕されるのではないかと怖くて、警察には事件を告訴出来ないと話す。

中でももっとも同法が引き起こした大きな悲劇は、多くの性的少数者(LGBTI)が家を追われ、うち多くが国を逃れるか、国内のどこかに身をひそめるか、ホームレスとして生活せざるをえなくなっている事実である。性的少数者(LGBTI)に不動産を貸すことが違法だと同性愛禁止法を解釈している家主によって、立ち退きを余儀なくされた10人からヒューマン・ライツ・ウォッチは話をきいた。カンパラで生活しているレズビアンのハニファ・A(彼女の名前およびレポートに記載されている名前の殆どは、安全上の理由から変更している)は、3月3日に家主から受け取った立退きを求める書簡を、ヒューマン・ライツ・ウォッチに見せた。明け渡しまで1ヶ月の猶予とする書簡には、以下のように書いてある。

「賃料を毎月支払い頂き有難うございます。しかしながら国内の状況に加え、貴方とご友人との振る舞いのため、残念ながら貴方が破廉恥な方であると疑うに至り、私の家を貴方様にお貸し出来ません。政府に抗えない私をお許しください。」

聞き取り調査に応じた人びとの殆どは、近所の人たちからの脅迫や監視を避けるために新しい住居に引っ越しを余儀なくされた。なかには、ゴシップ誌やテレビで「暴露」までされたため、引っ越さざるをえなくなった人もいた。2014年初め以降、少なくとも100人の性的少数者(LGBTI)がウガンダ本国を逃れている。

同法成立の結果、性的少数者(LGBTI)向けの医療・保健サービスおよびHIV予防に関する情報にアクセスするのが困難になっている。警察は4月4日、米国の資金援助によって性的少数者(LGBTI)へHIVの情報と治療を提供している研究・治療センターであるマケレレ大学ウォルター・リード計画に対し、強制捜査を行った。警察は、同施設が人びとを同性愛に「勧誘した」と主張している。HIV検査キットやコンドーム・潤滑油などを、男性と性行為を行う男性(以下MSM)に向けて提供していた、コミュニティー内で活動する2つの団体が法案成立後に閉鎖している。これらの団体は活動の一部を再開させたものの、アポイントなしに立ち寄った人を受入れることはなくなった。ウガンダ最大のHIV/エイズ団体TASOは、MSMおよびHIVの危険にさらされやすい人向けにHIV検査や教育をする支援活動「ムーンライト(夜間)クリニック」を一時閉鎖した。

同法が発効した直後、ルハカナ・ルグンダ保健相は性的少数者(LGBTI)にも医療・保健サービスを差別せずに提供すると公約した。しかしながら、保健省が警察に対して影響力を行使できていない現状からすると、その実効性について深刻な懸念が残る、とヒューマン・ライツ・ウォッチとアムネスティ・インターナショナルは指摘。

性的少数者(LGBTI)への聞取り調査は、保健・医療サービス従事者が、患者の守秘義務を犯すリスクを示唆している。トランスジェンダー男性のジェイ・Mは同法発効直後、熱が出て治療に行った際に、以下のようなことがあったと話している。

「医者は『で、あなたは女? 男?』と尋ねました。『トランスジェンダーの男ですが、そんなこと関係ないでしょう』と答えました。すると医者は、『トランスジェンダーの男だって?ゲイには治療を提供しないのは知ってるでしょう?あんたは、私らの社会にいちゃダメなんだ。警察に電話して、あんたを通報してもいいんだよ?この国にいるべき人間ではない』と言ったんです。」

結局、ジェイは医師に賄賂を5万シリング支払い、病院から逃れた。

「同性愛禁止法が存在する限り、性的少数者(LGBTI)に対する差別のない保健・医療サービスの提供について、保健省は保証できない」、とアムネスティ・インターナショナル 東部アフリカ地域局長代理のミシェル・カガリは指摘する。「多くの性的少数者(LGBTI)にとって、保健・医療サービスを求めることのリスクが、便益を上回っている。医療関係者のたった一人でもその気になれば、病気にかかったゲイやバイセクシャルの人を、一生刑務所にとじこめてしまいかねないのですから。」

聞取り調査に応じた被害者と弁護士によると、法案通過後に逮捕された者の殆どが、起訴されることなく釈放されたそうだ。ヒューマン・ライツ・ウォッチとアムネスティ・インターナショナルが取りまとめた聞き取りケースのうち7件で、警官が3万(約12米ドル)から150万(約634米ドル)シリングを要求したと報告している。他の被害者は、弁護士の支援により釈放されている。3人のトランスジェンダーは拘束中、胸や性器を触るなど、警察から性的暴行を受けたと話し、あるHIV陽性のトランスジェンダー女性は、抗レトロウィルス治療薬(以下ART)を使用させてもらえなかった。また、同性愛容疑で逮捕した男性に対し、警察が強制的な肛門検査(同性愛行為の“立証”手法とされるが、その信用性は否定されている)を強要したケースが、少なくとも1件あった。これは拷問に該当するといえる。

2月4日の警察監察総監カレ・カイフラ大将との会談で、ヒューマン・ライツ・ウォッチは警察医が強制的な肛門検査を行っている件について懸念を表明し、カイフラは詳細な調査と警察職員に対する指針回覧の要請に合意した。しかながら、ヒューマン・ライツ・ウォッチが照会した限りにおいて、そういった指針は警察に伝達されていない。

逮捕の脅威ゆえに、たとえ性的少数者(LGBTI)を襲撃しても責任追及されない可能性が高くなったという側面もある、とヒューマン・ライツ・ウォッチとアムネスティ・インターナショナルは指摘。ムセベニ大統領の署名によって法案が発効した翌週、「クイーン」として知られるカンパラのトランスジェンダーのセックスワーカーは、酒場で会った男に残虐な襲撃を受け、殺害された。ヒューマン・ライツ・ウォッチの聞き取り調査に応じたその被害者の友人たち3人は、自分たちもトランスジェンダー女性のため逮捕される危険があり、怖くて警察に殺人事件を通報できない、と話す。3月には3人の性的少数者(LGBTI)が、ソーシャルメディアを通じて知り合った複数の男性に、とある民家に誘い出され、同性愛憎悪的な嫌がらせを強要されて虐待された事件がおきた。うち2名の被害者が逃げ出して警察に告訴したが、警察は同性愛憎悪な言葉で対応するばかりで、被害者たちは怖くてそれ以上手続きを進めることができなかった。

同性愛禁止法はまた、性的少数者(LGBTI)の生活維持にも直接的な影響を及ぼしている。6人の人びとが、法案通過後に自らの性的指向または性自認を理由に解雇された、とヒューマン・ライツ・ウォッチとアムネスティ・インターナショナルに話している。非公式の小規模事業や商品販売に従事している人びとは、顧客や取引業者から、自分たちと繋がっていると思われるのが怖いから、今後は取引を行わないと言われたと訴えた。

「同性愛禁止法が国会を通過してたった5ヶ月なのに、性的少数者(LGBTI)の健康と福祉に、非常に大きな悪影響がでている」と前出のゴシャル上級調査員は指摘している。

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