(ニューヨーク) - イラン司法権は、映画監督ジャアファル・パナーヒー氏(ジャファル・パナヒ。監督作品に『チャドルと生きる』、『オフサイド・ガールズ』など)の自宅を捜索した理由と共に、氏と同僚2人の身柄を拘束する法的根拠を直ちに示すべきだ。ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日このように述べた。

英国BBCなど複数のウェブサイトの情報によれば、私服の公安職員が2010年3月1日夕方にパナーヒー氏宅に現れ、家宅捜索を行い、本人の私物を押収した上で、本人と妻、娘のほか、映画監督と俳優15人を逮捕した。パナーヒー氏の息子は、パナーヒー氏と訪問客たちが次回作について会議をしているところに公安職員が現れたと話している。パナーヒーら3人が現在も釈放されていない。

「パナーヒー氏ら3人が拘束されてから2週間が経とうとしているのに、イラン司法権は拘束を続ける理由を一切示していない」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの中東局長サラ・リー・ウィットソンは述べた。「イラン当局は3人を起訴するか、さもなければ直ちに釈放すべきだ。」

当局は家宅捜索の2日後、被逮捕者のうち、パナーヒー氏の妻のターヘレ・サーイディーと娘のソルマーズ・パナーヒーら15人を釈放した。一家の友人筋によれば、ジャアファル・パナーヒー氏と映画監督2人(モハンマド・ラスーロフ氏とメフディ・プールムーサ氏)はエヴィーン(エヴィン)刑務所に現在も収容されている。

逮捕劇からだいぶ後になって出された報道発表で、テヘラン検事長アッバース・ジャアファリー=ドウラトアーバーディーは、パナーヒー氏の逮捕が「彼が文化人であることとは一切関係がなく、また政治的なものでもない」と述べた。そしてパナーヒー氏が逮捕されたのは「いくつかの罪」を犯したからだと説明したが、ドウラトアーバーディー検事長も司法権もその中身を説明していない。

パナーヒー一家のある友人はヒューマン・ライツ・ウォッチに対して次のように述べた。逮捕後1週間以上経ってから、パナーヒー氏は家族への電話をやっと許可されたが、電話を掛ける時になるまで「彼は家族とスタッフがその前の週に釈放されていることを知らなかった。」 しかし、とこの人物は付け加えた。当局は家族に対し、取調期間が終わるまでは、エヴィーン刑務所に収容中のパナーヒー氏との面会は許可されないと通達している。別の友人によれば、ラスーロフ氏とプールムーサ氏も家族との連絡を許可された。

3 月3日、パナーヒー氏の息子パナーフは、反対勢力指導者ミール・ホセイン・ムーサヴィーに近いとされるウェブサイトkalame.comに対し、父親らは、政府から既に許可を受けている映画の作業をしているところを逮捕されたと述べた。当人は治安部隊による一連の捜索と逮捕劇の時には自宅を留守にしていた。

2009年6月12日のイラン大統領選の結果は物議を醸しているが、パナーヒー氏は選挙後の非暴力的な抗議行動参加者への支持を公言していた。2009年7月30日には、南テヘランのベヘシュト・ザフラー墓地を訪れ、イラン人映画監督数人と共に、大統領選後の国家による暴力行使で死亡したデモ参加者に献花しようとしたところ、治安部隊によって短時間拘束された。

2月にイラン当局は、ベルリン映画祭に参加しようとしたパナーヒー氏の出国を許可しなかったが、その理由を一切示していない。

「ジャアファル・パナーヒー氏のような有名文化人を標的にすることで、イラン政府は、自分たちが脅威だと見なせば誰であれ拘束するとの明確なメッセージを発している」とウィットソンは述べた。「パナーヒー氏のような有名人すら恣意的に逮捕されるとすれば、一般のイラン人は、政府に批判的と見なされかねない行動に参加する際には二の足を踏むことになる。」

パナーヒー氏の逮捕は国内外で厳しい批判を招いた。欧州の複数の政府や市民団体、著名な俳優もこの列に加わっている。3月8日に、著名なイラン人プロデューサーと映画監督、俳優がパナーヒー一家を訪ね、支援を表明すると共に、パナーヒー氏ら3人の即時釈放を求めた。

同日、当局は著名な詩人・批評家のスィーミーン・ベフバハーニー氏のパスポートを没収し、パリで行われる国際女性デー関連行事への出席を妨害した。このケースについても当局はその理由を一切示していない。