日本では10月に「スポーツの日」(旧・体育の日)という祝日があります。1964年の東京五輪開催を記念して設けられたもので、スポーツを国の優先課題として長年重視してきた日本の姿勢を表しています。
近年、喜ばしいことが数多くありました。日本は60年以上にわたり、国レベルでスポーツを推進するための法律を設けてきました。現在のスポーツ基本法(前身はスポーツ振興法)です。日本は、施設整備やアスリート育成、国民のスポーツ参加への投資、そして2020年東京五輪のようなメガイベントの開催を通じて、スポーツ大国となりました。
しかし、あるきわめて重要な問題には、十分な関心が払われてきませんでした。スポーツをする人や子どもを、スポーツでの暴力・暴言等から守ることです。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、日本のスポーツの現場で、子どもやスポーツをする人に対する暴力、性虐待、暴言が広く起きている実態を明らかにする報告書を発表しました。あるスポーツ選手は、監督から受けた暴力をこう語っています。「数えきれないほど叩かれました。……みんなの目の前で顔を。血が出てたんですけど、監督が殴るのは止まらなかったですね。」
競技者や虐待経験者からの社会的な強い働きかけの下、2025年に、国会はスポーツ基本法の改正案を可決しました。国は、スポーツにおける暴力等の防止策を講じなければならなくなりました。しかし、これまでのところ、政府はこの法律を十分に実施していません。それどころか、暴力・暴言等の苦情申立てへの対応を、個々の競技団体やスポーツ団体に主に委ねています。
一方で、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、スポーツをする人や子どもは、こうした団体への暴力・暴言等の通報をためらいがちであることを報告しています。報復を恐れたり、こうした競技団体が多くの場合スポーツをする人たちよりも団体の幹部を守るからです。また、通報相談窓口の仕組みは競技によって大きく異なるため、保護へのアクセスにはばらつきがあります。
スポーツ庁は現在、2027年から始まる政府の5カ年スポーツ政策の指針である第4期スポーツ基本計画を策定中です。この計画では、スポーツにおける暴力・暴言等について、よりよい対応が必要です。とりわけ、苦情申立てを受け付け、暴力・暴言等の事案を調査し、スポーツで被害を受けた人を支援する、独立したセーフスポーツ・センターの設立が求められます。
スポーツの日は、日本のアスリートをたたえるだけでなく、スポーツをする人の安全をより守る機会とすべきです。日本政府は、誰もが暴力・暴言等を受けることなく安全にスポーツに参加でき、信頼できる制度を通じて被害を通報できるようにすべきです。