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日本政府の行動で、アジアの人権状況の悪化を防げる

国連安保理などでリーダーシップを発揮すべき重要な年に

掲載: The Japan Times
国連安全保障理事会の会合後、会見に到着する上川陽子外務大臣。ニューヨーク、2024年3月18日。 © AP Photo/Eduardo Munoz Alvarez

先月、岸田文雄首相は日本の外交方針について「人間の尊厳が尊重され、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序が維持され、強化される、そのようなアジア、そして世界を私たちの手で作り上げ、将来世代に繋げることが、私たちの役割です」と語りました

今年は日本にとって、この目標の実現に向けた本気度とともに、国連人権理事会と国連安全保障理事会でともに理事国を務める国として人権に本腰を入れるかどうかが問われる大変重要な年です。

一方でアジア全体では、人権はその侵害をもたらす政府の攻撃に依然さらされています。

ミャンマーでは軍事クーデターとそれに伴う紛争の激化によって、何千人もの文民の命が奪われ、300万人以上が住み慣れた土地を離れざるをえない状況です。また、タリバンが政権に復帰したアフガニスタンでは広範な人権侵害が強まっており、深刻な男女差別や成人女性・少女への迫害も常態化しています。

北朝鮮、中国、ベトナムでは長年の一党支配体制によって、国民が表現、結社、集会の自由を奪われています。他方で、インドネシア、タイ、カンボジア、インド、バングラデシュ、パキスタンでは根深い政治的利害が市民社会や選挙プロセスを弱体化させています。

アジアのほぼ全域で市民社会や報道の自由の空間が狭まっているのです。

日本は国連機関での議席を有効に使い、同じ考えを持つ各国政府としっかり手を組み、人権保護のために積極的なリーダーシップを発揮すべきです。国内選挙を控える米国や英国などの西側諸国は国内問題に焦点を当てています。また、人権原則を選択的に適用することで信頼を失ってもいます

日本は、成熟した安定的で、経済的に豊かなアジアの民主主義国家であり、寛大な開発援助国として影響力を有していますが、その力の使い方はあまりに控えめかつ選択的です。日本政府は、北朝鮮、中国、ミャンマーへの働きかけをはじめ、域内全体の人権問題にもっと取り組むべきです。

北朝鮮は世界最悪レベルの人権状況を抱えています。これは日本のすぐそばの話です。さらに、新型コロナウイルス感染症のパンデミック以降、北朝鮮政府は北部国境を封鎖し、孤立を深め、人権侵害を深刻化させています。

長年にわたる北朝鮮による日本人拉致の歴史を踏まえ、日本は以前、北朝鮮での人道に対する罪を扱う調査委員会の設置を国連人権理事会に求めるキャンペーンを主導し、成功を収めました。

委員会が画期的な報告書を発表してから10年が経ちました。しかし、この10年にわたり、北朝鮮政府は委員会の勧告を履行しないばかりか、国連安保理を無視して国際平和と安全を脅かす核兵器開発を加速させてきました。

3月、ロシアは、国連安保理による対北朝鮮制裁措置の履行状況をモニタリングする専門家パネルのマンデート延長に拒否権を発動しました。その狙いは、各国政府が北朝鮮の核兵器開発計画や人権・人道状況に関する最新情報を入手しにくくすることにありました。しかし、かえって国連による監視を強化する機会となっています。

日本は、北朝鮮での抑圧が人道危機を深刻化させるとともに、核兵器開発の存続を可能にするものだという認識のもと、韓国や米国などと協力し、安全保障と人権をいっそう強く結びつけるべきです。こうして連携する各国政府によって、北朝鮮の広範な人権侵害の実態、現政権が国際社会の平和と安全保障にもたらす脅威、そして国連決議に背く政権側の違法行為の結びつきを調査する公平で独立した専門家チームの設置に向けた国連総会での取り組みがリードされなければなりません。

一方、中国政府は、新疆ウイグル自治区でのウイグル族やその他のテュルク系ムスリムに対する恣意的拘禁、チベットでの強制移住や宗教弾圧、香港での民主主義の解体、全土で行われている広範な検閲、監視、弾圧など、深刻な人権侵害行為についてアカウンタビリティ(説明責任)を果たそうとしていません。2022年8月、国連人権高等弁務官事務所は中国政府を厳しく批判する報告書を発表しました。報告書は新疆ウイグル自治区での人権侵害を「人道に対する罪に該当する可能性がある」と結論づけています。

それから2年が経ちますが、これに対するフォローアップはまったく行われていません。中国政府がこうした人権侵害行為を否認し、この問題を人権理事会で扱おうとする動きに強く反発しているためです。

最初の足がかりとして、日本はいくつかの国と協力し、人権理事会の場で中国の人権侵害を非難する共同声明の採択に向けた取り組みを主導すべきです。これが実現すれば、大国による犯罪であっても必ず注視されるのだというメッセージを発せられます。

また、日本はヴォルカー・トゥルク国連人権高等弁務官に対し、当該国連報告書発表後のアップデートとともに、中国が勧告を履行しているかどうかについて、人権理事会で報告を行うよう強く求めるべきです。

ミャンマーに目を転じると、2021年のクーデター以来、軍事政権による人道に対する罪や戦争犯罪はとどまるところを知りません。同国の大半が戦闘地域となっており、文民が戦火にさらされています。今年初頭、軍政は徴兵制を導入しましたが、人権侵害をもたらすかたちで行われており、徴兵を免れて何千人もの人びとが国外に逃れています。

国軍への武器や収益の流れを止めることが、軍政に方針転換を迫る上でとても重要です。

日本はすでに、ミャンマーでの無差別空爆や文民への攻撃を非難し、政治囚を釈放しようとしない軍政を批判しています。しかし、さらなる対応が必要です。日本政府は、安全保障理事会の場で、ミャンマーへの武器禁輸、国際刑事裁判所への付託、国軍所有企業への標的制裁を求める英国や同じ考えをもつ政府を支持すべきです。

日本はミャンマーについて非人道分野での援助を全面停止すべきです。日本企業の少なくとも1社が軍政傘下の複合企業体への支払いをいまだ続けています。日本政府は国内企業に対し、制裁対象となっているミャンマー企業への標的制裁を遵守するようにとの明確なメッセージを送るべきです。

広く言えば、日本に求められているのは、対外政策を通して人権を守るための外交的手段をもっと増やすことです。まずは、深刻な人権侵害に関与した人物に対し、ビザ発給禁止や資産凍結などの標的制裁を認める法律を制定すべきです。こうした法律があれば、当該国の国民を広く罰することなく、人権侵害の実行者を個別に標的とする柔軟な対応が可能になります。

さらに日本政府は、企業に対してサプライチェーンでの強制労働などの人権侵害に対処することを義務づける人権デューディリジェンス法を導入するべきです。日本はG7諸国で唯一こうした法律が存在しないことを踏まえ、国会議員には法律の制定を求める動きがあります。最後に、日本政府は国際人権問題担当首相補佐官職を復活させるべきです。岸田首相は2021年にこの役職を創設したものの、昨年9月に突如廃止しました

日本は、グローバル・サウスの多くの国々、とりわけアジア諸国と貿易や開発で強く結びついてきました。そして外交政策の一環として関与と対話をつねに優先してきました。

しかし、日本はさらに取り組みを強化し、公的な外交と私的な外交の両方で一貫した、信念に基づく人権重視の主張を行うことで、こうした関係性をさらに強めることができます。日本の外交官や政府高官が市民社会団体と定期的に会合し、他国の政府に人権擁護に協力するよう働きかけるのです。

アジアが直面する課題はきわめて大きなものです。だからこそ、抑圧に反対する闘いと人権保護の確立で志を共にする国々と手を携えることこそが、アジアが透明性とアカウンタビリティを備えた安定と繁栄の地域になる最も確実な道なのです。

日本は国連での立場を最大限に活用し、リーダーシップを発揮して、人権保護のための各国政府による幅広い連合を構築すべきです。

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