(バンコク)―カンボジアの新首相は、同国の人権に前向きな変化をもたらしていないと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表の『世界人権年鑑2024』で述べた。カンボジアの人権状況は2023年に悪化した。その理由として、与党カンボジア人民党が司法をはじめとする国家機関への統制を強め、主要野党の参加を妨げて7月の総選挙を骨抜きにし、独立したメディアを閉鎖し、政府批判者に嫌がらせや身柄拘束、身体的暴力を行ったことなどがある。8月22日、1985年から首相としてカンボジアを統治してきたフン・センは、息子のフン・マネにその座を譲った。フン・センは依然として与党党首であり、上院議長だ。
「フン・マネ首相への政権移行は、カンボジアの人権と民主的自由に関して言えば『古いワインを新しい瓶に詰めた』にすぎない」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長代理フィル・ロバートソンは言う。「貿易・援助面でのカンボジアのパートナーは、同国政府との今後の関わり方は、国内人権状況の改善に向けた真の努力次第だという、明確なメッセージを送るべきである」。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、34年目の刊行となる年次報告書『世界人権年鑑2024』(全740頁)で、100カ国以上の人権状況を検証した。ティラナ・ハッサン代表は序文で、2023年は、人権弾圧や戦時下の残虐行為だけでなく、場合によって憤りを表明したりしなかったりする各国政府の態度、また取引外交でも注目に値する年だったと指摘した。この外交では、「取引」に加わらない人びとの権利は著しく侵害される。しかし、ハッサン代表は、別の道が開ける可能性が示されるという希望の兆しもあったとし、各国政府に対し、人権義務を常に遵守するように求めた。
5月15日、政権統制下にある国の選挙管理委員会は、主要野党のキャンドルライト党に対し、政治的動機に基づくねつ造された理由に基づき、7月の総選挙への候補者擁立を禁じた。
カンボジアの人権状況に関する国連特別報告者は、「包括的改革が急務だ」と述べ、総選挙に影響を及ぼしかねない重大な障壁を複数指摘した。投票を断念させようとする動き、候補者の出馬禁止、野党議員への嫌がらせ、国の選挙管理委員会の独立性への懸念などが挙げられた。
野党や政府批判者への襲撃は選挙後も続いた。これら襲撃は、2023年初めに報じられたキャンドルライト党員への暴行事件と、まともに捜査されなかったという共通点がある。
3月3日、裁判所は野党指導者ケム・ソカ氏を国家反逆罪で有罪とし、27年の刑と選挙権および被選挙権の無期限停止を宣告した。国連専門家筋は、この「政治的動機による」有罪判決は、「政治的敵対者やあらゆる政府批判者を標的として法律が濫用されるという、従来からのパターンを改めて示すもの」だと述べた。