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Lawyers in Myanmar protesting the military coup in Mandalay, February 15, 2021. © 2021 Frontier Magazine
  • 反クーデターのデモ参加者や政府批判者を弁護するミャンマーの弁護士は、「軍事政権」による威嚇行為や逮捕、訴追に直面。拘禁された人びとが拷問や虐待を受けている。
  • 軍当局は弁護士の活動を妨害するため、組織的な障害や制限を課している。「軍事政権」は刑務所内に非公開法廷を設置し、政治的にデリケートな事案を略式に裁き、公正な裁判を受ける権利を侵害している。
  • 「軍事政権」は文民統治を早急に回復すべきだ。また、関係各国政府は人権侵害に関与したとされる「軍事政権」関係者に的を絞った制裁を発動するとともに、ミャンマーの事態に関して国際刑事裁判所への付託を模索し、世界レベルで武器禁輸措置を導入すべきだ。

 

(バンコク)-ミャンマーの「軍事政権」は、2021年2月1日のクーデター以来、恣意的に拘禁されたデモ参加者をはじめとする人びとの権利を守ってきた弁護士らを威嚇し、彼らに嫌がらせをしてきた、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表の報告書内で述べた。

報告書「『仲間がどんどん減っている』:ミャンマー軍事クーデター後の弁護士弾圧」(全43頁)は、クーデター以後に起きた「軍事政権」当局による弁護士、とりわけ政治的な事案を引き受けた弁護士に対する嫌がらせや監視、逮捕、場合によっては拷問のパターンを調査・検証したもの。政治犯支援協会によると、少なくとも32人の弁護士が逮捕され公判前勾留されているが、容疑を裏づける証拠はほとんどないという。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのミャンマー担当調査員マニー・マウンは、「ミャンマーの弁護士はあらゆる場面で、国軍が仕掛けた組織的な障害や制限に直面し、活動を妨げられてきた」と指摘する。「軍当局は恣意的に拘禁した人びとを即時に釈放し、弁護士への嫌がらせをやめるべきだ。」

クーデター以来、「軍事政権」は数千人の反クーデター活動家および批判者を逮捕・拘禁し、その多くを扇動およびテロの罪で訴追。公正な裁判の国際基準を満たさない略式裁判にかけてきた。既にぜい弱だったミャンマーの司法制度は大幅に衰退しており、基本的な適正手続きの権利を守ることさえできていない。「軍事政権」は、政治的な事案を迅速に処理するために「特別法廷」と称して、非公開法廷を刑務所内に設置。戒厳令が宣言された郡区では、軍事法廷による略式裁判が行われているが、そんな軍当局の組織的な妨害行為にもかかわらず、弁護士たちは今も逮捕者の人権擁護を試みている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ミャンマー「軍事政権」の特別法廷制度下で活動する弁護士19人および国際NGOの法律顧問7人に聞き取り調査を実施。弁護士19人全員が「軍事政権」当局から威嚇や監視の被害を受けたと証言した。教唆、扇動またはテロの罪で訴追された活動家たちの代理人を務める弁護士を、「軍事政権」当局が報復のターゲットにしていたと見受けられるケースも一部あった。

弁護士らは、拘禁されている同僚たちへの虐待行為や拷問についても訴えた。マンダレー地域の高等裁判所弁護人Tin Win Aung氏の事情に詳しい複数の関係筋によると、同氏は公判前勾留中に治安部隊隊員から暴行を受けて腕と足を骨折し、胃に栄養チューブを挿入しなければならなくなった。

釈放直後にヒューマン・ライツ・ウォッチが話を聞いたある弁護士は、警察が取り調べ中に目隠しをしたうえ圧迫姿勢をとらせ、食事と水を与えなかったと証言している。

特別法廷では、審問の前に弁護士と依頼者がプライベートに事案について協議することを禁じるなど、多くの問題がある。弁護士らは、「軍事政権」当局者が頻繁に職務遂行を妨害し、容疑者の適正手続きや公正な裁判を受ける権利を否定していると証言する。

「軍事政権」が戒厳令を敷いている47の郡区では、民間人の被告が関与した刑事事件も軍事法廷が裁定しており、通常、法廷は刑務所内に設置されている。容疑者が弁護人に接見できない場合もあり、裁判は略式だ。そのため、必ず有罪かつより重い刑罰が下されることになる。

弁護士の役割に関する国連基本原則は、各国政府が国内法に取り込み、弁護士が適切な役割を確実に果たせるようにするための基準で、弁護士および法律サービスへのアクセス、刑事司法上の特別な保護措置、弁護士の表現および結社の自由について定めている。ミャンマーの「軍事政権」当局は、常にこの基本原則に反する行動をとってきた。

弁護士が自由かつ独立してその力を発揮できることは、公正な裁判を受ける権利を守る司法制度の根幹だ。弁護士は、迅速かつ妨げられることなく、正確な法的アドバイスを提供し、公正な裁判を受ける権利を確保するために、依頼者への部外秘アクセスが必要となる。ミャンマーは「市民的および政治的権利に関する国際規約」の締約国ではないが、公正な裁判を受ける権利は国際慣習法として認められており、それを保障するのは国連加盟国としてのミャンマーの責任である。

ミャンマーの悲惨な人権状況を憂慮する外国政府および地域の諸機関は、人権侵害に関与したとされるメンバーや軍関連企業を対象とした制裁、国際刑事裁判所へのミャンマーの事態の付託、世界レベルの武器禁輸措置など、軍事政権に対して幅広い措置を講じるべきだ。

政治犯の釈放を強く働きかける際には、すべての政府が弁護士への嫌がらせや投獄を批判し、「軍事政権」による人権侵害に対する平和的抗議を理由に何年もの間投獄されている人びとを弁護し得る力の向上に努めなくてはならない。

マウン調査員は、「当局は、公平な裁判を受ける権利を守ろうとしている人びとを狙い、信用を傷つけるためのルールをでっち上げている」と指摘する。「各国政府は、勇敢にも人権を守ろうとしている、残された弁護士たちが沈黙させられることのないよう、迅速に行動すべきだ。」

証言抜粋

ヤンゴンの弁護士の証言(2022年10月):

 私たちは厳しく監視されています。[裁判官からは]証人に特定の質問をすることができないと言われました。刑務所職員や諜報部隊、不特定多数から脅迫されています。私たちの名前を書き留め、写真を撮り、自宅に来て外から見張るのです。刑務所内の特別法廷に出廷する弁護士が一番嫌がらせを受けています。彼らは私たちのことを隅々まで調べ上げているので、常に脅威にさらされた状態です。

 

マンダレーのオーボー刑務所に拘禁されていた上級弁護士Tin Win Aung氏が受けた拷問と虐待に関する弁護士の証言(2022年10月):

 彼の両足は引き伸ばされ、木製の足かせをはめられていました。彼らはすねの上に重い棒を転がした上に乗りかかったので、彼は骨折していまいました。胸や背中を蹴られ[中略]ナイフで切りつけられたようなケガもありました。足の骨は大部分にヒビが入っていました。胸と背中を蹴られたせいで、肺にもダメージを受けていました。

 

ヤンゴン郊外の弁護士の釈放後の証言(2023年4月):

 目隠しをされたまま警察署と思われる場所に連れて行かれました。そこで写真を撮るためにひざまずいて顔を上げるよう言われました。後手に縛られたままです。しばらくそこにいた後、目隠しをして尋問のためにどこかへ連れていかれました[中略]そこでも目隠しのまま後手に縛られた状態でひざまずかされました。毎回そのように何時間も尋問されました。

 

「軍事政権」が発行した逮捕状から逃れるために潜伏していた直後の、ある弁護士の証言(2023年2月):

 法廷では今や、真実を語ることよりも、自分が拘束されないかを案じなければなりません。政治的な事案を弁護する場合は特にそうです。法廷にいる人間は皆、私が何者かを知っています。法廷は私の資格や個人情報をすべて握っているのです。「軍事政権」はいつでも私を拘束でき、そのためにどんな理由もでっち上げることができるし、そうするでしょう。

 

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