Skip to main content
Demonstrators protest against the ruling military junta during a rally to mark the second anniversary of the coup in Myanmar outside the Myanmar embassy in Bangkok, Thailand, February 1, 2021. © 2021 Chaiwat Subprasom/SOPA Images/Sipa USA/AP Images

(ニューヨーク)タイ入国管理局は、ミャンマーの反政府活動家3人をミャンマーに強制送還し、迫害などの人権侵害を受ける深刻な危険にさらしていると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表した。ミャンマー当局は、ティハ(38)、テットナイウィン(31)、ソーピョーレイ(26)の男性活動家3人(敬称略)の所在とともに、どのような嫌疑を掛けているかを直ちに明らかにすべきである。

2023年4月1日、タイ当局は、タイ・ミャンマー国境の街メーソット(ターク県)で、反政府派組織「ライオン大隊コマンド縦隊(Lion Battalion Commando Column)」のメンバー3人を不法入国容疑で逮捕した。タイ入国管理局は4月4日、メーソットのミャンマー側であるカイン州ミャワディ郡で、国軍と緊密な関係にある国境警備隊にこの3人を引き渡した。

「タイ当局による今回の反政府活動家の不法な送還は、ミャンマー国軍と結託する行為だ。現在、この3人の生命と自由は危機的な状態にある」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのエレイン・ピアソン・アジア局長は述べた。「タイ当局は、彼らがミャンマーで重大な危険に直面している事実を無視している」。

ミャンマーのメディアは、逃げようとしたかれらを国境警備隊員が銃撃し、負傷させたと報じた。消息筋によると、3人はその後、軍政の治安部隊に引き渡された。

2021年2月の軍事クーデター以降、タイには反政府組織のメンバーなど庇護希望者が逃れている。タイ政府はミャンマー軍政と共謀する機会を増やしており、こうした人びとへの嫌がらせや、逮捕、強制送還を行っている。2023年3月22日、タイ当局は、反軍政派組織「人民防衛軍」のメンバーやミャンマーからの庇護申請者が使っていたメーソット市内の建物40棟を家宅捜索した。

クーデター以後、ミャンマー国軍は、大量殺戮、拷問、恣意的拘禁、無差別攻撃などを全国で組織的に展開しており、これらは人道に対する罪や戦争犯罪に該当する。ミャンマー国軍による人権侵害が広範なものである現状を踏まえると、庇護希望者や難民のミャンマーへの強制帰還は、迫害、拷問、その他の深刻な被害に遭う現実的な恐れがある国への送還を禁じる、国際法上のノン・ルフールマン原則に違反する。タイは1951年の難民条約に加盟していないが、国際慣習法の下でノンルフールマン原則に拘束される。

さらに、タイは「拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約」(拷問等禁止条約)に批准し、「強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約」(強制失踪条約)に署名している。タイは、両条約の規定を、新たに制定した「拷問及び強制失踪の防止及び抑制に関する法律」に盛り込んでいる。同法は、拷問や強制失踪の危険があると信じるに足る相当な根拠がある人物について、他国に送還や引き渡しを行うことを禁じている。

「タイとミャンマー両当局には、庇護希望者を重大な危険にさらす取引があるようだ」と、前出のピアソン局長は述べた。「国連と関係国政府は、タイ政府に対し、こうした重大な国際法違反行為の停止を公式の場で強く求めるともに、ミャンマー国軍に対し、今回強制送還された反政府活動家3人の現状を直ちに説明するよう求めるべきである」。

皆様のあたたかなご支援で、世界各地の人権を守る活動を続けることができます。