6月30日、3歳の女の子がフィリピン大統領ロドリゴ・ドゥテルテの「麻薬撲滅戦争」の新たな犠牲となった。この作戦によって過去3年間で多数が殺害されている。報道によれば、3歳だったマイカ・ウルピナさんはマニラに近いリサール州で、父親のレナート・ドロフリナを狙った警察の手入れの際に撃たれて亡くなった。警察は、ドロフリナがマイカを「盾」として使ったと主張した。
麻薬関連の手入れについての警察の説明は信用できない。「麻薬撲滅戦争」を実行する警官が殺人を正当化するために武器や麻薬を仕込むなどして証拠を捏造することがわかっているためである。当局が認めるところによれば6,600人が、他の推定によれば2万7000人が犠牲になったこの残忍な作戦は嘘で固められている。容疑者が処刑されたと目撃者が述べる事例が数多くあるにも関わらず、当局はどの犠牲者も反撃したから殺されたのだとしている。
ドゥテルテ大統領の麻薬撲滅作戦で殺された人の大半は、マイカのような子どもも含め、都市部の貧しい地域に住んでいた。国連児童基金(UNICEF)も2018年7月に起きたスカイラー・アバタヨ(4)の殺害や2016年8月に起きたダニカ・メイ・ガルシア(5)の殺害を強く非難した。
子ども自身が標的とされ殺されたケースもある。もっともよく知られているのはキアン・デロス・サントス(17)の事件で、キアンが警察に引きずられていく監視カメラ映像があり、のちに遺体が豚小屋で見つかった。キアンの殺害はこれまでに「麻薬撲滅戦争」による殺害に関わった警官が有罪となった唯一の事件である。フィリピンの子どもの権利団体はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、2016年6月に作戦が始まってから100人以上の子どもが亡くなっていると述べた。
「麻薬撲滅戦争」はまた、数えきれないほどのフィリピンの子どもに被害を与えてきた。子どもたちはしばしば一家の稼ぎ手だった身内が殺されたことよる心理的、精神的、そして社会経済的な影響に苦しみ続けている。先週ヒューマン・ライツ・ウォッチが公開したウェブ報告書は、「麻薬撲滅戦争」が子どもにどんなダメージを与えてきたかをはっきり示している。
マイカをはじめとする子どもたちや多数の大人の死を受けて、国連人権理事会はアイスランド政府が提案した、フィリピンでの「麻薬撲滅戦争」による殺害やその他の人権侵害について報告するよう国連人権高等弁務官事務所に求める決議案を採択するべきである。現在検討中のこの決議案は小さな第一歩だが、承認され履行されればフィリピンでの大量殺人を止めるための重大な前進となりうる。