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A mural calling for an end to violence against women in Kabul, Afghanistan.  © 2017 ArtLords

(ニューヨーク)–女性と少女に対する暴力への法の裁きをアフガニスタン政府が実現できておらず、女性の権利の前進が阻まれている、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表の報告書内で述べた。アフガニスタンの駐留米軍が完全撤退を進めるなかでタリバンの支配が広がっており、国内情勢、とりわけ女性の権利をめぐる状況が不透明化している。

報告書「『私たちの人生はよくなると思ってた』:アフガニスタンの女性に対する暴力撤廃法の執行に関する問題」(全32ページ)は、暴力の加害者(家族を含む)への法の裁きを求めるアフガン女性が直面する現実についての報告書。「女性に対する暴力撤廃法(EVAW)」制定は画期的だったものの、その執行が限定的にとどまっている結果、女性や少女を守り、加害者の裁きを実現することが多くの場合できていない。タリバンは現在その支配地域を大幅に拡大している。将来タリバンが支配的な政権が生まれると見込まれ、アフガン女性の基本的権利に対する憲法上・国際法上の保護の脅威となっている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局アソシエイトディレクターパトリシア・ゴスマンは、「アフガニスタン女性は、政府の不作為とタリバン支配の拡大という二重の問題ゆえに守られていない。アフガニスタンを支援する諸国は、アフガン女性を守るというコミットメントを強化する必要がある」と指摘する。「EVAW法はゆっくりではあるが真の変化をもたらしてきた。アフガン女性の権利を長い間支援してきた各国政府は、EVAW法の十分な執行に向けて強力に働きかけるべきだ。」

外国駐留軍の撤退に伴い、各国の経済支援が縮小し、国際社会の関心も低下している。女性の権利団体などの市民社会は、EVAW法の執行に向けて必要な政策提言活動や研修のための国際的な支援が縮小するのではという懸念を深めている。こうした支援は、女性と少女を守るために極めて重要だ。

本報告書は、犯罪を告発した女性と少女、検察官、裁判官、弁護士、リーガルエイド関係者、政策提言団体に対して行った61件の聞き取り調査に基づく。

2001年以来の教育と雇用の機会拡大とともに、アフガン司法の改善も女性や少女にとって必要不可欠な前進であった。司法救済の改善は、女性の弁護士・検察官・裁判官の研修及び新法の制定によってもたらされてきた。なかでも、もっとも重要だったのがEVAW法だ。

EVAW法は、2009年に大統領により公布され、2018年に再確認された。レイプ・暴行・強制結婚・女性の財産取得の阻止、女性や少女の通学の禁止などを含む、女性に対する22の人権侵害を刑事犯罪と定めた。アフガン司法および議会内の保守派からかなりの抵抗にもかかわらず、同法は、女性や少女に対する暴力犯罪の告発および捜査の増加など、いくつか真の前進をもたらした。

それでも、警察・検察官・裁判官らが、女性たちに対し、裁判ではなく、内輪の調停で解決するよう圧力をかけることも多く、EVAW法の全面的な執行は困難だった。被害を届け出た女性には、家族からの圧力、経済的依存、被害届け出に伴うスティグマ、そして子どもの養育権を奪われるなどの報復などの恐れもある。女性たちにとってこの壁は非常に厚い。

アフガン女性や少女は、EVAW法に基づいて司法救済を求めると決心した瞬間から抵抗に直面するのが現実だ。男性の家族(多くの場合に夫)による暴力の事案では、被害者は多くの場合、司法救済ではなく家庭内和解をするよう警察から圧力をかけられる。夫からの頻繁な暴力にさらされていたヘラート在住のある女性は、義理の両親に実情を話したところ、「夫はそのような権利がある」と言われたと話した。

なんとか司法手続きが開始された場合でも、家族・親戚から取り下げを迫られることも多い。父親と夫の両方から繰り返し暴力を受けた女性は、検察官と弁護人から、家に戻って「子どもたちのために自らを犠牲にする」よう言われたという。ほとんどの女性が弁護士に相談することもできないのが現状だ。

また、多くの女性は、調停に応じるよう圧力をかけられ、加害者との和解を強要される。EVAW法は特にひどい危害を被った場合の調停を禁じているが、一部の当局者は、暴力犯罪の事案であっても、女性と親族を調停に回している。法による裁きを完全に迂回し、重大犯罪の不処罰を下支えする行為である。

事件処理が先にすすまないもっとも一般的な理由の1つが、警察が容疑者を逮捕しないことだ。警察は特に、配偶者への暴力で告訴された夫の逮捕に消極的だ。2018年改正刑法は、「名誉」は殺人の罪を軽減しないと定めているが、「名誉殺人」は依然として広く行われており、特に農村地帯では司法当局がしばしばそれらを容認している。

性暴力などの(但し性暴力に限らない)ない暴力犯罪を告発した多くの女性や少女は、侵襲的かつ虐待的な膣検査(または「処女検査」)を受けさせられた証言した。科学的根拠がないと問題になっている検査である。「調査」報告書は、法廷で証拠として認められることも多く、ときに女性や少女の長期刑につながる。世界保健機関(WHO)は2014年にガイドラインを発表し、こうした検査には科学的妥当性がないとしたが、依然として広く一般に普及している。

EVAW法は、内容に限界もあり、執行状況も芳しくないとはいえ、アフガン女性や少女に対する差別的かつ暴力的な犯罪と闘うために必要不可欠な法律だ。一部の法律家にとっては、同法がハラスメント防止法といった権利促進法の足がかりとなり、家庭やアフガン社会における暴力への対処をめぐる認識を変えるきっかけとなりつつある。

タリバンの影響力・支配の高まり、そして保守的な政治家らの連立政権も今後見込まれることから、アフガニスタンの女性の権利活動家たちは、EVAW法などの法律が危険にさらされるとの恐れを強めている。

ゴスマン次長は次のように指摘する。「家庭内外で暴力に直面しているアフガン女性を守る法律を維持するために、アフガニスタンの支援国は、相当な経済的・政治的支援を提供し続けることが肝要だ。」

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