(バンコク)ミャンマーの軍事政権は既に制限をしているインターネットとメディアに加えて新たに衛星テレビを遮断し、同国内の情報統制を強めた、とヒューマン・ライツ・ウォッチは今日述べた。同国を支配する国家統治評議会は2021年5月4日、テレビ視聴のために衛星放送受信アンテナを使用する者は、最長1年の禁固刑もしくは50万チャット(320米ドル)の罰金刑を科されると発表した。
軍政は「違法な団体や報道機関」が国家治安を脅かす番組を衛星経由で放送していると主張した。今回の遮断は、3月に免許を剥奪されて以降、衛星経由で放送を続けていた「ビルマ民主の声(DVB)」と「ミジマ」を標的としているようである。衛星経由でミャンマーに向けて放送する外国のニュースにも影響を及ぼす。
「衛星テレビの遮断は、独立したニュース放送へのアクセスを妨げ、ミャンマーの人びとをさらに孤立させようとする露骨な試みである」とヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア担当法律顧問であるリンダ・ラクディールは述べた。「軍政は直ちにこの非道な全面的検閲を撤回し、報道に対する容赦ない攻撃を止めるべきである」
衛星テレビの遮断はミャンマーのメディアに対する国軍の総力攻撃の一環であるとヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。軍政は5月4日にも、それぞれカチン州とシャン州に拠点を置く「74メディア」と「タチレク・ニュース・エージェンシー」の免許を剥奪すると発表し、規制された報道機関の数は8に増えた。74メディアとタチレク・ニュース・エージェンシーを含めたこれらの報道機関の多くは軍政の措置に抵抗し、報道を続けると誓っている。
報道機関の禁止に加え、治安部隊はジャーナリストを積極的に逮捕の標的にしている。2月1日のクーデター以降、少なくとも71人のジャーナリストが逮捕され、このうち少なくとも48人が今も拘禁されている。当局は拘束したジャーナリストの多くを起訴している。そのうちの1人である日本人のフリーランス記者である北角祐樹は、「恐怖を引き起こす」コメントを発表または流布させる、または「偽りのニュース」を広めることを罪とする、軍政が新たに採用した刑法の規定に違反したとして起訴された。有罪となれば最長で3年の禁固刑を宣告される。
当局はインターネットに厳しい制限を課し、人びとが情報を得たり共有したりするのを非常に困難にしている。モバイルインターネットデータやワイヤレス・ブロードバンドは6週間以上も遮断されており、フェースブックなどミャンマーで人気のあるソーシャルメディアもクーデター以降遮断されたままである。
「ミャンマー軍政は、国内にいる人が独立したニュースや情報にアクセスするのを阻止しようとますます必死に努力しているが、現地で発生している人権侵害についての真実を隠すことはできない」とラクディールは述べた。「各国政府は武器禁輸や対象限定型制裁を含む多様な手段を使い、人権侵害を終わらせ、関係者の責任を追及するため、軍政に圧力をかけるべきである」