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国際刑事裁判所の検察官が選出される

カリム・カーン氏は「困難な状況を受けて立つ」べき

Seventeenth session of the International Criminal Court's Assembly of States Parties in The Hague, Netherlands, December 2018.  © 2018 Syd Boyd/Coalition for the International Criminal Court

(ニューヨーク)国際刑事裁判所(ICC)加盟国は前例のない投票によってカリム・カーンを主任検察官に選出した、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。当初はコンセンサスで決定に至ることを目指したが議論がまとまらず、2021年2月12日にニューヨークの国連本部で選挙が行われた。

イギリス国籍のカーン氏は旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所とルワンダ国際刑事裁判所の検察局で法律顧問を務めた。カーンはまたICCや旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所やシエラレオネ特別法廷における様々な事件で弁護人も務めた。現在はイスラム国(ISIS)がイラクで犯した犯罪を調査する国連のチーム率いている

「ICCはこれまで以上に必要とされていながらもその役割について重大な異議や圧力にさらされている。そんな中で検察官に選出されたのがカリム・カーン氏だ。」とヒューマン・ライツ・ウォッチの国際司法部プログラムのディレクター、リチャード・ディッカーは述べた。「われわれはカーン氏に、ICCの任務遂行における欠点に対処するとともに、容疑者らが最高権力者であったとしてもその責任追及において確固たる独立性を示すことを求めていく」

カーン氏の任期は2021年6月に始まる。カーン氏はICC検察局の法廷でのパフォーマンスを改善し、さらなる資金が必要であることを一部加盟国が認めないなかで、検察局の仕事量の多さにも対処するべきである、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。ICCの業務についての独立した専門家による評価を受けて現在行われているフォローアップが重要な枠組みの一つとなるだろう。カーン氏は引継ぎ期間中に、前任のファトゥ・ベンスダ主任検察官と協力し、この評価で勧告された内容が入念に検討すべきである。

今回の選挙過程は、加盟国政府が候補者のために働きかけを行っているとの報道や、ICCの設立条約であるローマ規程が定める検察官の資格の一つである「徳望の高さ(high moral character)」を評価するための専門家による審査がなかったことなどの問題を抱えている。最近完了した独立した専門家によるICC評価では、いじめやハラスメントの報告への対処も含めて、ICC内の恐怖と不信を取り除くために相当な改善が必要であることが指摘された。

検察官選出委員会は、委員会が当初選んだ候補者全員の「徳望の高さ」についてICCの特別な部門に独立した審査を行うよう指示した。しかし委員会はこの方法が包括的な審査方法であるとは言えないとも述べた。ヒューマン・ライツ・ウォッチなどの団体は、加盟国は今回の選挙でしっかりした審査手順を確立させるべきだと提言していた。

この数週間、候補者たちの素質についての情報がソーシャルメディアや主流メディアに出回ったが、候補者による不適切行為の申し立てを受け付けて評価するプロセスはなかった。選挙過程の強化方法の検討の準備を加盟国が進める中、加盟国は今後のICC高官の選挙に向けて専門的な方法で審査が行われるようにするメカニズムの確立を優先させるべきである、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

今回の選挙の前には米国の前政権から強い圧力がかかり、米国やイスラエルの市民による行為を精細に調べる可能性のある捜査を妨げるために現在のICC主任検察官及び別の高官一人に対して資産凍結や入国禁止の措置が取られた。ジョー・バイデン大統領の政権は「例外的な事例について」ICCとの協力を再開する可能性があることを示しながらも、これらの制裁の根拠となる大統領令をまだ撤回していない。ICCの予審判事部が2月5日にパレスチナの状況についてICCの管轄権が及ぶと判断すると、バイデン政権はこれに不満を表明した

ICC加盟国はICCの歴史で三度目となる選挙を進めるために新しい制度を作った。これによって検察官選挙委員会が設置され、独立した専門家パネルの補佐を受けながら応募内容を審査し、候補者を一定まで絞って面接を行い、最終候補者を決定した。しかし一部加盟国の間で最終候補者名簿に対する不満が定期されたため、11月に当初の候補者の中から数名が最終候補者に追加され、12月に行われる予定だった選挙の実施が遅れた。

2月12日の選挙の前には、加盟国が投票ではなくコンセンサスによる決定を目指し、最終候補者について四回協議をした。しかし意見が一致しなかったため、加盟国は投票を行うことに決めた。カーン氏のほか三人の候補者が選挙に出る候補者として推薦された

「ICC検察官というきわめて重要な指導的地位につくカリム・カーン氏には、この困難な状況に立ち向かってほしい」と前出のディッカーは述べた。「目の前に立ちはだかる諸問題に取り組むこと以外に、カーン氏の任務やICC全体に対するICCの全ステークホルダーの支持を得る方法はない」

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